【5】内界編 第12話 お母さんと一緒。
ブクマ、評価、少しずつ集められていくこれが……元○玉?
…えと、すみません。
今回は主人公以外の視点からです。
四階層。とある隠し部屋。
巣食う魔物を倒しさえすればそこは一時的だけど安全地帯となる。宝箱の中は…
「種…何の?」
マスターは少しガッカリした様子。
「おお!なんかの種ダスなっ!」
対してノーフは大興奮。
「カルゥッ!かか【鑑定】するダス!はようっ!」
う。こんな小さな僕にそんな巨大な体で迫ってくるなよノーフ。はぁ…しょうがないので鑑定してやる。
「ほー!ふーん?へあーっ!?なななんとおっ!?」
説明してやった鑑定の内容を聞くたんびにノーフの鼻孔から放たれる暑苦しい鼻息。僕の前髪がマサマサと舞い上がる。ウザい。非常に。
「うーん。今日はここでキャンプだな。」
マスターがいかにもくたびれたという声で言った。ポコペキと外れた骨をスキルで【修復】しながら。新装備には慣れたみたいだな…外れはしても折れなくなってきたみたいだ。骨とか筋とか。
「フッフーっ。マスターとお泊まりだべ…♡」
「何浮かれてんダずヴァルキ。毎日毎日マスターの寝床に忍びこんどいて…この、色魔。」
「あん?」「ああん?」
まったく所構わずこの二人は…
「いい加減にしろっチ二人とも。マスターに嫌われてもいいっチか?」
激しい戦闘の後だというのになんと呑気な会話だろう。さすがに時と場所をえらべと言いたい。まあ、実際に言ったけども。
まあ気持ちは分かる。ヴァルキがこんな甘々になるのも、ドリューがこんな風にやたら牽制するのも、マスターがいる時だけだ。二人ともが浮かれてるのだ。いや、浮かれてるのは…僕も含めたみんな…か。
この四階層に出没する魔物は種類が豊富、そして強い。回廊型なのにマップも広い。五回層にはボスがいたからね。(もう倒したけど。)それを目前にした階層だからこうなっているんだろう。
だから今回のように物理攻撃、非物理攻撃の両面で人材が揃ったパーティでないと…今日みたく深く探索するのは難しい。ヴァルキが言うのももっともな話。めんどくさい階層だ。
今日こんな深部まで攻略出来たのも、この内蔵ダンジョンの最高戦力である僕ら眷族の大部分が集まっているからだ。
そして、今日みんなをこうして集められたのは、マスターがいるから。じゃなかったら、こんな簡単には集まらなかったろうな…。
いや、別に…普段の僕らの仲が悪いって訳じゃないぞ?
みんなそれぞれ自分の仕事で成果を出そうと一生懸命なんだ。マスターと『あの人』を喜ばせたいからなんだろうけど、そのせいでお互いにちょっとしたライバル意識が芽生えるのは、まあ、しょうがない事だった。
それに、このライバル意識というのは大体の場合、いい結果を生む。
だからいつも攻略に関してはヴァルキとファーマの仕事としてみんな踏み込まないようにしてきた。尊重して任せてたって感じだ。
「くぁあ…じゃぁ俺…寝るなー。」
食事を済ませたマスターは早々にテントの中へと引っ込んでいった。
ソワソワしだすヴァルキとドリュー。
他のみんなもだ。
ソワソワしだす。
待ちきれないヴァルキは魔力を乗せた風をマスターのテントに忍ばせた。
「マスター…は …… …………寝たべ。」
マスターの寝息を確認したようだ。
今から『会う』人は、マスターを心の底から気遣ってる。
せめて『家』の中にいる間だけは『ダンジョンという現実』を忘れさせてあげたいと。
その安寧だけは、絶対に崩してはならないとして。
そんな『彼女』は最近の僕の主な『情報源』にして、
……そうだ。『尊敬すべき人』だ。
「じゃぁ…始めるっチよ。」
僕は最近、新たな技に目覚めた。
それは、【交信】という能力。
僕はその場にいる仲間達に魔力を這わす。
するとヴァルキがその僕の魔力に、魔力風を混ぜてくる。
ヴァルキだけが使えるこの魔法は、本来、遠く離れた場所にいる誰かに『魔力の振動』を風に忍ばせ、声を届けるためにある風魔法。…なのだが、今回は違う。
こうすると『僕の中に届く声』を、みんなで共有する事が出来るのだ。
その『声』が僕に届くようになったきっかけは、
『僕らが生きるこの世界はそもそもとして何なのだろう』
と不思議に思った事。
そして世界そのものを【鑑定】してみたのだった。だけどその時に覗き見れたそれは…………ステータスなどではなかった。
「“お母さん”?聞こえるっチ?」
僕は【交信】を開始する。僕らのお母さんに呼びかけ、声を引き出し、その声を聞く。これは、ただそれだけの能力だ。
【あ……】
だけど、幸栄に思う。
この能力に目覚めた事を。
「マスター、寝たっチよ。」
【カル…ですか?ああ…今日も有難う】
「…うん。」
【あら…今日はみんなも一緒にいるのですか?】
「…うん 「母ちゃん元気にしてるべ?」 …一緒だっチ…」
【あ。ヴァルキ、あまりお弟子さんをイジメちゃ駄目ですよっ】
「フフ、ちゃんと加減ならしてるべ。」
【ホントですか?心配です…】
「えへへ…心配してくれるべ?」
【フフフ…感謝もしてますよ】
「あう…あは……えへへ…ワダシもだべ…母ちゃん」
「お母ちゃん変わりはないダずか?」
【ああドリュー。元気ですよ♪とても元気なんです…同族を倒したと云うのに…なんだか晴れ晴れとして…不思議ですね】
「アハ…さすがはマスターの相棒ダずな。アタイのお母ちゃんは女傑ダず。」
【泣いてばかりですよ】
「マスターは女泣かせダずからな…」
【う、いや、そういう意味では…】
「わかってるダず。わかってるダずから」
「母ちゃんいつこっちに来られるんダス?」
【ああノーフ…私も行きたいのはやまやまなのですが…】
「残念ダス…母ちゃんに食べさせたい野菜や果物、オデ、いっぱいいっぱい作って毎日待ってるダスのに。」
【人間が食べる食事…してみたいですね…ノーフのお野菜ならなおのこと…いつか叶うといいです…】
「叶う時にはもっと旨くなってるダス!もっともっとダス!」
【ホントこの子は…有難うノーフ…でも野菜以外にも目を向けなきゃいけませんよ?身近にいるちっちゃカワイイ女の子の事とか─】
「ん?母ちゃん?それはどういう──
「ままま、ママ!ママ?マージだよっ!元気??」
【プ。元気ですよマージ。マージも元気そうですね。そんな大きな声が出せるようになって。ふふ】
「ママが…変なコト…ぃぅから…」
【はー、まったく…なんてカワイイおちびさん…でもマージ。必ず報われる事から目を背けるなんて、駄目ですよ?】
「…報われる……必ず?…そんなこと…」
【おかしな事を。マージはいつもそうやってきたはずですが?魔法にしろ何にしろ、『好きな事』を一生懸命…そして必ず結果を出してきたじゃないですか。】
「…ぁ…ママ……ぅん…わたし…頑張る。わたし、頑張るょ。」
「かっちゃー!オラァダんずぅっ!スミスダんずぅ!聞こえるダんずかぁっ!?」
【うるさいもうスミスうるさい聞こえてますホントにもうっ!マスターが起きてしまいますっ!】
「あぅ…ショボーン…」
【またそうやってすぐ拗ねる…エミリちゃんに笑われますよ?】
「お…オラァ拗ねてねぇダんずっ!」
【はー…マスターの記憶の中には、こんな言葉がありました。『駄目な子ほどカワイイ』…分かる気がします。あなたに期待してるんですよ私も、マスターも。スミス。マスターを助けてあげて下さいね】
「…かっちゃ…オラァ…必ず…立派になるダんず…でも…今は少しだけボヤくダんずぅ…会いてえ会いてえダんずー…かっちゃにぃ…」
それから僕らはたくさんの話をした。
お母さんからは
マスターがどんな風に戦って、どれほどたくさんの痛みと、たくさんの苦しみと、たくさんの弱さを味わったか。
それをどんな風に乗り越えてきたのか。
乗り越えた先に見た景色は、思ったのと違うようだったけれど……その時はとても晴れ晴れとして…泣いてた事とか。
僕らからは
どんな仕事をして、どんな手応えがあって、住民のみんながどんな風に頑張ってくれているか…それら成果がどんな風に今後、お母さんやマスターの力になるのか…それを思うと楽しみでならない事。
そう、結局、みんな、マスターの話に終始した。
お母さんと話をすると、マスターの心に直に触れてるような気がするんだ。
するとなんだか物凄く胸が熱くなって、よし、やるぞーって…なって…なのに、しみじみと『マスターってホント、馬鹿だなー』ってなって。
そんな、楽しすぎて、感慨深い親子の会話は当たり前として弾む。でもどんな楽しい時間も終わりは来る。その最後は、ヴァルキが提供したこの話題で締め括られた。
それは、マスターの寝相についてだ。
「母ちゃん…マスターな。昨日、初めて、ぐっすり寝たべ。母ちゃん…マスター、うなされでながった。震えでながっだ…安心した顔で、寝てたべよ…昨日…初めて…」
声を、ほんの少し震わせて報告するヴァルキに、お母さんは
「 …ぁ………………… 」
それ以上、何も答えなかった。
ダンジョンに喉があるのか。
それは知らない、でも多分。
お母さんは、きっと、
答えられなかっただけ。
喉が詰まって、答えられなかっただけ。
───あ……」
どうやら、お母さんとの【交信】は、切れてしまった。
どうやら、僕の魔力が切れたようだった。身体がダルい。
なんだか、中途半端に会話が切れてしまったし…。
だけど…、みんなと、お母さんと話が出来て、今日は良かった。そう思う。
「……決心が…固まったっチ」
今日の僕には決心が必要だった。
だからお母さんと話したかった。
何故なら、僕らは、いや、オレ達は、明日初めて、
『袂別』というものを経験する事になるかも…しれないからだ。
ゴンが寝てる間に…こんな企てが…。
という回でした。違うかっ。
続き気になる方はブクマしてると便利ですよー♪
あと…感想なども…(チラッ)




