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手紙



私がこの国に戻ってから1週間経ちました。

その間、店のことは勿論、あのバカ2人に対する印象操作や、噂を流したり、今まで協力していただいていた貴族方にもう結構です、と言いに行ったりとやることが多く大変でした。


そんな中、ようやく陛下からの手紙が届きました。



「ありがとうございます。

お疲れ様です、ハーネス。

ゆっくり休んでください」


「いえ、主を差し置いて私が休むなど……」


「ハーネス、命令です。

休みなさい。

私が仕事を頼んだ時、体調を崩しているだなんてことがあれば困りますから」



ハーネス相手には、ハーネス自身を心配して休むように言っても絶対に聞きません。

ですが、私を主としてみているハーネスならば命令と言えば聞きますし、仕事に支障をきたすと言えば休みます。

面倒ですが、扱いやすい部類です。



「承知致しました。

失礼致します」



ハーネスが退出すると、私は溜息を吐き、手紙の封を開けました。



『エリス・フォーリア殿


我ら王家はそちらの要求を受け入れよう。


追伸


全てが終わったら一度城に遊びに来るといい。

王妃も気にしていた。

姿を見せてやって欲しい』



本文よりも追伸の方が長かったのですが……いえ、陛下も王妃殿下も既にあのバカ王子を見限っていたのかもしれませんね。

そうなると、次の王は公爵家から選ばれるのでしょうか。


まぁ、フォーリア公爵家には男児はいませんから外れることになりそうですが。

私が他家に嫁ぐとすれば分家の方から養子を取るようですし。



「エリス様?」


「……なんでもありません。

お父様は今どこにいらっしゃいますか?」


「奥様と庭でお茶をしています」


「では、私もそこに」


「かしこまりました」



私は陛下たちからの手紙を持ち、庭先へと向かいます。

庭先には、お父様とお母様が仲睦まじくお茶をしていました。



「エリス、どうしたの?」


「お母様、お父様、陛下からお手紙が」


「陛下からだと……?

あぁ、エリスの言っていたあれか」


「はい」



お父様が私の渡した手紙を読み終わると、フッと笑みを浮かべました。



「さて、次の王は誰になるのやら……。

うちには関係のない話だがな。

……エリスも、その気はないのだろう?」



お父様が私に確認をしてきます。

そんな心配は要らないのですが……。



「はい。

私は当初の予定通り、どこかの家に嫁ぐつもりでいますから」


「別に、婿養子をもらっても……」


「いえ、流石にそれは……」



婿養子という形で来てもらうとなれば、私の方が自然とその権力は大きくなります。

相手はそれを良しとしないでしょうし、女の身で領地経営となると、他の家になんと言われるか分かったものではありません。


それに、私には商会もあるので、そちらに専念したいというのもあります。

それを考えると、やはり婿養子をもらうよりも私が他家に嫁ぐ方が良いのです。



「相手は決まったか?」


「……いえ」



お父様の言葉で、残りの期間が少ないことを今更ながらに思い出されます。

正直、全く考えていませんでした。



「エリス、無理に決める必要はない。

ゆっくり考えなさい」


「はい、お父様」



あのバカ二人のことだけではなく、自分のことも考えなければなりませんね。

家のためになりそうなところを選ばなければなりませんね。

そうなると、商会のことも考え、やはりエリンスフィールの貴族から選ぶのが一番でしょうか?


また機会があればルアンか殿下に紹介してもらいましょう。



「あぁ、そうだエリス」



部屋へと戻ろうとすると、お父様に呼び止められました。

どうかしたのでしょうか?



「一度、王都へ行く。

準備をしておきなさい」



多分ですが、次の国王の件でしょうね。

陛下は勿論、他の公爵家の方々とも話し合わなければいけないでしょうし……。

そこに私を連れていくのは、商会の宣伝と他家の令嬢方と情報交換をするため、でしょうね。


もう1つは、王都には本店がありますからその配慮、といったところでしょうか?



「承知致しました。

出立はいつ頃でしょうか?」


「明後日には出たいと思っている」



思ったよりも早かったです。

元々準備はしていたのでしょう。

そこに私が加わるか加わらないかの違いだったのでしょうね。



「承知致しました。

すぐに準備します」


「あぁ」



アリスの治療は予定通り、ここでお願いしましょう。

回復した頃までには戻ってこれるといいのですが……。

それが無理なようでしたらアリスには申し訳ありませんが本店まで来てもらいましょう。



「ハーネス、ルーファス、明後日に王都へ向かいます。

それまでに準備をしておいてください」


「承知致しました」


「はい」



さて、あのバカ二人はどうしましょうか?

まさか、これで終わりだとは思っていませんよね……?

アリスを傷付けたのですからこの程度で終わるつもりはありませんし。


それは、王都へ行く途中の馬車の中で考えましょうか。

王都のお茶会に参加すればいい案がいただけるかもしれませんし。



「ふふっ、楽しみですわね」



私はこれからのことを考え、思わず笑みを浮かべました。

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