初めての登校日……再び
*僕がこの世界に来てから二年……今日は、初めての登校日だ。*
僕はため息をついた。
「二年も勉強から離れていたのに、また勉強するなんて、正直あまり気が進まないな……」
それでも、やらなければならなかった。今の僕にとって、これが人生なのだから。
着替えながら、昨日の紹介の場に何人か姿を見せなかったことを思い出した。
「来なかっただけなのかな。たぶん……」
そもそも、さまざまな小説の主人公や物語にとって重要な人物たちが、同じ年齢、出身、境遇であるはずもなかった。
考え事を切り上げ、改めて自分の身なりを整えた。
自分で着替えをするのは、実は今回がまだ数えるほどしかない。
最初の頃は着替えさせられるたびに違和感があったが、時間が経つにつれて慣れてしまった。
「制服は……これでちゃんと着られているかな」
僕は鞄を手に取り、指定された教室へ向かった。
授業には必修のものもあれば、出席しなくてもいいものもある。
勉強したいという気持ちはそれほど強くなかったが、この世界について学ぶため、できる限り多くの授業に出ようと考えていた。
理由は分からないが、この世界の根幹には小さな変化が生じている。
その一つが、魔法の逸脱だ。
これは本当に興味をそそられる研究分野だった。ぜひ学んでみたい。
「早く着きすぎたかな? 教室が完全に空っぽだ」
僕は前列の近くに座り、筆記用具などを机の上に整えた。
数分が経つと、教室には次々とクラスメイトが集まってきた。
大半はすでに顔見知りらしかった。昨日の紹介の場に来ていなかった生徒たちも、今日は自己紹介をしていた。
その中には、僕の家族と面識のある人たちもいた。ただし、僕自身は彼らを知らない。
だから、僕は隅の席で黙ったまま過ごした。
*どうやら、前世の僕と何も変わっていないらしい……*
机を叩く乾いた音が響き、僕は顔を上げた。
「はい、みんな。静かに」
立っていた数人の生徒が席に着いた。
「知っていると思うが、ここはAクラスだ。だから、魔法の基礎は省略する。ただし、基礎を学びたい者がいるなら、個別授業を頼んでもらって構わない」
先生は教室をざっと見渡した。
「さて、私はダンテラウ・フォン・フンボルト。ダンテと呼んでくれて構わない。これからよろしく頼む」
「ダンテ先生、それで、僕たちは何を学ぶんですか?」と、一人の生徒が尋ねた。
「いい質問だ。ひとまず、魔法について質疑応答をしよう。私の知識が及ぶ範囲で、みんなの質問に答える。途中で役割を逆にするつもりだ。まず質問したい者は手を挙げてくれ」
最初に手を挙げたのはセレスティーヌだった。
「先生、魔法は種族によって相性が変わることがあるんですか?」
先生は顎をかいた。
「今のところ、答えるのが難しい質問だ。特に、魔法の逸脱が現れたのはごく最近だからな。しかし、私の知る限りでは、答えは否だ。魔法はどの種族にとっても同じで、特定の魔法と相性のいい種族が存在するわけではない。ただし、特定の魔法との相性がいい人間はいる。そうした人々から、魔法の逸脱が生まれるんだ。とはいえ、その話には踏み込まないでおこう。私の専門分野ではないからな。そのことなら、レンニア先生に聞くといい」
その後も、いくつかのありふれた質問や、特に重要ではない質問が続いた。中には、先生の私生活について尋ねるものまであった。
やがて、エヴェリスが手を挙げた。
「ダンテ先生、存在する適性の中で、最も優れているのはどれだと思いますか?」
先生は再び顎をかいた。
「どれも一番ではないし、優れているわけでもない。好きなように呼べばいいが、どの適性にもそれぞれの強みがある。例えば、君は魔法戦士の適性を持っているんだったな? では、遠距離戦を得意とするセレスティーヌと戦う場面を想像してみよう。彼女が君から十分な距離を取れば、おそらく君は負ける。しかし、近距離戦なら彼女のほうが不利になるだろう。すべては置かれた状況次第だ。
「役に立つかもしれない助言を一つしておこう。戦闘中、双方の実力が同程度なら、先に攻撃を仕掛けるのが有効なことが多い。特に一対一の戦いではな。自分のほうが劣っていると感じた場合、実際にはそうでなかったとしても、あるいは相手に圧倒されている場合でも、逃げるんだ。命を失うくらいなら、面目を失うほうがましだ。臆病者であることは悪いことではない」
授業は大きな問題もなく進んだ。
ダンテ先生は、自分の知識の範囲内にある質問には一通り答えてくれた。それ以上のことはなかった。
「よし。今回は時間が足りなくて、私からみんなに質問することはできなかった。次回はそうするつもりだ」
僕が荷物を片づけていると、周囲から小声で話す声が聞こえてきた。
「分からないな。家名に泥を塗るくらいなら、命を落とすほうがましだ」
「じゃあ、自分が最後の一人だったら?」
「えっと……分からない」
「馬鹿だな」
僕は考え事をしながら食堂へ向かった。
先生の話は興味深かった。具体的な内容を教えるというより、生徒たちの疑問に答える授業だったが、役に立つし、面白いと思った。
ほかの授業もこんな感じなら、出席するのはそれほど苦にならないだろう。
*どこに座ればいいんだろう……?*
食堂の席はほとんど埋まっていた。空いている席もあったが、別のクラスの生徒たちが使っている場所だった。
僕は食事の載ったトレーを受け取った。
「教室で食べたほうがよさそうだな」
*クラスメイトの何人かとは話してみるべきだろう。この三年間、いや、それ以上の時間を、ずっと一人で過ごしたくはない。*
誰かと肩がぶつかり、トレーの上のものが落ちそうになった。
幸い、とっさに反応して、なんとか立て直すことができた。
僕は安堵のため息をついた。
「ごめん! よそ見してた」
相手はリアム・ヴァルスタインだった。
「気にしないで。僕も考え事をしていたから」
「ところで、そのトレーを持ってどこへ行くんだ?」
「教室だよ。知り合いがいないし、テーブルもほとんど埋まっているから」
「なら、俺たちと一緒に食堂で食べようぜ」
*俺たち?*
僕は彼の隣を見た。
そこには、いかにも不機嫌そうな顔をしたソフレン・ガルガーがいた。
返事をする暇もなく、リアムに手首をつかまれ、僕はほとんど引きずられるようにして食堂へ連れていかれた。
*どうして……こんなことになったんだ?*
そこにいたのは、最も重要で才能のある人物たちだった。
リアム、エヴェリス、ソフレン、セレスティーヌ……そして僕。
さらに、昨日は来ていなかった生徒が一人いた。
アメリス・ド・ヴァルクロワ。
『エルフになるのも、案外悪くない』という作品に登場するエルフだ。
あの馬鹿なエルフの物語に出てくる人物である。
正直、彼女に従順さ以外の性格があったかどうか、よく覚えていない。
物語の中で、彼女はほとんど成長しなかった。
基本的には、主人公のハーレム要員という役割を果たしていただけだ。
彼女について、僕はあまり情報を持っていない。
「ハロルド、サンサーラの一員を殺したって本当か?」
リアムがほとんど叫ぶように言った。
テーブルにいた全員が、さらには別のテーブルに座っていた生徒たちまで、黙ってこちらを振り向いた。
大半の視線が僕に集まり、ひどく緊張してしまった。
「ち、違う! 僕はただ……最後の一撃を加えただけだよ。ほとんどヴェロニカがやったんだ」
「それでも、お前が殺したことに変わりはないだろ? つまり、適性も中級魔法も持っていないお前があいつらの一人を倒せたってことは、あいつらは脅威じゃないってことだ! 俺一人でも全員倒せるんじゃないか!?」
その場にいた人々は笑い始めた。
僕は笑いものにされていた。
*やっぱり、教室で食べればよかった……*
ソフレンも義務感からなのか、ほとんど無理やり笑っていた。
二人の王女は黙ったままだった。
そして、僕は気まずさを押し殺しながら、彼らに合わせて笑うしかなかった。
テーブルを叩く乾いた音が響き、その場にいた全員が静かになった。
アメリスだった。
「あなたって、本当に馬鹿ね」
彼女はリアムを指さして言った。
「それに、あなたは臆病者……」
今度は僕を指さした。
「二人とも、食事をまずくしているわ」
そう言い残し、彼女は立ち去った。
エヴェリスとセレスティーヌも、アメリスの後を追った。
テーブルの周囲は数秒間静まり返ったが、すぐにささやき声が広がり、再びざわめき始めた。
僕はその隙に、そこから離れた。
教室に戻ると、机に突っ伏した。
僕はふっと息を吐いた。
「早く家に帰りたい……」
しばらくの間、僕はそんなことを考えながら嘆いていた。
「さて、みなさん。私はレンニア・イェズヴキ。魔法の逸脱を専門とする教師です。今日は『魔法の逸脱理論』について説明します。
「ここにいる大半の生徒は、魔法の逸脱を持っていないかもしれません。しかし、だからといって、将来も持てないとは限りません。ですから、少なくとも理論と基礎くらいは知っておくべきでしょう。ここまでで、何か質問はありますか?」
教室は完全な静寂に包まれていた。
「まあ、どのみち質問に答えるつもりはありませんでしたけどね。今のは単なる社交辞令です。
「さて、ほとんどの人が知っていると思いますが、魔法の逸脱が現れたのは、およそ二年前のことです。そのため、当初はどのような仕組みで働くのか、ほとんど分かっていませんでした。時間が経つにつれ、魔法の逸脱は魔法を使う者の相性に応じて機能することが分かってきたのです」
先生の手から、炎の矢が放たれた。
「ご存じのとおり、知識、制御技術、魔法のレベルが一定の域に達すると、魔法の詠唱を省略できるようになります。それでも、すべてを身につけた私でさえ、この炎の矢の大きさを調整するのは簡単ではありません。大きくするには、込めるマナの量を増やさなければならないからです。
「さらに、どれほど魔力を使っても、この矢を槍に変えることはできません。ここまで、ついてこられていますか?」
先生は炎の矢を消した。
「では、なぜ一度放った魔法の形を変えられないのだと思いますか? そこの眼鏡をかけたあなた。ラドルフ」
ラドルフは慌てて立ち上がり、緊張した様子で答えた。
「ど、どうしてかというと……すでにマナに形が与えられているから、でしょうか?」
レンニア先生は彼に拍手を送った。
ラドルフは笑顔になった。
「違います。次」
先生はその後も、適当に生徒を指名していった。
「では、エヴェリス。あなたはどうしてだと思いますか? あなたは魔法の逸脱を持つ使い手でしょう」
エヴェリスは席から立ち上がった。
「私のマナが足りないから、でしょうか?」
先生は微笑み、二度手を叩いた。
「よろしい。王女様はちゃんと予習をしてきたようですね。そう、そのとおりです。ただし、それは理由の一部にすぎません。
「実際には、一度放った魔法の形を変えようとすると、まず大量のマナを消費します。そして二つ目に、魔法が不安定になり、最終的に爆発する危険性が生じるのです。
「しかし、魔法の逸脱は別です。逸脱した魔法なら、自分の逸脱魔法をほぼ完全に自由に操れるだけでなく、消費するマナも少なくて済みます。そのため、逸脱魔法の範囲内であれば、魔法の形を変えることも容易になります。
「魔法との相性を逸脱させる段階に達すれば、これまで不可能だと考えられていた魔法さえ生み出せるようになります。
「分かりやすい例が、セレスティーヌの根の魔法です。彼女は水と土の魔法との相性が高いため、これまで確認されたことのない第三の魔法、つまり根の魔法を生み出すことができました。
「あるいは、彼女の三学年上の先輩であるレオン・フォーバルトもそうですね。彼は土の魔法との相性が高く、それを利用してゴーレムを生み出せます。
「ただし、大きな問題が一つあります。魔法の逸脱に適性を持つのは、比較的新しい世代に限られているのです。二十歳を超えて魔法の逸脱を持つ人間は、両手の指で数えられるほどしかいません。
「つまり、あなたたちは次世代の魔法使いになれるかもしれない、ということです」
授業の残り時間は、生徒たちが抱いていた疑問に答えることに費やされた。
「では、課題です。次の授業までに、魔法の逸脱をどのように発現させられるのか、考えてきてください」




