帰途
「ステラ~また来週ね~」
一人また一人と帰り道を同じくした女子生徒たちがそれぞれの自宅への帰途につく。
場所は人通りの多い商店街、近頃商店街というものは衰退の一歩を辿っているというが、ここはかなりの賑わいを見せている。
商店街を覆うアーケードには煌々と火が入り通りには暗闇が入り込む隙間がないほどに照らし出されている。
庶民的な店からそうでない店まで様々な店が軒を連ねており、全国的にショッピングセンターを拡散している個人経営泣かせの某グループ等とはまた違う需要を作りだしていた。
立地条件は駅の近くで交通の便も良く、生き残っている商店街の見本ともいえる賑わいを見せている。
そんな中、俺は人ごみに紛れ彼女の後ろから気づかれないように護衛している。
チャラい男からナンパされたので恐らく女の子として周囲に認知され溶け込めているだろう。
因みにナンパしてきた男は少々強引であったため簡単な催眠術であしらってやった。
一般人にあまりそういうことはするべきではないが、ナンパ野郎は俺の腕を引こうとしたため自己防衛の範囲に収まるだろうと思われる。
「にしても彼女、食べ物に引き寄せられ過ぎだろう」
聖女様はお友達と一緒に買い食いするのがお好きなようだ。
さっき別れた彼女の部活仲間の少女も体を動かす薙刀部に所属しているためか、晩御飯の前であろうというにも関わらず、3~400円程度串や饅頭を露店で買い込み美味そうに食べていた。
当然同じペースで買い食いしていたステラ。
にも関わらず聖女様は今度はいもかりんとうをご所望なようだ。
そういえば彼女自炊しているのだろうか?
この商店街は彼女の家から徒歩で5分程度の位置であるから食材を買うには適しているはずなのだが、肉やら野菜を買う気配がない。
彼女の行動いかんによっては俺も外出しなければならないな。
「まさか買い食いだけで夕食を済ませるつもりか?」
どうやら今度はみたらし団子らしい。
俺がナンパされたというトラブル以外問題も特になくマンションに到着。
彼女が部屋に帰り着いたのを階段脇からぜえぜえいいながら確認し、取り敢えずは護衛に一区切りついた。
「いやしかし、実に優れた拠点だな」
彼女の部屋は認識阻害の法術が掛かっており、ここを詳しく知る者や明確に招かれた者しか彼女の部屋を確固として認識できないようになっている。
霊力や魔力なども外に漏れ出していないし、外から見ただけでは俺でもここを看破することはできないだろう。
万が一、敵襲にあった場合も強固な多層結界が張り巡らされたここを抜くには、霊的にも物理的にも相当苦労する筈だ。
取り敢えず一安心といったところか。
俺はこれからそれなりの期間お世話になる彼女の部屋の隣、601号室に入室した。
マンションは12階建てで築3年程、俺に用意された部屋は一人暮らしにしては広すぎる3LDK、日当たりも当然良好だ。
そして真っピンクである。
何がピンクって全部がピンクに染まっていた。
壁紙もピンク、カーテンもピンク、家具もピンク、便座カバーもピンク、その他雑多な小物も全部ピンク。
「・・・・(絶句)」
趣味が悪いというかそういうものを完全に超越して、ただただ引くしかないというか…。
一先ず扉を閉め、スマホを取り出し、コール。
「あ、任務ご苦」
「巫山戯るなこのクソ役人!!!!」




