元勇者と少女、遭難者に出会う
お昼過ぎに響く、扉を叩く音。ガンガンドンドン叩く音はその音を鳴らしている者の余裕の無さに比例しているだろう。
だがだからと言って煩くてイラつくことに変わりは無い。何より、食べようとしていたリースが音にビビって椅子から降りて俺にしがみ付いている。
どうやってあの結界を抜けたのか考えながら流石にまた魔王クラスの実力者とかじゃ無いだろうなと願う。
まぁ今回張ってある結界は戦力が高い奴ほど迷う様に仕向けた意地悪設計なのでここまで来れている時点で戦力的にはゴブリン一匹以下の戦力ということなのだが…。
今なお聞こえる「誰か!いるんだろ⁈」の声はどう聞いても成人男性、ゴブリンの強さが大体成人男性に三匹でやっと勝てる程……。
つまり、扉の前の男性は強さゴブリン以下の最弱冒険者でもなければおかしいのだ。
しがみついているリースを抱き上げ、ローブを被る。リースを見えにくい様に抱え直しながら扉へと近寄った。
ちなみにリースを下ろさない理由は近くにいる方が守りやすいのと涙目で服を離してくれないから……。
この子は森の中で魔物などを見ると怯え、俺に抱きつく癖が付いてしまった。まぁ身に付けている衣服やローブに守護や反撃等の魔方陣を仕込んでいるのでこの子の護りは一年前とは比べることすら出来ない程に鉄壁である。
「お願いだ!いるんだろ!開けてくれ!」
「煩い。」
ガチャ、ゴン……。
別種の音が響き、薄汚い格好の男性が倒れる。まぁガンガン叩いていたから扉の前に立っているのは理解していた。だから開けたら当たるのも分かってた。だからこれは故意の行いで間違いは無いが……。
「…………?お父さん、……寝ちゃった?」
「寝てるな……。」
開けた扉に頭を打って気絶とか、いつの漫画だよと内心思う。
「このまま放置でもいいけど、どうしたい?」
俺的には所詮他人な上に煩い不法侵入者、いっそ森に捨てればクマさんや最近住み着いたベビードラゴン(コモドドラゴンみたいな魔物)等が美味しくペロリと食べてくれるだろう。
「……んっとね…………あの…ね、助けて…って……言ってたよ?」
つっかえながらも伝えてくる言葉はこの子の思い遣りだ。この子は助けてくれた俺に感化されているのか困っている人は見捨てられない様だ。
実際ギルドの依頼は果物を納品できる冒険者が居らず、困っていたパン屋の店員からの話で始めることになったのだがら……。
「そっか、分かった。じゃあソファーに寝かしとくか。」
寝ている(気絶)の男性に触れ、洗浄の魔法を掛けると襟首を掴み、ソファーに寝かす。
知らない人間の扱いなんてこんなもんだ。と思ったのだがリースにはお気に召さない様でプクーと頰を膨らませ「おとーさんひどい。」と言われた。
知らない人間の所為でリースに怒られた。こいつ、起きたら覚えてろよ……。




