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第11話「最強商人と荒野の仕込み」


 灼熱のテッサに来て二日目。

 今日はアッガイ・アラバントを含めた商人連中で話合う事になった。

 流石にラライラとユーティスが可哀相だったので、二人には観光でしててもらう事になった。

 十分な小遣いを渡して、ハッグとヤラライに護衛についてもらった。

 一緒に回れないのは残念だが、早く戻らないと、やることがてんこ盛りだからな。

 なに、全てが終わったら改めてくればいい。


 なお、ファフは俺から美味い酒を奪っていくと、フラリと消えてしまった。

 正体がドラゴンのあいつをどうにか出来るヤツがいるとは思わないので心配はしてないが、どちらかというと、帰宅予定の明日までに戻ってこない方が怖い。


「それでは、今のヴェリエーロ商会代表はフリエナ婦人なのですね?」

「ええ、ですが跡取りも決まったことですし、商談はアキラさんとしてくれてかまいませんよ」

「それは助かりますね」

「チェリナさん。アキラさんを支えて上げるのですよ」

「はい」


 なんだか責任重要だな。いや。わかってはいたが。


「アキラさんたちは、まだ向こうの国でやることが多いとのことですから、正式な引継ぎは戻って来てからにしましょう。チェリナさんがいれば問題無いとは思いますが、ヴェリエーロ商会で覚える事は多いですからね」

「助かります」

「では、ヴェリエーロ商会とアラバント商会レイクレル支店との提携はこのまま結んでいただけると?」

「もちろんです。こちらからお願いしたいほどですから」

「それにしても、荒野の果てに、とんでもない女傑がいるとは聞いていましたが、予想以上でした。その美しさも手腕も」

「あら、さすが世界のアラバント商会ですね。お世辞もお上手ですわ」

「いえいえ」

「あらあら」


 微笑み会う二人だが、なんか怖えっての。

 ラライラがいたら、引き攣っていただろうね。まったく。


 その後、小麦の搬入の話や、これからの商品の事について細かく離していく。

 俺の提案で、今まで全て塩漬けにしていた魚を、鮮魚として輸出する事も決まった。


「それにしてもこの和紙(・・)というのは凄い。出来れば独占して全て輸入させていただきたい」

「すでにこの国で流通が始まっておりますので、独占というのは無理ですが、増産してその分を回しましょう」

「ありがたい!」


 取引サンプルの目玉である、和紙に真っ先に飛びついたアッガイだった。やはりこいつの目は確かだ。

 チェリナですら、その有用性に気付くのには少々の時間がかかったのだから。


 ちなみに、近日中にエルフの技術者がやって来ることが決まっている。

 物作り専門のエルフに、より紙に適した材料や、加工法を模索してもらうためだ。

 どちらかというと閉鎖的なエルフの全面協力を得られると言うことで、フリエナも手放しで大絶賛してくれた。


「それに、この新しい概念の空理具も素晴らしい! カード型ですか」

「はい」

「しかしこれはすぐに真似されるでしょうね」

「かもしれません」

「そうですね、利用料を払いますので、当商会の提携空理具職人に、これを作らせる許可をいただきたい」

「わかりましたわ」


 あれよあれよという間に、商談が決まっていく。

 もちろん、アラバント側も色々と売ることになるが、そのほとんどは食糧なので、難しい商談にはならなかったのだ。


「しかしせっかくキャッサバ芋の量産が確立し、トウモロコシの量産ももう少しというところで、安く輸入できるようになるとは思いませんでしたわ」

「フリエナさん、そうしたら、その二つはもう作らないのですか?」

「まさか。荒野の緑化という意味でも、自給自足という意味でも、さらに農地は拡大いたしますよ」

「それなら良かった」

「ただ、やはり小麦の消費はなかなか減りませんからね。レイクレルとの貿易は願ったり適ったりですよ。それに決めかねていたトウモロコシを家畜用に転用する案も実行できますしね」

「ああ、良いと思います」


 この荒野で育てたトウモロコシは、かなり実が少ない。日本でイメージするぷりぷりした黄金の実がみっちりと詰まっている訳では無く、虫歯だらけの欠けた歯並びのような、貧弱なトウモロコシしか出来ないのだ。

 それでも食品としては優秀なのだが、味や実の改良を続けねばならず、それならいっそ家畜用と割り切ってしまう方が良いかもしれない。

 アメリカでトウモロコシというと、人が食べる物というよりも、家畜の餌というイメージらしい。


「実はすでに、ニワトリの餌としての実験を始めているのですが、これが、とても良好なのですよ。魚の骨を干して砕いた物と、トウモロコシを食べさせると、丈夫で美味しい卵を産むだけで無く、発育も早く、丸々と太るのですよ」

「それは慧眼です」


 さすが魔女だぜ。抜かりが無い。

 その後の商談はアッガイと魔女に任せて、俺とチェリナは開発担当のダウロと面会した。


「いや、まさかお嬢さんが異国人と結婚とは……」

「あらダウロ、お祝いしてくれないのですか?」

「とんでもない! その幸せそうな顔を見れば、心よりお祝い申し上げますぜ!」

「ありがとう。それで話とは?」

「ええ。任されていた和紙と炭は順調なんですが、もう一つの開発が難航しておりまして……」

「もう一つ?」


 なんかあったっけ?


「これがサンプルですが……すいやせん、未完成でさ」


 ダウロが取り出したのは、皮製の水袋だった。何か特別な事が?


「アキラ様、ここをよく見てください」


 チェリナが差したのは、飲み口。キャップだった。


「……?」

「ああ、やっぱり気付いていなかったのですね。この世界の蓋は、ほとんどがコルクや皮を使うのです。この様に、回して締めるような物はありません」

「そうだったか?」


 言われてみると、ワインの蓋にしても、ほとんどは木製の栓だった気がする。


「最初は簡単だと思っていたのですが、ミリ単位以下の精度が要求されるだけで無く、材質の強度にまで左右されちまいまして……」

「わかりました。ですが、その問題は解決済みです」

「なんですって?」

「詳細は後で教えますが、エルフが作製に成功しています。今後、エルフたちから輸入する前提で、商品開発を進めてください」

「エルフの第二婦人がいるとは聞いてますが、いやはや。お嬢はとんでもない男を捕まえたようですね」

「今頃理解しましたか?」


 悪戯っぽく笑みを向けるチェリナに、ダウロは降参だと、両手をひょいと持ち上げた。


 大まかな商談が終わった後、俺は部屋では無く食堂へと足を運んだ。

 待っていたのは、ヴェリエーロの料理長フーゴだった。

 腕利きの料理人だ。


「アキラ様……失礼しました、若旦那様。お久しぶりです」

「若旦那は辞めてくれ。アキラでいいよ」

「しかし……」

「頼むよ」

「わかりましたアキラ様。それで、本日はアキラ様が料理を作るというお話ですが?」

「ああ。ストレス解消がてら、ちと、自重しないでやってみるかなと」

「自重? していたのですか?」

「え?」


 してたよな?


「いえ。なんでもありません。お手伝いいたします」

「助かるぜ。それで、今から俺の秘密の能力を教える。内緒で頼む」

「もちろんです」

「細かい理由は聞くな。俺はこの世界に流通していない品物を、取り出すことが出来るんだ」

「なんと……もしかしてショーユなどは」

「そういう事だ。ギフトみたいなもんだと思ってくれ」

「わかりました。このフーゴ墓まで持って行きます」

「助かる」


 実際には購入だとか、神さまの力だとかは一切省いたが、説明としてはこれで充分だろう。


「さて、やりますか」


 限定解除されたSHOPの力、見せてもらうかね。



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[一言] 二人には観光でしててもらう事になった。  →二人には観光でもしてて貰う事になった。
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