[03.襲撃の後(Part5)]
客間と思われる一室で、二人だけの早めの朝食を取る。ただ、食卓に並ぶのはいたってシンプルな代物で、作り置きされた黒い―――いわゆる黒パンから、そのまま置かれた林檎みたいな果実と、質素ながら量はあった。
二人で黙々と食事するそんな最中、ふとリリィが切り出してきた。
「そういえば、君はこれからどうするの?」
「う?」
パンを頬張りつつ、俺は手を止めた。
「どふぃふぉと?」
「……とりあえず、口の中のものを飲み込んでからしゃべろうか」
言われて、俺は口内の食べ物をしっかりと噛み締めてから飲み込んだ。いつも食べているパンよりも、皮は固いし、どっしりしていて口の中の水分が一気に奪われれるが、気にせず質問を返した。
「どゆこと?」
「君が一体何者かは知らないけど、これからどうするつもり? 行くところはあるの?」
「あー………正直どこも?」
ログアウトできない以上、ここが普通のゲームだと考えるのも迂闊だし、と俺は内心付け加える。
「そっか……だったら首都に来て、迷宮でも潜った方がいいと思うよ。実際、君の強さなら問題ないだろうし」
「……だんじょん?」
聞き慣れない言葉に俺は思わず首を傾げる。脳裏に思い浮かぶのは、RPGで定番の作りものめいた迷宮なのだけど。
「その様子だと知らないらしいね……」
「珍しいのか? その『ダンジョン』やらを知らないのは」
「辺境の子どもでも知ってる常識」
「………」
言われてぐぅの声もでない。
そんな俺を見て、ため息をつく銀髪の彼女。
「まぁ、自称異世界人だから知らないのも無理はないけど」
「自称じゃないぞ、事実だ。で、その『ダンジョン』って結局なんなんだ?」
言いながら俺は、木の器の水を口に含み、パサついたパンを千切って咀嚼した。噛み千切るのは結構な重労働だったりする。
一方、目の前のリリィは俺とは打って変わって、その食べる姿もどこか品があった。上品に千切ったパンを口に運んで噛み締める。
モグモグと口を動かしつつ、彼女は言う。
「ダンジョンは、首都にある『塔』のことだよ。……正確には、『塔の形をした何か』を通して行けるまったくの別世界なんだけど」
「ふむ……」
「そこには見たこともないような鉱物、動植物といった資源があるの。だけど、同時に危険もつきまとう。その多くが、『迷宮生物』による被害によるもの。並大抵の実力では全く歯が立たないことは事実だよ」
「いかにも俺好みな場所だな」
「言うと思った」
果実を手に取り、少し呆れたように微笑むリリィ。
そんな彼女を薄目で眺めつつ。俺は最後の一切れを口の中に放り込む。
「しっかし、首都か~。こっからどれくらいかかるの?」
「馬車で行けば、一日の半分でつくよ。ここは首都からそれほど離れた辺境じゃないし、僕たちも今日、そこに帰省するところだから、なんなら一緒に行く?」
「おー、それはありがたい。じゃ、お願いするわ」
赤く熟れた果実を手に取り、林檎を食べるかのように俺は頬張った。
―――この後、自分がどれほど後悔するかもつゆ知らずに……。
キャラが思うように動いてくれない。
自分の文章力の無さを嘆くべきか……。
……浮気してないよ?(他作に)




