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元勇者、子育てに奮闘する  作者: カランコロン
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元勇者と少女、村での一日

「ありがとう。」


そう言い、頭を下げるのは先程ウルドを殴った男で、この村での立ち位置的には村長に近い役割らしい。


ちなみに村長はおらず、一番目に魔獣に襲われて森の中に引きずり込まれたらしい。なのでこの男が村長がわりなのだとか……。


頭を下げる男の後ろには凡そ十人程の人達がおり、この村の総住民らしい。


元々はもっといて、大体三十人程で開拓を命じられていたが度重なる魔獣の襲撃や飢餓による餓死、更には仲間内で殺し合った人もいたのだとか……。


男性はウルドを含めて4人、女性は婆さん含めて6人、女性がいる理由は家族ごと来た者の生き残りだとか。


まぁ、殆どの女性が未亡人になってしまったと泣き笑いしながら語った女性には[翡翠の回剣](アニファティマ)を深く刺して無かった事にしている最中だ。


国からの命令でこの地にいるが最愛の夫が目の前で喰われ、トラウマしかないのに離れられない。既に目が死んでおり、心が壊れかけているのは分かったのでその女性に許可を貰ってから彼女のトラウマと夫そのものを記憶から消している。ちなみに、他にも消して欲しいと懇願したのは2人いた……。


出来れば使いたく無かったがこの力で救われる人もいる。何より、救うと決めたのならやれるだけの事はやるつもりだ。


食料を恵んだ事に感謝されるが速くしないと腐るぞと伝えると今は全員が村の真ん中付近の広場(特に何も無い)で俺の持って来た食料を加工しながらどうするか話し合っている。


その中で俺はリースを抱き上げながら村の周りに杭を刺して行く。まぁ村の周りは森なので殆ど森の中を歩いているが……。


時折魔獣等が此方を伺っているが気にせず杭を刺す。そこらの木を木の枝で切り、魔法で加工しながら次の刺す位置まで持って行き、軽く突き刺してから跳んで弱めに殴る。それだけで木の杭は半ばまで埋まり、丁度俺の頭と同じ位置まで下がった。


その時点で魔獣は離れており(寧ろ逃げた)わざわざ追う必要もないので放置しながら作業を続ける。


「えっと……何してるんですか?」


「ん?あぁウルドか…。杭刺して境界線作ってる。とゆうか、口調変わってないか?」


三百本ほど刺した所でウルドがやって来た。その手にはお粗末な斧と木製のぼろっちい盾が握られている。


「え、いや、みんなの命の恩人ですし、口調を改めようかなと……。あ、これは自衛用です。」


違和感が強い口調だがそれよりもきになるのがこのゴブリンよりも弱い判定の男が粗末な斧を持っただけで自衛が出来るとは思えない。


「別に口調は気にしないで良い。後、そんな武器で殺せる魔物や魔獣は此処にはいない。」


手に持った木の棒を振り、そばに立っていた木を切り倒す。地面に付くよりも速くな魔法で余分な枝葉を切り飛ばし、先端を尖らせ木の杭を量産する。


その光景に何故か苦笑いするウルドは「確かに……。」と呟いた。


暫く杭を刺して回り、一時間程で現在の村の面積の五倍ほどの敷地に境界線がわりの杭が出来ると一休みとして切り倒した後の切り株を引っこ抜いて作った椅子に座り込む。


収納からモモルの実を出すとリースに渡し、自分用にはりんごっぽい果実のリンコを食す。……何故りんごだけ名前っぽいのかは知らない。


休憩を終わらせると杭に仕込んでいた魔方陣を発動し、結界を展開する。効果は魔獣の注意を村に向けない為の魔法式であり、これでこの村の安全はほぼ確実に保たれるだろう。


結界が発動し終わり、効果を確認するために魔獣の一体を引きずりながら近寄ると結界が近づくたびにコモドドラゴンの様な魔獣は暴れ、一番近くまで寄ると痙攣しながら白目を剥いたので軽く投げ飛ばしておく。


効果の確認が終わった頃には日も沈み始め、そろそろ帰ろうとしていたら村人総出で止められ、止む無く泊まることとなった。


出来れば家に帰りたかったが初めての外泊にちょっと興味があるけど人が苦手な為に側にいて欲しがるリースが可愛くて泊まる事にした。


村外れに手早く作ったテント。その側に切り株の椅子を置き、リースを膝上に乗せながら空を見上げる。


ザッザッと近寄ってくる複数の足音が聞こえたのでそっちを見たら婆さんとウルド、後村長代理が来ていた。


「改めて……ありがとう。お前さんが来なかったらみんな近い内に死んでいた。」


「……で?それだけを言いに来たわけじゃないだろ?」


目の前に立つ3人は同時に頭を下げて感謝をするがそれだけの為にわざわざ人が来にくい村外れに来るとは思えない。


そして案の定、村長代理が顔を上げると申し訳無さそうな顔をしている。


「……お前さんが凄腕の冒険者なのはウルドから聞いた。この村にはお前さんに払える金品はもう殆どない。すまない……。」


「気にすんな。そもそもウチの子が助けたいって言ったから助けたんだ。感謝なら俺じゃなくてウチの子にしろ。」


そうゆうと村長代理は驚いた顔をした後リースを見て「ありがとう。」と顔を寄せて感謝するがいかんせん対人恐怖症のリースは怯えて俺に抱き着く。


「………。」


「………。」


重い沈黙が辺りを包んだ。


「……あー、怖がりなんだ。」


「そ、そうか。なのに助けてくれたんだな。ありがとう。」


今度はリースに寄らずに感謝する村長代理だが何処か悲しそうだったのは気のせいではないだろう。

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