↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
47/66

嫉妬の右腕

サージェに頼まれ街道を飛んで行くサキュバス。その身体には認識阻害などの魔術が掛けられており、魔純塊オリハルコンクラスですら余程近くを通らない限り気が付きもしない。


だが一応広場を避けて裏口から飛んだサキュバスは基本小心者なので自分の術に自信が無く、今も飛びながらビクビクと怯えていた。


「うぅぅ、やだよう。ゴブリンの群れの近くとか絶対碌な奴いないよう。アイツら私達のこと隙あれば襲おうとするから嫌い……。だけど、サージェ様からの頼みだし、人間一人なら何とか連れ出せる。……はず…………きっと………………たぶん。」


一応、実力的には小鬼の王、ヴェゼと同格だが彼女は自分に余りにも自信が無い。左腕と呼ばれるもう一人の側近からもいつも怒られるので余計に小心者だ。


だが嫉妬の魔王が選ぶだけは有り、仕事場と森との間の町を半日も経たずに飛んで行く。


更に飛び、時刻は夜。既に森は見えており、その近くの開拓地らしき場所に荷馬車が有るのも見えた彼女は速度を緩めながら降りようとし……。


「……ふぇ?……ピャアァァァ⁈」


森の端の方で巨大な結界が突如出た所を目の当たりにした。慌てて結界から一番遠く、一番高い木に降りた彼女はその出鱈目な結界に驚いていた。


「え、何あれ?何であんな規模の魔術が行使されてるの?意味分かんない。え?アレってミスティ・レイドって人がやったの?魔銀ミスリルってこんなこと出来るの?私じゃ一月、ううん、半年は無いと無理だよアレ⁈」


逃げる事に定評のある彼女は逃げる為に防壁型の魔術は特に覚え込んでいる。その腕を買われて右腕の座にいるがそんな彼女にすらこの結界は即席では貼れない。


なのに、発生するまでのスムーズな感覚や、魔力の動きはどうしても事前に準備をしていたではあり得ない程に淀みがない。


あれ程の結界を半年以上の準備の末なら魔力を貯めておく魔具などの反応があるはず。それすら感じないなら即座に作ったか自分ですら反応できない程に巧妙に作られた魔具と言うことになる。


そして、そんな魔具があるなら彼女がそれを知らないはあり得ない。何故なら逃げる時に色々使えるからだ。


故に、アレは即座に発動したものだと理解した。


「あわわわわ、幾ら何でも魔銀ミスリルランクが出来るとは思え無いし、ならアレってヴェゼの奴が張ったのかな?でもヴェゼは結界得意じゃ無いし……。うぅぅ、も、もしかしたらミスティ・レイドが偶然手に入れた魔具の可能性も有るかも……?」


絶対にあり得無いと思いつつも小心者な彼女は絶対を信じない。何より、あの規模なら仮にミスティ・レイドが張っていなくても異変に気が付き側に来ているかも知れない。


そう判断したサキュバスは森に降りると結界に歩み寄る。


見た目は美しい銀の城壁を模しており、魔力によって銀の鱗粉みたいなのが揺らめいて形作っている。結界は今まで見た事が無い程に頑丈に作られており、これを突破するなら魔王クラスでも不可能だと理解してしまう。不思議に思いながら見ているとふと思い出す。


この森にいる魔王クラスすら欺く魔術師がいるとサージェが言っていたのを……。


その事を思い出したサキュバスは顔を青ざめ寄る前に何で思い出さなかったのか悔やみながら離れようとし、結界越しに小鬼が刻まれてるのを見てしまう。


中の様子は何とか見えるが結界には触れない。もしかしたら触れたら位置がバレて自分も引きずりこまれるかも知れないからだ。


何やら先の平原でヴェゼの軍勢が何か一人の剣士らしき人物と戦っているように……見えない。あれは戦いでは無いと冷や汗を掻きながら見てしまうサキュバス。


群れが刻まれ、肉塊に変わるがそれを誰も止められない。その男から距離を取ろうとしているヴェゼが見えたがなんか長い武器が直ぐ側まで迫っていた。


魔王クラスの実力があるヴェゼが逃げている相手。それが一人しかいない。その事実に彼女は気がつく。


(……もしかして、この結界もあの人が?)


もしそうならとんでも無い事だ。見た所剣技も相当なレベルであり、肉体的な強さも一級品だろう。少なくともサキュバスは彼と接近戦をしろと言われたらヴェゼよりも惨めに逃げる自信がある。


にも関わらず、このレベルの結界が貼れるならまともな人物では無い。かつて見た魔金剛アダマンタイトクラスですら人外すぎたがそれすら超えている。


その結果、サキュバスはとある事をまた思い出す。


「……も、もももしかして…………勇者?」


稀に生まれる、又は呼ばれる人の兵器、勇者。


魔王を殺す為の存在であり、人外過ぎる実力を持つと言われている。


魔族領では悪い子は勇者が来て手足の爪から順番に刻まれるからねと言い伝え(子供の躾のため)られている。


その事を思い出した彼女は直ぐにでもサージェに知らせなければと思い、立ち去ろうとするが次の瞬間にはヴェゼが殺され、結界が解ける。


慌てて茂みに飛び込み息を、気配を消す彼女は茂みの隙間から様子を伺った。


平原に散らばる無数の肉片、その中に一人だけ佇む人間の剣士、辺りには血は一滴たりとも無く、余りにも不思議で不気味な光景に彼女は震えた。


そして、その剣士が帰ろうとした時だった。


「…………。」


無言で、無機質な視線で此方を見た。


「……ぁ。(私死んだ)」


しっかりと視線が噛み合い、認識し合っているのが分かったサキュバスは自身が死ぬと理解する。


逃げるべきなのに身体が動かず、得意な逃げる為の魔術すら紡げない。


噛み合った視線は数秒程度、だがサキュバスは一時間以上に感じ、彼が一歩踏み出すとき

同時に意識を失った。




翌朝起きたサキュバスは生きてる事に感謝しながら全力で気配を消し、認識阻害を掛け、バテる事すら厭わずに全力で飛んで帰った。


サージェにこの事を伝える為に……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。