元勇者と辺境伯
携帯の充電が無いから途中で投稿
ミスティに対する復讐を考えながらコーヒーもどきを飲む。この飲み物は帝国の特定の地方でのみ取れる高級な飲み物らしく、これが出される時点で最高級なもてなしとされている。
まぁ[叡智の大書庫]からさっき調べたんだが……。
名前はモロコーヒー、覚える気は無いが偽紅茶とかでいいんじゃないかなと思う。
一応お偉いさんがお呼びらしいのでリースは別室で預かってもらった。ローブと護身用の杖を渡し、我慢できなかったら直ぐに呼ぶように言っているのです何かあったら直ぐに行ける。何か起きそうでもすぐに行くが………。
ちょっとだけ寂しそうな顔をしたが待つと言ったリースの決意は無駄にしたくないので俺も堪える。なので十分間も待たせないで早く来い辺境伯。
そう思っていると扉が開き、そこから幻影を掛けているダークエルフが入って来た。
「待たせてしまって御免なさい。急ぎの用事が入ってそれに対応していたのよ。」
一本の棒を通したようなブレのない足取りで対面のソファーに座ると先程まで俺に怯えていた執事服のサキュバスがすぐ様彼女にモロコーヒーを注ぐ。
それにダークエルフが砂糖を少し入れ、一口飲んだ。それに合わせて俺も飲む。
「一応、毒がない事を示す為なのだけど……。」
そう言いながらサキュバスを見るダークエルフ。その耳元で「先程からゴクゴク飲んでます。」と囁くサキュバスだがゴクゴクは飲んでいない。ようやく今二杯目を飲み干したのだから。
まぁダークエルフが来る前に一杯程飲んでいたが……。
サキュバスからの言葉にちょっとだけ驚いた様子のダークエルフだがテーブルの上の菓子も一つつまむと口に含み、俺に毒は入ってないと引き続き誇示して来る。
だが……。
「……あの、既に四枚程食べてました。」
サキュバスからの情報に少し固まっていた。
一応、帝国の作法では呼び出した本人が茶と菓子を一口ずつ嗜み、毒が入ったないと誇示するのが定番だからだ。
それらの過程を飛ばすのは礼儀を知らない者か、もしくは知りながらもする事で相手を信じているかのどちらかだ。
ちなみに、俺は前の世界での貴族の嗜みとしての座り方や飲み方をしているので礼儀を知らない人とは思われにくいだろう。なのでダークエルフは驚いている。
「そう、それじゃあ話を始めましょうか。冒険者のカサド、ランクは決して高いとは言えない訳だけど、ミスティ・レイドからの情報では貴方が魔毒の森付近にて小鬼の群れを単騎討伐を果たしたと報告されたのだけど、それは正しいかしら?」
「訂正がありますね。魔毒の森付近では無く、その先の魔族領フェフェメル平原にて討伐を果たしました。」
一応、言葉使いを気を付けながら頭の中でこれからの事を考える。
ミスティから情報を得たならゴブリン討伐に嘘を付いても意味はないだろう。
後はどれ程情報を得ているかによってこれからの立ち位置が変わる。
傍に立っていたサキュバスが書類を取り出しダークエルフの前に置く。ダークエルフは出された書類に眼を通しつつも俺の眼や指等の細かな仕草を確認し、嘘かどうかなどの判断をしているようだ。
大分隠し事が得意なのだろう。あの世界の中でもトップクラスの無表情に仕草の無さ……。心を読む魔法使おうか多少悩んだが下手に使って敵対されるのも困る。
「そう、此方の情報では小鬼の群れは10万にも及ぶと報告がされているのだけれど……。それらを全て貴方が?」
「全てでは無いですね。ある程度は減らしましたがかなりの数は逃げているので……。あぁ、そう言えば最初は1万と聞いていたのですが?」
「それについてはごめんなさいね。小鬼が10万も居るとは思わなかったのか、情報が途中で下方修正されていたのよ。その情報を流していた官僚は処分を下したわ。」
お互いの探り合い、今の所相手側に嘘の感じはしないがもしかしたら騙されている所があるかも知れないので話は半分程度聞くに留めておく。
「それは困りましたね。無能が役職に就いていると上も下も混乱してしまう。」
「えぇ、だからこそ……貴方のランクの低さは看過できないのよ。」
多分本題だろう。空気がより重く感じる。ダークエルフは出された書類の一番最後を俺に見えるように向きを変えてテーブルの上に置いた。
「率直に言いましょう。貴方のランクを最低でも魔純塊ランクまで引き上げたいと思っています。これはギルドにも話を通してあるので実質拒否権は無いに等しいわ。」
出された書類は単純に此度の件により俺のランクを魔純塊ランクに引き上げると書かれていた。既にギルド長の印鑑や辺境伯のサインなどもあるので言っていた通りに拒否権は無いだろう。




