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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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元勇者とホーンタイラント

受けた依頼はホーンタイラントの討伐依頼、討伐証明は特徴的なその角だ。ホーンタイラントはファーブル領地と帝国の元辺境、ゼファフ領地の境目にあるゼファフ荒野に住む人喰い鬼だ。


身長が平均的に4m程あり、手足が長く、胴がやたら短い。その手足も枯れ枝を思わせる程にガリガリの様相だ。肌の色は褐色の肌に紫の斑点が所々にあり、顔つきは落窪んだ両目と常に何か咥えている口、そして螺旋状に捻れて発光している角が荒野にてよく目立つ。


このホーンタイラントを狩れる者はその発光している角を目印に探し、狩れない者はその発光している角が逃れるのに一役買っている。


一体の強さは金剛で基本的に群れない。そもそも子育てをしているかすら怪しいと学者とかは言っているが俺には関係ない。


基本的に立って歩いているが獲物を見つけると四つん這いになりとんでもない速度で走りよって来る。そして口に咥えた何か、岩とか丸太とかを振り回す。仮にその岩とかを壊すと今度は噛みつきや長い手足を使った攻撃にシフトし、辺り一面に甚大な被害を与える。


荒野に出る商人何かはこのホーンタイラントを如何に避ける道を知っているかで商売人の実力に直結しているとか………。


当然、そんな魔物が領地の境目とはいえ存在するなら凄腕なファーブル領地の領主は定期的に私兵を使っての駆除をしている。お陰で商売人の何割かは商売しやすくなり新しく参加した商売人も多い。


だが領地間の道の近くにいるならともかく離れた所のホーンタイラントは基本的に討伐されずらい。私兵とはいえ兵士を動かすのは金がかかる。それこそ金剛クラスを雇うよりもより多くの金だ。さらに、先日のゴブリンの群れによる大規模討伐隊がより領主の財源を食った。これにより何時もなら増えたら減らしていたホーンタイラントが規定数を超え、ちらほらと被害が出始めた。この依頼はそんな事情で張り出された物だ。


そんなホーンタイラントが、荒野の暴れん坊が、商売人の目の敵が四つん這いで接近しようとすると同時に頭が爆ぜていた。


「…………うわぁ、強いとは知ってたけど農家マジパない。」


結局付いて来たミスティは此方を発見するや否や四つん這いになりものすごい形相で迫るホーンタイラントを発見し、それを俺が適当に拾った小石の投球で頭が爆ぜている光景を見ていた。


「コツは…………特に無いな。」


「あったら寧ろ驚いてるよ?」


強いて言うなら此方を見つけたホーンタイラントはフェイントなど無く全力で寄ってくるので眉間が狙いやすい事だろうか?


そんな事を漠然と考えながら砕けた頭の近くに転がる角を回収し、[透過の水唱剣](クリスタルソング)を創り出して落とし、辺り一体の情報を仕入れる。


ホーンタイラントは隠れないので見付けようと思えば楽だが如何せん荒野は広く、3体目までは地味に探していたがあまり自重する必要性も無いと感じて今は[透過の水唱剣](クリスタルソング)使用して効率よく狩っていた。数は既に24体、今向かう先でも二体ほどが喧嘩?しているようなのでさっさと向かう。ただ近くに生き物の反応も有るので間に合えば救助もするつもりだ。


見付けたホーンタイラントは壮絶に喧嘩していた。お互いに口には何も咥えておらず、むき出しの牙と爪でお互いを削りあっている。


その足元には残骸の馬車があり、無惨に殺された商人のものと思しき足が転がっていた。


「取り敢えず爆ぜろ。」


「農家、新手の魔法の呪文にしか聞こえない。」


振りかぶり、全力で小石を二つ投げる。風切り音等よりも余程速い小石は空気の摩擦で一瞬発光し、それに気が付いたホーンタイラント達の頭に当たった。予想どうり爆ぜる。


そのまま角の回収と遺体の確認の為に近寄る。


「……やっぱり死んでるか。」


「だねぇ。」


商人と護衛、数にして五人分の死体が見つかった。そのどれもが食いちぎられており五体満足な者は一人とていなかった。


「取り敢えず、身分が分かりそうなの探しとくか……。」


「じゃあ農家は馬車の方探しといて。」


「分かった。」


ミスティは遺体のあった場所辺りを探し始め、俺は壊れた馬車の木材を退かし始める。


「……ん?何だこれ?」


退かし始めると直ぐに違和感に気付く。商人の馬車なのに品物らしき物が無い。荷台らしき場所にはそれなりに立派な棺桶が一つ積んであるだけだ。


その棺桶はホーンタイラントの攻撃に晒されていないのか差程傷はなく、もしかしたら貴族の為の商品なのかもしれない。だがこんな物一つの為にゼファフ荒野に来るのは採算が合うとはとてもじゃないが思えない。


「農家ーあったよー。」


そう考えていると商人ギルドのカードを見付けたミスティが戻って来た。


「いやぁ、これも食べてたのかホーンタイラントの中にあったよー。」


血や胃液等でベタベタなそれを汚い物でも触るような持ち方で持っているミスティは近寄ると不思議そうに棺桶を眺める。


「おー棺桶運んでお陀仏とか……。身体張ったギャグにもならないね。」


「だな。」


取り敢えず、棺桶もギルドに持って行く事に決めたのでそれを担ぎ、今日の依頼はこれで終わりにしよう。依頼はホーンタイラント2体だが討伐数により報酬は増えるので無駄ではないはずだ。

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