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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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元勇者と|魔純塊《オリハルコン》

依頼を受けて凡そ半日、日が沈む前に冒険者ギルドに戻って来た俺はそのまま依頼書を持ちながらクエストカウンターに向かう。そこでは受付嬢の方々が戻って来た冒険者やこれから依頼に向かう冒険者の人々を相手に笑顔で相談やら依頼の内容やらを説明している。


元王都なファーブル領のこの街はそこらのギルドよりも多くの冒険者が集まりやすい。その為ギルドの受付嬢とて楽ではなく、中々の業務量だろう。


以前ミスティが言っていたがそれぞれの冒険者の担当も粗方決まっており、その冒険者が如何に依頼をこなすかで彼女達の給料も決まるとか……。


俺を担当している人は凡そ10年ほど受付嬢をしているベテランで色んな冒険者の人を担当して来た。だが流石に最近はより若い受付嬢が良いみたいな冒険者が多く、手持ち無沙汰な時がある。


なので時間が比較的に空きやすい人なので俺は優先的にその人に依頼書を持っていくようにしていた。まぁ、名前知らないけど……。


その人が弓を背負ったイケおじにクエストカウンター越しに絡まれていた。


「色んな国のギルドに行ってきたがやっぱ此処が1番だ。何故か分かるかい?」


「えぇっと……。」


「君がいるからさ。」


何故だろう、顔はイケおじなのに言動がダサい。背格好も高身長で無駄な筋肉も見えず、歴戦のレンジャーとか言われても信じられそうなのだが如何せん言動が全てを台無しにしていた。


現に他の受付嬢の方々はあからさまにイケおじを無視し、イケおじの相手を押し付けられているのがよく分かる。


そんな時、イケおじが俺の視線に気が付いたのか此方を見た。目と目が合う。なんてのは表現的に気持ち悪いがそうとしか言えない。


イケおじが顔を向けたからか受付嬢も俺に気が付き、あからさまにほっとしている。何に対してかは分からないが一応未だに手を握られているから逃げられはしないと思うのだが……。


だが、イケおじはあっさりとその手を離すとツカツカと俺に歩み寄る。なんだコイツと思いつつ攻撃されても良いように軽く構える。


だがそれは直ぐに杞憂となった。


「よぉーミスティ、漸く俺の女になる準備が「なるかボケェー!」出来たかってじゃれるなよ!」


イケおじは担いでいた棺桶の影にいたミスティに近寄ると抱きつこうとする。だがそれを素早く躱したミスティは短剣をイケおじの眉間に2本、喉元に1本、ついでに股間に3本投げた。


イケおじはそれらを背負う弓を取り出し軽く回す。それだけで短剣は弾かれ床や天井に突き刺さった。


「ちっ!」


「いやぁー熱い挨拶だ!その熱を冷まさずにベッドに行かないか?」


「ねぇ農家、依頼で目の前のおっさん殺すのって頼めない?」


「すみません、当ギルドでは殺人の依頼は受けておりません。」


初めて見るキレ気味なミスティの依頼、だが当然そんなのを受けられるはずも無く近くに寄って来た受付嬢がアッサリと却下する。


その言葉に小さく舌打ちしながらミスティはイケおじから距離を取りつつ間に俺を挟む様に動く。イケおじはそんなミスティに少し驚きながら俺の方を見た。その目は石ころに躓いたような、ちょっとした苛立ちと怒りが見える。


だが俺には関係無いので依頼書を受付嬢に渡した。


「……大丈夫ですよ。この依頼の期限は2週間、まだ充分な時間が「取り敢えず26匹倒して来たので査定お願いします。」ありま……え?」


そのまま棺桶に括りつけといた袋からホーンタイラントの角の入った袋を取り出し渡す。ホーンタイラントの角が光るのは魔力による物なので時間が経つと消えるが未だに光っているので倒してきたばかりだと充分な証明になるだろう。


渡された袋を開け、中の光る角を見た受付嬢は固まった。固まっていても浮かべている笑みは流石にプロだなぁと思わせる。


「ん〜〜?こんな奴が?」


イケおじが相変わらず失礼な視線で俺を見てくるが俺は気にしない。この程度なら前の世界でもひたすら向けられた。


固まっていた受付嬢が漸く動き出す。ギギギと若干機械じみているが変わらず笑顔だ。


「…………ふぅ、おめでとうございます。これでランクを鉄から金へ引き上げさせて頂きます。依頼達成によるお金は50万、追加のホーンタイラントは一体につき、20万となります。細かい査定は後ほど行いますので現在は依頼の50万を先にお渡しします。残りは夕方頃に来て頂ければ査定は終わっているかと。」


1度息を整えた受付嬢は何処か壊れたのか最近の話し方が消えている。何か畏まっているようだ。そのままカウンターに向かうとそこから金を取り出しているので近くに寄る。


その時、後ろから殺気を感じた。発生源はイケおじだと直ぐにわかるが何故殺気を向けて来るのか分からない。だが明確にミスティよりも強いのは分かった。


だがらだが、反射的に威圧を放つ。雑魚なら気にしないがある程度強いなら話は別だ。絡まれると帰るのが遅くなり、リースと会う時間が減る。それは許容出来ない。


威圧されるとは思っていなかったのかすぐさま殺気は消えた。戸惑っている気配を感じるが無視し、金を受け取ると袋に詰めて担いでいる棺桶を下ろした。


「ホーンタイラント討伐中に殺されていた商人の馬車があった。その中にあった荷物何だが……。」


「分かりました。当ギルドでお預かりします。商人の身分証等は御座いますか?」


「あ、私持ってるよー。」


ミスティは懐から商人ギルドの証明書を取り出すとそれを受付嬢に渡す。俺はそれを確認してからそのまま帰路に着いた。











「何だったんだアイツ?」


「カサド、通称農家。」


右手で左の二の腕を抑えているクソおじに私は端的に説明する。腕を抑えているのは震える腕を抑える為か、または勝手に弓を構えない様にする為か、まぁ私には分からん。


だけど一つ新しく分かったことがある。


「……アレで金とか……詐欺にも程があるぞ?!」


私の方を見ながら怒鳴るクソおじ、ヴェーデスは魔純塊(オリハルコン)だ。その中でも中位の強さだが明確に私より強い。昔は面倒を見てもらったが女癖が極端に悪く、気に入った女性が誰かと話すのすら嫌だとか極度のヤバい奴だ。


そんなクソおじが自分が気に入っている受付嬢に話し掛けられてた農家に殺気を向けた所、直ぐに反撃で威圧されていた。


最低でも私以上だと思ってたけど、魔純塊(オリハルコン)すら怯えるとか、マジで農家パない。


そして、アッサリビビってるクソおじにニヤァと笑みを向けると何処か決まり悪そうなクソおじは農家が置いて行った棺桶に目を向ける。


「ち、邪魔だよこんなもん。」


そう言い、棺桶を蹴る。


「ちょ!?」


蹴られた棺桶はアッサリと吹き飛び、途中の長椅子に当たったあとに壁に激突した。


「ふん。」


これには受付嬢や他の冒険者も嫌な顔をする。だがこのクソおじの強さを知っている為に滅多な事は言えない。大体、このクソおじは小鬼の王の討伐の為に集められていた人物だ。止められるとしたら同じランクで集められた鉄火線でもいないと無理だろう。


その時、壁に当たった衝撃で棺桶の蓋が外れた。


「……は?」


この時のセリフは多分この場にいた全員が最低でも思っただろう。










何故ならボロボロの衣服に血を撒き散らし、至る所に杭を打ち込まれた少女が入っていたのだから……。

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