第102話
やっと復帰出来ました!
ケインの方にも大きな転換が……?
オレの問い掛けに、
「なんだよ、その、心を鍛えるって!」
と噛みついてきた、このお馬鹿大将。思わずため息が出てしまった。
「馬鹿にするな! おいらは父ちゃんみたいな腑抜けになんてならないんだからな!」
ますます訳の分からない……いや待て、あの族長を腑抜けだと?
「あのなぁ、お前、自分の親をちゃんと見ているのか?」
「どういう意味だよ!」
「テクルグ族長は穏やかに見えるが、あの人、怒らせると怖いぞ? ブラッディリザードをあっさり切り捨てていたからな」
そう言うと、目を丸くして吠える。
「嘘だろっ、それ! あの真っ赤なトカゲを切り捨てるなんて……!」
「いや、事実だ。ほかのみんなも見ていたからな、後で聞いてみろよ」
「え……」
黙り込んだガッシュに代わり、女の子……確かルーシルだっけな……が話しかけてくる。
「あの、あの! あなた、神の御業が使えるの?」
「神の御業、って大袈裟な。オレはこの大陸の者じゃないからな、一応使えるよ」
「え、ここの人じゃない? じゃどうして……」
「ストップ。それ以上はここを出てからだ。ゆっくり話せる場所じゃないし、何が起こるか分からんから……」
言いかけたら、身体が斜めに傾いた。あれ、オレ何やってるんだ?
だが、足元の揺れですぐに気が付いた。
「地震だっ、しゃがめ!」
「え? え? なん、だ?」
「キャッ、揺れてる! 足元が揺れてるぅ!」
こいつらはまったく! オレは舌打ちしたくなったが、知らないものは仕方がない。
『ファスト』でふたりの間に割って入り、両脇に抱え込んで壁際まで飛びのく。そして、頭を押さえて座るようにさせた。
「その姿勢のまま、頭を両手でかばうんだ。上から何か落ちてくるかもしれんからな!」
もっとも『バリア』をかけているから心配はいらないんだけどな(腹黒)
この際だから基本的な動作を教えておかないと。
体感からすると、震度3から4くらいか。結構デカいな。
子供たちは初めてなのか震えている。オレはそんな二人を両手で抱えながら、周辺の様子に注意を怠らない。この程度の揺れでは顔色も変わらないさ、日本人は。
それにしても結構長く揺れてるな。縦揺れだからまだしも、横だったら気持ち悪くなりそうだ。
「キュキュッ!(気を付けるだっちゃ!)」
影に戻ったオーリィが警告した時!
広場の中央付近に異変が起きた。
ピシッ! ピシピシッ!
引き裂くような音の後、中央の床が上下に引き裂かれ……
「な、何だあれは!」
亀裂の向こうにあったのは…………燃え盛る焔の渦、だった。
「キュッ! キュイィ~~!!(危険だっちゃ! 溶けた岩の流れに異界が繋がったっちゃ~~!!)」
溶けた岩の流れ? それって溶岩、つまりマグマって事じゃないか~~っ!
あわてて左右を見まわすが、亀裂が大きすぎてうまく避けられるか自信がない。マグマは今にもこちら側にあふれ出そうだ!
ふと、上を見れば、亀裂の真上にぽっかりと穴がある……え、穴?
「オーリィ! 天井の穴はどこに続いてるかわかるか!?」
「キュルキュ……キュルッキュ!(あ、あれだっちゃね……う~ん、良く判らないけど危険な感じはしないっちゃ!)」
微妙に不安が残る言い方だが、この際構っていられない! 亀裂からマグマがドロリと溢れ出し、オレたちの足元に迫ってくる勢いだ!
「ふたりとも、オレにしっかり掴まってろよ! オーリィも!」
「キュルッ!(わかったっちゃ!)」
「「う、うんっ」」
オレは『バリア』を3人まとめてかけ直し、強度を増しておく。向かう先に何があるか分からないからこその備えだ。
「よし、行くぞ!」
『身体強化』で地面を蹴り、迫ってきたマグマを飛び越す。ぶわっと全身に熱気が覆いかぶさってきた。
「きゃっ!」
「あっつ~いっ!」
しまった、マグマの熱は『バリア』までも通すのか!
『ウインド』で熱を散らし、向かい側の壁を蹴り飛ばす。その勢いを借りて天井の「穴」……異界を目指すが、流石に二人を抱えていると勢いが足りない。『ブーストウインド』を追加して一気に「穴」へ飛び込んでいった。
とたんに四方から押しつぶされるような圧迫感を覚える。
実際には何もされていないのだが、どっちを向いても闇しか見えないってのはなかなか精神に来る。両脇に抱えているふたりは目を閉じているが、何か感じるんだろう、オレにしがみつく腕が震えている。
オレは両手に抱えたものを離さないように力を込め、『索敵』を広げつつ闇の中を移動していった。
どれだけの時間が経ったのか、正直良く判らない。一瞬だと言われればそう思うし、結構長く居たんだと思えばそれも真実かな、と思う。時間そのものが捻じ曲げられていた、そう考えるのが一番近いのかもしれない。
いずれにせよ、オレたちは「穴」の中に入り込み、突き抜けた。
終点は唐突だった。急に目の前が明るくなり、そして次の瞬間には地面に転がっていたんだ。
「うおっ!」
「わぁっ!」
「きゃあ!」
落下?衝突?のショックは『バリア』が吸収してくれたから痛みも何もないが、あまりの変化に心が追い付かない。それでも冒険者としての経験からすぐに自分を取り戻して再度『バリア』を掛けたのは褒められても良いんじゃないかな。
身の安全を確保して、次に子供たち。しっかりと脇に抱えたままなのでこれもクリア。
「オーリィ?」
「キュッ!(居るっちゃ!)」
元気に返事してきたが、本体はいまだ影の中。まあ、良しとしよう。
さて、ここはどこだ?
見回せば一面の大地。空はかすんでいる。砂埃? それともこれがデフォルトなのか?
地面は凸凹としているが、総じて平らにならされている。見渡す限り、くすんだ空と平らな地面が続いている……あれ?
「あそこだけ違うな。何だあれは」
思わずこぼれた言葉に、子供たちが顔を上げる。
「とにかく行ってみるか」
「行くのは良いけど、その、降ろして、くれる?」
ルーシルが遠慮がちに声をあげた。
「そうだな、ひとまずは大丈夫だろう。オレも抱えたままでは歩きにくいからな」
軽く笑ってふたりをその場に立たせる。
「どうだ、どっか痛いところとか怪我したところはないか?」
「ワッチは何ともないわ。庇ってくれてありがとうヒト族のお兄さん」
「そういや言ってなかったな。オレはケイン、冒険者だ」
「ケイン。ケインという名前なのね。じゃ、ケイン兄さま、で良いかな?」
「良いかな、って言われてもなぁ……」
小人族では「兄ちゃん」だったからこれでもいいんだけど。
ちょっと問題なのは巨人族の発育の良さ、なんだよな。
どこが、なんて訊くなよな。全体に、だ。
つまりは、だ。スッゲェ、色っぽいんだ。
本人にその気はないんだろうけども、上目遣いに見上げるところとか、両手を胸元に持ってきて小首をかしげるところとか。これで10歳とか恐れ入る。
化粧はしていないが、始めたらかなりな美女になること請け合いな、大きな瞳と長いまつげ、つやつやと輝くきれいなほほ。ぷっくり膨らんだ唇なんて、恋した男が見たら吸い寄せられるんじゃなかろうか。
危ない危ない。君子危うきに近寄らず、だ。
真っ赤な顔で睨んでいる騎士気取りのガキ大将が居る前では特に。
体調不良が長引いてしばらくPCにも触らせてもらえずにいたため、
途切れてしまいました。伏してお詫び申し上げます。
まだ本調子ではないので、不定期更新になります。




