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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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怠惰の魔王とメイドの少女

時は戻り、罪の会談の有った日


白の少女は呼び出しを受けたので会談に向けての準備、と称して大きな天蓋付きのベッドの上でグータラと伸びていた。


「……怠い……どうせ私がする事ない…。行く必要無い?……うん無い。だから行くのやめよう。」


着ている白いワンピース一枚、それ以外の衣服を一切身に付けておらず、これから行われる魔王の会談に行くには余りにも威厳がない。


何かと屁理屈を捏ねながらいつも行かない様に思考を巡らすが途中でそれもめんどくさくなり結局行くのがこの少女のいつもの事だ。


そして、こんな少女が魔王で良いのかと疑問に思う者もいるが勝負すれば実力差は歴然としているので挑んでくるのは何も知らない馬鹿か脳筋の憤怒の眷属くらいなものである。


そんな少女だが幾ら何でも何もしなければ自身の領地は回らない。魔族領は魔毒の森を境に世界の半分程もある。その中で7人の魔王がそれぞれ領地を定め、そこに住む魔族を人間の侵略者や魔獣の災害から守る代わりに税を納めてもらっている。


簡単に言えば、人間と然程変わらないのだ。


人間が王の元に騎士があり、農民を守る為に騎士が動くように魔族は魔王が動く、もしくは魔王の配下が動く。


そして、何かをする事が絶望的な程に嫌な怠惰の魔王はそれらを傍らに立つ自身に瓜二つな少女に全て託している。


「ミー、行かないとダメ。また憤怒が来るかも知れない。お城壊されたら困る。」


着込んでいるのはメイド服。けれどそれ以外の全てが怠惰の魔王と瓜二つだ。


「……ティー、分かってる。………けどどうせやる事無いだろうから呼ばないで欲しい。」


「やる事はある。情報を仕入れてくれれば後は私がする。ミーが知れば私が動ける。意味はあるよ。」


そう言いながら予め用意していた下着を取り出すメイドの少女。


「…………着なきゃダメ?」


「ダメ。」


観念した魔王は少女のされるがままに着替えさせられた。




「……それじゃあ言ってくる。……ご飯は…………………………………………………………………………………………久し振りに血が飲みたい。」


「悩むところ?ミーが望むなら用意する。首を洗って待ってる。」


言われた事に一瞬だけ嬉しそうに微笑んだ魔王はすぐさま怠そうな顔のまま魔術を起動させる。


会談の間に行くための魔術は魔王の称号が無ければ発動しない。以下にメイド服の少女が行きたがってもこればかりは魔王の仕事なのだ。


「多分嫉妬の情報か代替わりした桃の情報だと思うからしっかりね。」


消え行く主人を見守りながらメイドの少女は手を振った。


















部屋が輝き魔方陣が浮かび上がる。白い魔力が波打ち嫉妬の魔王はその場に現れた。


「……怠かった………けど収穫もあった…。うん…………モモル……美味しかった。……でもティーの血のが美味しい。」


自身の部屋に戻ってきた魔王はそのまま着ていた衣服を全て脱ぎ捨てると部屋の半分を占める大きなベットの上に寝転がる。


「……大体、黒は意地悪だ……それに何考えてるか分からない。…赤は鬱陶しいし……金は眩しいし………桃は………前のが良かったな。ふああぁぁ…………黄色は…………私よりちっこいから同盟……。……紫も近いし、同盟…………。」


今日得た情報とこの後の食事を思いながら嫉妬の魔王は久し振りの外に疲れたので襲って来た眠気に逆らわずにそのまま寝入る。



「んぅ……ふああぁぁ……。寝ちゃってた……。……あれ?外、明るい……。」


起きた怠惰の魔王はカーテンから入る木漏れ日を浴びながら不思議に思う。


自身が帰って来たのは確かに昨日だ。夜になる前だ。夕暮れを見ていたのを彼女はしっかりと覚えている。


なのに


「……ティー、ご飯は……?」


自分のメイドがご飯に来ない。それは今まで一度も無かった事だ。


何時も自分がいる時は側で掃除をしたりしていた自身に瓜二つな少女がいない。その事に疑問を抱き、探す為に自分を浮かせた魔王は城を虱潰しに探して行く。


最初は天辺付近を、徐々に下がり、時間を掛けながら行っていた捜索は夕暮れ程になると荒れ始め、夜には一番下の階まで到着した時には怠惰の魔王は自身の足で歩きながら全てをなぎ払っていた。


「何処⁈ティー!!何処にいるの!!悪ふざけはやめて!私が悪かったなら謝るから!ちゃんと仕事するから!行かないでよ!何処!!何処なの!!ティー!ねぇ、姿を見せてよお姉ちゃん!!私を一人にしないで!!」


城を探し尽くした魔王は更に辺り一帯を探したが見つからず、城の前の橋の上で幼子のように泣いていた。
















怠惰の領地の外れ、そこでその男は嗤っていた。


「キシヒ……上手く行った。死なない少女とは恐れ入る。けどなぁ、しょうがないんだぁ。帝国はオイラに耐え難い仕打ちをしたのさぁ。だから、恨んでくれよ?キシヒャハヒハヒハヒハ!!」


ズルズルと鎖を引きずり、その先に繋がれている杭を打ち付けられたメイド服の少女を連れて、森を目指す。

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