元勇者と少女、今の暮らし
前話、仕事中だったので途中で投稿してしまいました。更新し直したので是非読んでください。
皮袋を片手に、もう片手でリースを抱き上げながら人混みを掻き分けて行く。
腕の中のリースはまだ涙目でちょっとむくれている。ただリースがあそこまで怒るとは思わなかった俺はお昼で何とかリースの機嫌を直したいので歩きながら小声で話しかける。
「リース、お昼どうしたい?」
「……お家で…………食べたい。」
人混みが苦手なリースは人がいればいるほど感情を出さない。なので嬉しい事等があると家まで我慢して家の中で目一杯喜ぶのだ。ちなみにここ最近で一番喜んだのはお出かけ用のローブを買い与えた時だ。一緒に居られるのが嬉しいらしい。
「よし、お家で食べるように何か「お父さんのご飯……がいい。」分かった。」
出店の料理より俺のご飯が良いか……。なんかもう、凄く嬉しい。
これが親バカ何だなぁと最近しみじみ思う。まぁ可愛いからしょうがない。
そのまま歩き、路地裏に入ると者絶の結界を張り転移の魔法を発動する。
本来なら転移魔法なんて高度な術は余程才能に溢れた奴しか使えない。だからこそ者絶の結界を張り、他人に見られないようにしているのだ。
前は徒歩だけど今はリースを抱き上げているので危険な事は最小限に済ませている。
転移したその先は魔毒の森改め妖精の森と名付けられた森。主が死んだ為に呪いが消え、誰でも入りやすくなったその森は勿論魔獣や魔物の強さは変わらないが低ランクの冒険者が手軽に入れるようになってしまった。中央の家が見つかるのも時間の問題だと思ったので中央付近に近付くと迷い、強制的に入り口に戻されるようにした結果、半年足らずで妖精の森になった。
その中央付近にそこそこ広い範囲を整地し、その中心に立つ素朴な木材の家、それが今の家だ。最初の家よりも機能性とデザイン性が上がり、森との調和がよりとれている。
これはリースが家を建てる際に言葉足らずながらこうして欲しいと主張し、センスがそんなに無い俺はそのまま指示通りに作った。
子供よりもセンスがない俺がダメなのか、はたまた幼いながらも良い家の間取りやデザイン性を知っているリースが凄いのか……。
まぁとにかく、我が家に帰って来た俺達は早速リースを下ろし、近くに出来た畑の様子を見る。
畑は様々な作物が育ち、ちょっと離れた位置には果実も生っている。
実際のところ、あの主が魔力を垂れ流しにしていたお陰で高品質なモモルやバナンの実等が生っていたようで、主を倒してから少しずつ品質は下がっていった。
主を倒してから三ヶ月ぐらいでモモルがあまり美味しくないってリースが教えてくれてやっと気が付いた俺は豊穣用の魔剣を作り、主を倒した時より魔力を込めて地面に刺した。
お陰で我が家を中心にまた高品質な果物や野草などが育っている。
畑の異変が無いことを確認し、家へと入る。リースと一緒に手を洗い、うがいをしてから冷蔵庫(作った。魔石で動く)から肉や野菜などを取り出して調理する。
横では台座に乗って一生懸命に野菜を洗っているリース。最近ちょっと伸びて来た髪を買ってあげた布切れで結び、髪が邪魔にならないようにしている。
これが平穏かぁ……。
あの世界では考えられなかった今の暮らしに満足しながらミルク粥を作り、リースが洗った葉物野菜は適度に違ってサラダにする。
それらをリビングのテーブルに置き、リースを専用の椅子に座らせ(座らせる時何故かむくれる)手を合わせる。
「頂きま「誰か!誰かいるんだろ⁈開けてくれ!」……。」
平穏は意外と短かった。
ちょっと説明
魔毒の森、入ると徐々に呪いを受け少しずつ皮膚が錆になる。魔王クラスのドラゴンの呪いなのである程度進行(およそ半刻程度)すると聖国のハイプリーストが一ヶ月掛けてやっと解ける呪い。
今現在特に異変も無く入れる。ただ中心に近寄ると五感や認識、果てには空間にまで作用している結界に阻まれ基本的には入り口に戻される。
現在妖精の森の理由
たまに銀髪美少女エルフが森の深くで見つかり、手を出そうとすると動き出した木々に捕まり放り投げられるから。
勿論、笠戸の力。保護者は敵には容赦しない。




