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八人のアダム  作者: 猪熊洋介
一章 ギャランシティ
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侵入、者?

「私一人でもできます! やらせてください!」

ピップがいなくなった第三格納庫にミラーの声が響いた。

「ピップのことは……認めます。間違いなく有能です。おそらく、自分よりも。でも、ピップには忠誠心がありません。ギャラン様と、ギャランシティへの忠誠心は、私の方が遥かにまさっています。お願いします。あのスターズの整備は私にお任せください!」

「それは疑わないわ、ミラー。あなたは私につくしてくれている。あなたは大破壊のあと、私とサイモンに真っ先についてきてくれたわね」

「そ、そうですとも」

「でもね、ミラー。私は、このシティを始めるときにいったわよね。私は想いよりも成果を選ぶ、と。誰であろうと役に立たないものは切り捨てる、と」

「……」

「私の目的はこのイカれた世界で偉大な王になること。ギャランシティを世界最高のシティにすることよ。そのためには、猛スピードで走り抜けなきゃならないの。つまり、今のあなたに期待することは、このヤバいスターズを一刻も早く自由に使えるようにして欲しいってことだけ。そのためにできる最善の手段は、なにかしらね。話は以上よ。あとは、自分で考えなさい」

そういうと、ギャランとサイモンも第三格納庫を出ていった。あとにはミラーだけが残された。


「やれやれ。なかなか思うようにいかなわいわね」

「ピップは説得してみせますよ。彼は私のことを比較的信頼してくれているはずです」

「頼むわよ。あの子には、なんとしてもわがシティにいてもらわなくちゃ。あれほどの逸材はなかなか得られないからね」

ギャランの言葉にサイモンはうなずいた。

「最高の結果は、これで実はアダム博士が生きていて、アダム博士もうちのシティに技術顧問などで入ってくれることなのだけど。ただ、もうアダム博士は生きていないでしょうけど」

「それはなぜですか?」

「だって、世界中のマザースターが大都市とともに消滅したんだもの。アダム博士なんて、いつもマザースターと暮らしていたようなものでしょ。とっくに白い穴に飲み込まれちゃってるわよ」

「世界有数の大企業、アダムカンパニーの会長ですからね。企業としても多くのマザースターは所持していたでしょうから、おっしゃる通りですね」

「ピップだってそれはわかっているでしょうにねえ」

ギャランとサイモンは市庁舎、ギャランシティの五階ホールを歩いていた。

ここはVIPゾーンで、今は二人しかいない、はずだった。

「こんばんは!」

初めは、ギャランもサイモンもどこから声がしたのかわからなかった。

前を見ると、金色の髪をした子どもがニコニコとしながら歩いてきた。

ギャランとサイモンは顔を見合わせた。

「あんたの子?」

「まさか。ギャラさんは?」

「知らないわよ、あんなガキ」

サイモンは周囲を警戒しながら、ギャランの前に立ち、その子どもに警告を出した。

「止まれ。なんだ、君は? どこの子だ?」サイモンが尋ねた。

「初めまして、ぼくの名前はラムダです」

「ラムダ……?」

「ギャラン市長に、シティ参謀長のサイモンさん。お邪魔してしまい、ごめんなさい。道に迷ってしまったんですが、出口はどちらでしょうか」

「ちょっと何よ! なんでVIPエリアにガキがいるの! 守衛!!」

ギャランが吠えた。サイモンは守衛に電話をかけた。すぐに走って守衛たちが寄ってきた。

「も、申し訳ございません! なぜかセキュリティードアが開いてまして、それに警備用の自律式スターズも反応せず……」

「ふっざけんじゃないわよ、こんなとこにガキを入れて。アタシはガキが嫌いなのよ!」

「誠に申し訳ございません! すぐに連れ出します。ほら、きみ、きなさい!」

「はい、守衛の、ボビーさん」

その子どもは守衛にかかえられて、警備室に連れていかれた。

守衛たちは五階に異常がないか、バタバタとチェックをしている。

「なんなのよ、本当に。うちのセキュリティーは人も機械もザルすぎるわね。強化しないと」

「ええ……」

サイモンはすこし気になった。あの子どもが来た先にあるのは、市長室である。「ギャランさん、念の為に、何もなかったのか確認をさせてください」

そしてサイモンは市長室のセキュリティドア、および市長室内に異常がないか、チェックした。ものが動かされた痕跡は、ない。ただ、市長のデスクのパソコンが起動している。

「ギャランさん、これは」

「あら、やだ。つけっぱなしだったわ」

ギャランはなんでもなさそうに言った。サイモンはため息をついた。

「電源は必ず落としてください。シティに関する貴重なデータが入っているんですから。私は業務に戻りますよ」

「ほほ、ごめん遊ばせ」

サイモンが市長室を出ると、守衛たちが報告にきた。

「調査の結果、ほかの侵入者の形跡はありません。その他、異常はありませんでした。機械の動作不具合により、あの子どもを通してしまったとみられます。誠に申し訳ございませんッッ」

守衛たちは列になり、真っ青な顔で頭を下げた。

「わかった。もし異常が確認されたら、報告をするように」

「はっ!」

サイモンは市長室の隣にある、参謀室にセキュリティキーを使用して入った。

それから軽く食事をとり、一時間ほど仮眠をした。

仮眠から目覚めると、コーヒーを入れ、シティ内や部下から上がってくる数多くの問合せや承認や確認に凄まじい速さで対応し、指示を出してゆく。それが終わると、今後のシティを良くしていくための施策の検討をする。

ギャランシティの参謀であるサイモンの職務は広範にわたり、その業務量は非常に多い。高い処理能力を持つサイモンであるが、シティの拡大に伴い、自分の補佐を任せられる人間を必要としていた。そして、ピップはそれに足る人材であると思っていた。

「ピップ、きみはスターエンジニアでおわる人間ではないぞ。私たちと、来るんだ」

サイモンは二杯目のコーヒーを飲みながら、つぶやいた。

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