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最強って何がいいんですか?  作者: Ⅾ
正義の在処
18/27

女子会

 ローグと聖装士であるギルとの戦いが始まった頃。観戦の為に集まった、メアリー達4人は王族が見学するためのスペースにいた。


 聖装士であるシンディーとリーザの計らいでもあったが、辿り着いた場所には豪華な長テーブルに純白のテーブルクロス、その上にはフルーツから焼き菓子、果実酒から紅茶などなど、ぱっと見では把握しきれないほどの食材が並んでいたのだ。


 「皆、今日は無礼講で行こうじゃないか! そして今日の闘いを盛り上げてくれたまえ!」


 既に目の下をうっすらと赤く染め上げている辺り、メアリー達が来る前から酒を楽しんでいたのだろう、と予測を立てた女性陣は心の中で軽きため息を吐いた後には栄癪を返し、ドリンクに手を出すことにした。



 「──あっ!」


 開戦後、先手を仕掛けたはずのローグが壁まで吹き飛ばされたのを見たメアリーが心配そうにローグを眺めていると──


 「お前は告白する気がないなら隠す努力をしろ。・・・まぁ隠す気がないならそれはそれでいいのだがな、純情乙女?」


 シンディーも果実酒を口に流し込んでいるせいか、素面の時より歯に衣を着せる気はあまりないらしい。


 「い、いや!? 私そんな事思ってないですから!!」


 「あら? じゃあ私が手を出してもいいのかしら?」


 メアリーの返答に参入したリーザ。


 誰か彼女を止められるのだろうか?


 「リーザさん!? ローグの事狙っているのですか!? まだ昨日会ったばかりですよね!?」


 「好きになるのに時間なんて関係ないわよ? それにシンディーと私が結婚するなら私達より強くなきゃだもの。ここで見逃したら私達、一生売れ残っちゃうわ」


 人当たりのよさそうな笑顔を崩すことなく、シンディーを一瞥しながら話すリーザ。


 そう。シンディーとリーザは〝自分のよりも強い男ではないと結婚はできない〟と周囲に公言してある。それは聖装士としての権力や資産を狙い、求婚してくる相手を少しでも減らしたいがために話したデタラメである。だから本来ならそんな理由なしに誰とでも結婚できるし、周りから何か言われようものなら、それこそ聖装士としての権力をフル導入すればそうとでもなるのだ。


 「じゃあ私も立候補していくか。なにせあいつはあろうことか大衆の面前で私の事を横抱きにしてくれたからな。 もうこれはプロポーズされたと言っても過言ではあるまい」


 どこか悪戯な笑みを浮かべながらメアリーを横目に見ている。


 ちなみに、現在はローグがギルを吹き飛ばしたところだが、ここにいる誰も見ていない。


 どんまい。


 さらに、リーザの横では瞳から光を無くし、ブツブツと何かを呟くローザがいたが、もちろん誰も見ていない。


 Don't mind!


 「シンディーさんまで・・・」


 メアリーだけが気付いていない。二人にいじられているのを。


 「で、でも、選ぶのはローグだと思います!私達がいくら立候補したところで何も変わらないですから!」


 ローグには以前、結婚をしようとしていた女性がいた。簡単に振り向くはずなどない。そんな想いを乗せながらも自分をごまかしているメアリーを更に心地よい笑顔と悪戯な笑顔が責め立てる。


 「お前は経験が浅いんだな。男と言うのは一度アピールしておくと、それを機に気にするようになる。アピールもしないで待っているだけなんて実るはずもないだろ」


 「そうね~。シンディーの言う通りだとすれば私の一番乗りかしら?」


 「リーザさんはあざとすぎです!あんなに上目遣いでローグを見て! しかも強調していましたよね!?」


 今朝方、ローグと一緒に闘技場まで足を運んだ時に何度も調教の為に上目遣いを利用したリーザ。もちろん身長がローグより気持ち低い位のリーザが上目遣いをするとなると腰を後ろに引き、頭の位置を軽く下げなくてはいけない訳だが、そうすると必然的に強調してしまうものがある。

 それは女性としての最大の武器である笑顔と、そしてそこから少し下へと視線を下げれば、大きなそれが「プルン」と音を立てて揺れているような、そんな武器が眼前に来る。


 そのことをメアリーは指摘しているのだ。


 ただ、それは軽い自爆である。


 「ほ~。あれか? お前はリーザとローグの後ろをストーカーの如く見張っていたと? 純情娘も男が絡むと腹黒になるらしいな」


 「ちょっとシンディーさん!! 私がそんなことするはずないじゃないですか!!」


 いや、全開でしていた。階段で誰かを待っているようなリーザが気になり、その後跡を付けた。


 そしてそれに気付かない程、聖装士は甘くはないのだが、照れと焦りからそんな事にはまるで気付かないメアリーだった。


 そしてローザはここでも忘れられている。


***



 「おい!なんだあの魔法!?」

 「俺に聞くなし!つか来れ逃げないとやばくねーか」

 「おいおい!!これ聖霊魔法なんじゃねーか!?」


 一際大きな声が響き渡り、シンディーの顔つきが変わった。

 すぐにローグとギルの方に視線を向けると、ギルは心の底から楽しみだと言わんばかりの獰猛な笑みを浮かべ、対照的にローグの周りには濃密な魔素が集まっていた。


 誰よりも精霊と付き合いの長いシンディーは軽く舌打ちをした後に、全ての回路を開放した。


 頭の回路だけを開放すれば魔法は使えるものの、それでは足りないとすぐに判断した。関係ない回路でも開放すれば体内に魔素が集まる。そしてそれは燃料の様に燃やし尽くす魔法を使う時、本の少しではあるが頭の回路だけを開放した時よりも長持ちすることを知っているからだ。


 「オンディーヌ!! 力を貸せ! 闘技場を包み込むぞ!」

 「相変わらずぅ~精霊使いがぁ~荒いわよぉ~」

 「あとで愚痴でも何でも聞いてやるから早くしろ!」

 「わかったわよぉ~」


 「「──選別の盾!!《エーレ・クティオ》」」



 シンディーが魔法を発動させると、天までも届くのではないのか、そんな疑いを持ってしまう程の高さまで水の壁が出来上がる。


 それを合図にしたかのように、リーザも剣を二本抜き、表情に先程までの笑顔はない。


 だが、ローザだけはどこかに旅立ったままな事に気付く人はいない。



 「シンディー、あれはどんな魔法だか分かる?」


 リーザは自分がどう動くか決めかね、シンディーへと尋ねた。

 剣聖レイン。そんな風に呼ばれてはいるが、殲滅級の魔法に二振りの剣では立ち向かえないように、魔法を見極めある必要がある。それに適任なのは隣にる魔王を置いて他にいないのは彼女が一番良く知っている。


 「あんな魔法は知らん! リーザは念の為に王の護衛に入れ! こっちは私とオンディーヌがいるから平気だ!」


 魔法の分類表の上位に位置する物は殆どがオリジナル魔法になるのだからシンディーが分からなくてもしょうがないことではある。


 そして少し話が逸れるが、魔法を戦闘に使おうとする者は実はそれほど多くない。


 魔法は魔素を介して自分の空想を形にするのが原則である。

 もし、イメージすることができて魔法が使えるようになっても、戦いを知らぬものは押し寄せる恐怖やなどでイメージが恐怖に変わってしまう。そして頭の回路を開放したまま恐怖に染まってしまうと、そのイメージは〝自分を傷付ける〟イメージとなり、万が一発動してしまえば取り返しがつかなくなるからだ。


 ローグは知らないが、世界各国で魔法についての知識を得る際、魔法の分類と共に教わる初歩的な内容ではあるのだが。


 そして魔法を戦闘に使う者が多くない中、魔法の王こと、シンディーは嫌な予感をひしひしと感じてはいた。


 (──あのバカ)


 四大精霊のみが使用したと言われている魔法。聖霊魔法 輪廻。

 世界の終わりと始まりを迎える魔法であるこの魔法の特徴は、全てが広域殲滅魔法である事。それはシンディーの終わる世界(アクワディザスター)などの比ではない。シンディーのあれは聖霊魔法の二つ下にある〝精人魔法〟である。飽く迄も人が発動可能とされている範囲だ。


 ただ、シンディーも四大精霊であるオンディーヌの力を借りながら魔法を発動している以上、そこまでの損害を出すことは無いだろう。そう信じる事にしたのだった。



 一方、王の前へと立ちふさがったリーザは十八番である目の回路を開放し、一つも見逃す事無いように観察に徹していた。

 この規模の魔法になればいくら聖装士であるとは言え、魔法の使えないリーザにはどうすることもできないのだが、それでもこの場にいる以上、彼女に選択肢なんてものは存在しない。


 「グリモエル王! それとアンジェ様も私の後ろにいてくださいね!」


 王の前方斜め左に立ちすくむ女性。アンジェ・デウス王女。


 一応は王族の為に一般的なバックレスの白と赤が折り重なって作られた様なドレスを身に纏っている。異常なまでに大人っぽさを演出しているドレスではあるのだが、凍ったような無表情が全てをぶち壊しているようにも見える、そんな女性だ。


 状況を精査していたリーザの後ろで不釣り合いな会話が始まった。


 「父様、あの方、ローグ様は今後どうされるのでしょうか?」

 「それはこの後ゆっくり話すつもりではいるが・・・何か気になる事でもあるのか?」

 「ではぜひローグ様を頂けないでしょうか?」


 娘の発現に狼狽した王が驚愕に顔を染めた。

 一人娘であるアンジェ。もう十六歳であるから事からそろそろ相手を見つけなくてはいけないとは思っていた。その想いを胸に秘めながらも実行に移せなかったのは愛ゆえにだ。

 心の声を吐露させてしまえば──


 (うちの娘に釣り合うやつなどこの世にいるはずがない!)


 と、いつもアンジェのお見合いを蹴飛ばしている。

 まったくもって支離滅裂ではあるが、それが愛の形であるならしょうがない。・・・しょうがない?


 「なっ! アンジェ、お前それは一体どういう事だ?」

 「許していただけないなら飛び降りますが?」


 不思議な事は何もないですよね?っとばかりに淡々と話すアンジェ。


 これには聞こえてしまったリーザも目を丸くした。


 「アンジェ、とりあえず一旦落ち着こうではないか。これからアンジェは私に変わり世界を導く者となるのだぞ?気持ちだけで走ってしまうのは早計だとは思わないか?」


 態度には出さずにいるが王は必死だ。

 アンジェは出来のいい娘である。嫌な顔せず・・・と言うよりは幼い頃から感情の起伏に乏しいアンジェは黙々と激務をこなしている。現在は殆どの通常業務はアンジェ一人でこなし、分からない所や判断に困るところだけは王がアドバイスをしている。

 そんな愛娘の欠点がひとつだけある。


 「そうですか、では飛び降ります。今までありがとうございました」


 この娘、普段は何もわがままなど言わないせいか、一度口にすると一切人の話を聞かないのだ。


 先程、王が話している間に闘技場側の淵にゆっくりと移動していたアンジェは、言い終わるとすぐに飛び降りるのだった。




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