Episode9 - 狼煙を上げろ
次の日、5日目早朝。
会議の内容、そして決められた作戦によって、私達は1日準備に費やして……今。
普段ならばこの時間には眠っているプレイヤーも全員戦闘準備を整え、砂浜へと集合していた。
「よーし皆、準備は出来たかな?ここからは長い戦いになるよ」
ロートが何人かのプレイヤーと共に前に出る。
私やフレデリカ、フータはすぐにでも戦闘が出来る様にと各種ウィンドウを表示させながらもその声を聞いていた。
「これから、私達はこの森の中心部に向かって攻略を開始する。流石に人形達やそれを操るボスを放っておくのは難しくなってきたからだね」
一息。
「部隊分けは事前に話した通り4つ。先に進み敵の数の報告や道を切り拓く斥候部隊」
スオウが前に出る。
彼の周囲にはヒルマを含む、ニンジャ系のプレイヤー達が集まっていた。
「次に、ヘイトを集めつつ個人個人でも戦う事が出来る戦闘部隊」
こちらはケントが。
主に拠点の防衛や、これまでの森の探索にて活躍してきた面々が多く属している部隊だ。
「その次が、後衛兼支援部隊。バフやデバフ、広域での殲滅を得意とする子達だね」
ここでは誰も出なかった。
恐らくは今こうして話しているロートがそれの代表なのだろう。
「最後に、物資の運搬や非戦闘員の部隊。森の中に臨時の拠点なんかを作ってもらうのが主な役割で、出来そうだったら足りなくなった物資の作製もしてもらう」
前に出たのは……知らない女性プレイヤーだ。
何処から調達したのか、鬼女の面を被り顔を隠している為に表情を伺えなかった。
だが、魂は大きい。
ロートは非戦闘員と言ったが……魂だけを見るならば、ケントやスオウにも引けを取らない大きさだ。
「これら4つの部隊で森を進む。昼までに中心部近くまで到達、そこに臨時拠点を建設して一時休憩。その後中央へと攻め入るよ。ここまでは前日説明した通り。何か質問は?」
静寂。
「うん、無いみたいだね?それじゃあ――出撃ッ!調子乗った草共に生態系の頂点の意地見せてやるぞッ!!」
「「「うぉおおおおおお!!!」」」
「うわぁ」
ロートの掛け声と共に、プレイヤー達が森の中へと駆けこんでいく。
しかしながら、それは統率の取れていない動きではない。斥候部隊に属するプレイヤー達がしっかりと先行し、駆けていく中で戦闘部隊の面々が木々を切り倒しながら道を作る。
出来上がったその獣道以下のソレを、非戦闘員のプレイヤー達が舗装、道として使えるようにして……後衛兼支援部隊が周囲を警戒しながら行軍していく形になっていた。
しっかりとそれぞれの役割を全うした上での行軍。
勿論、指示に従わないプレイヤーは少なからず居る。掲示板を見ていなかったり、そもそも群れる事を嫌うプレイヤーや、イベントなのだからと自由に動きたがるプレイヤー達の事だ。
だが、彼らを変に縛る事はしない。
……変に縛って反抗されるより……彼らが向かう方向を定めてやればいい。
人というのは大きな流れがあるとそれに流される習性を持っている。
それに立ち向かおうとするのはごく一部であり、それ以外は基本的には流し流され……結果として、大多数が流れる方向へと辿り着くモノだ。
今回で言うならば、ロートが中心部への攻略を行うという宣言をした事で方向を。大人数による出撃をした事で流れを作った形だ。
これに倣って共に進むならばそれで良し。共に来なくとも、私達と別に動く事で……敵モンスターがそれだけ分散するのでそれはそれで良しとなる。
「ま、PKしに来てくれた方が私的にはありがたいんだけどねー」
「……いやまぁ、イヴ姉ちゃん的にはそうなのかもしれないけど。それよりも」
「そうですそうです。それよりも」
「「なんでここに?」」
ハモった。
フレデリカとフータが居るのは後衛兼支援部隊。前線ではなく、今回の作戦で言えば一番後方に位置される部隊だ。
どちらも広域、または遠距離からの攻撃を可能とする為にこちらに配属された訳だが……なんと私もこの部隊に居た。
答えは簡単。
「護衛だよ護衛。ほら、他にも何人かいるでしょ?」
そう、護衛役だ。どうしても後衛や支援系だけで固めていると万が一弾幕を抜けてこられた時の対処法に乏しく、1体のすり抜けが部隊の壊滅に繋がる恐れもある。
故に、個人戦闘型のプレイヤー何人かが護衛に付く事になっているのだ。
その中の1人私も居た。……というか、恐らくはロートが私とフレデリカ、フータの相性を見た上で配置したのだろう。
私としては食欲を燻ぶらせながら、前線から離れた位置でのんびりとする事が出来る為に中々丁度良い位置であるとも言えるだろう。
……どうせ、臨時拠点の建設が終わるまではちゃんとした戦場とか出来っこないしね。
幾ら数が増えようが、今や食虫植物系のモンスター達は私達プレイヤーの相手にならない。
唯一気を付けるべきは、モンスターのスポーン能力を持つトレントだろうが……それについても、モンスターアバターのプレイヤー達が持つ特有の感知能力によって看破され、不意打ちどころかスポーンすらさせずに倒している始末だった。





