元勇者と剣舞祭予選(やっと)
「さぁさぁ等々この日がやって来ました!」
闘技場の近くに設置された解説席で受付嬢(元気)はテンション高くマイク型の魔道具を片手に解説をし出す。
「今回の剣舞祭はファーブル国が帝国に吸収されたので開催されないかと噂されてましたがそんな事は無かったですね!」
その受付嬢(元気)の隣には冒険者魔銀ランクのミスティ・レイドが設置されたテーブルに上半身をぐでーとだらしなく倒しながら片手で短剣をくるくると回していた。
受付嬢(元気)からの会話のパスにちらりと視線を向け、一応頼まれて出ている以上は義理分は頑張るかとゆっくりと背を伸ばす。
「んーまぁ伝統とか色々あるからねぇ。それにこれを楽しみにしていた武芸者も結構いるし、下手に無くしたら怨みが帝国に来かねないからやるしかなかったんじゃない?」
「身も蓋もないですね!ですが、私も楽しみにしていたのでどんな理由でも開催してくれるならウェルカムですよ!」
「おろ?受付嬢だと忙しいんじゃない?」
「金払いが良くなります!」
「……身も蓋もないね。」
苦笑いしながらもまぁこんなもんかと考えながら闘技場に上がって来た武芸者や冒険者達の数が150人になる。
「今大会は最初っから波乱だらけですが、ミスティさんですと誰が注目ですか?」
「んーとこの中なら何人か強そうなのいるねぇ。遠い東の国の侍って呼ばれてる人とか獣国の戦士とかも強そうだけど特にヤバいのが農「おーい、ミスティ、俺の応援しろよー!」……アレは負けて欲しいかな。」
最初の150人、その中に魔純塊ランクのヴェーデスが参加していた。手に持っているのは武器としては余りにも貧弱な弓の矢、一応鏃は見て分かる程度に刃が付いている。
当然ながらそんなヴェーデスに怪訝な視線を送る。そして参加者達はヴェーデスの素性を知っている者は苦虫を噛み潰したような表情に替わるがそれ以外の知らない参加者は侮蔑や怒りといった表情に変わった。その割合は後半の方が多い。
「おー、ヴェーデスさんですね!何時も女性を口説いていて奥さんが25人でしたっけ?」
その受付嬢(元気)の言葉で参加者の更に何割かが今にも血涙を流しそうな顔になるが等の本人は最近お熱の受付嬢(カサド担当)を探す為にキョロキョロと辺りを見回す。
そして、自身よりもヘイトを買っている人物を見付けた。
「……マジかよ。」
「えーと、リースはあそこか!」
闘技場の端の方、それこそ最初の方にでも上らない限り行きにくい入場口の反対側に笠戸は立っていた。周りの参加者が開始の合図で飛びかかれる様に身構えている中で気にもせずに観客席のリースを見付けていた。
余談だがリースとウルド一家に観戦用のチケットを渡したのは笠戸だが用意したのは領主であるサージェだ。当然ながら笠戸のやる気を保つ為に最前列のいい席を用意した。
その為、用意されたチケットで精々立ち見だと思っていたウルドは案内された席に戸惑い、何となくリースの為にいい席を用意すると思っていたシュルは落ち着いていた。ちなみに、娘のリナは初めて見る大人数に戸惑いながらもテンション高く飛び跳ねている。
そしてリースは用意された席の上で笠戸に手を振ろうとして周りの人の熱狂にビックリし、大人しく座っていた。
そのリースの様子に笠戸は暖かい気持ちになりながらも早く終わらせてリースの傍に行かなければと考えている。
そんな良い意味で落ち着いていおり、悪く言えば周りが眼中に無い笠戸は近くに寄ってきたヴェーデスに気が付く。
「あ、あの時の。」
「よぉ、俺はヴェーデスだ。お前は、まぁ有名だな。」
「あーまぁそうだな。一応、カサド・ホンジョウだ。」
念の為の軽い挨拶をする笠戸はヴェーデスの握っている物に気が付いた。
「それで戦うのか?」
「ん?おぉよ。俺はレンジャーだが短剣よりも弓のが得意でな。近接武器もこっちのがやりやすい。何なら投げれるからな。」
簡単に折れそうな矢を自慢げに見せるヴェーデスに笠戸は感知系のスキルを発動させる。
「……戻って来るのか。」
「へぇ分かるのか。おうよ特注でな、一定時間で戻って来る。」
「でもそれ魔法じゃないのか?」
「まぁな、でもグレーゾーンだ。流石に直接攻撃するような魔法は禁止だが武器の強度上げたり鋭さ上げたりは用意した獲物の範疇で認められてんだよ。」
「そうか。じゃあ色々な奴がいるんだろうな。」
「何だ?怖気付いたか?」
そう言ったヴェーデスに若干の申し訳なさを滲ませながら笠戸は尋ねる。
「いや、見れないのは残念かなって。」
その言葉にヴェーデスは不思議に思ったがすぐに意味が分かる。要は何もさせる気が無いのだと言っていた。本来ならその言葉を後悔させてやろうと考えるが先日のギルドでのやり取りでヤバい奴だと認識しているので何も言わずに苦笑いを浮かべる。
「そう言えば、おっさんが小鬼の軍勢で呼ばれた冒険者何だろ?もう1人は大会に出てくるのか?」
「……いや、鉄火線は対人が苦手だからな。多分出ないと思うぜ?」
笠戸がもしかしたらもう1人の魔純塊がいるかもと辺りを探してみるがそれらしき人物はいない。話が逸れた事に乗っかりながらヴェーデスも答える。
そんな中で受付嬢(元気)が声を上げながらいつの間にか解説席の後ろに用意されたデカい鐘の傍に立っていた。
「さぁさぁ、皆さん準備は良いですか!この鐘が鳴ってから30分以内に決着が付かないと夜中に戦う事になりますからね!まぁ今までそんな事は数える程度しか無かったんですけどね!では、ミスティ・レイドさん鳴らしてください!」
「おろ?私なの?」
鐘の傍にあるデカいハンマーをささどうぞといわんばかりに




