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第24話 現実世界の朝、世界は反転する。

自作のラノベを生成AIを用いてコミック化するチャレンジをしています。


※コミックと原作で、一部地名や固有名詞が異なっています

「ニューワールド」(原作版)→「ユークライン」(コミック版)など

 ニューワールドからログアウトしたのは、深夜2時。

 私は、自室のデスクに置いているパソコンとVR機器の電源を切り、消灯してベッドに潜る。

 明日の起床時間は、いやもう日が回っているので今日の起床予定になるが、7:30である。

 ここ数か月はずっと、平日は5時ごろに学校に帰宅してからすぐニューワールドの世界にログインするのが日課になっており、土日など予定がない日は一日中ログインをしてニューワールドの世界に没入しているくらいである。

 インドア派とはいえ、年頃の17歳でここまで引き籠っている女子高生は珍しいだろう。

 だが、外からどう見えているかは分からないが、私としては引き籠っているつもりはなく、毎日、未知のファンタジー世界を冒険しているのだ。


 ……朝7:30のアラームで目が覚めた私は、寝ぼけ顔で1Fのリビングに降りていく。


「レイナおはよう」

「お母さん、おはよ」

「ちょっと、目にクマができてるわよ。

 ちゃんと寝てる?」

「うん、ちょっと勉強してて」

「そう、無理しないでね」


 母が心配そうに声をかけてくれるが、ゲームで寝不足なんて言えない……。

 父はテーブルでトーストをかじりながら、日経新聞を読んでいる。

 弟のケンタは、バスケ部の朝練で既に家を出たようだ。

 テレビからニュースが流れる。


「政府は、VRMMORPGニューワールド内の通貨、Gゴールドの価値が急激に高まっていることを受けて、現実通貨である円との固定相場制を導入することを発表しました」


 まさか。

 たかがVRゲームの世界にわざわざ日本政府が介入するなんて……。

 ニュース番組のどこかの大学教授らしいコメンテーターが話している。


「政府がここまでの対応をとるのは異例ですね。

 おそらく、政府のシンクタンクがこのニューゲームのプレイヤー数の伸び、リアルマネーとゲーム通貨の取引量、取引相場の変遷などのパラメータを試算した結果、危険な兆候が予想されたのでしょう。

 固定相場制を導入したのは、その兆候を未然に防ぐために先手を打ったと考えられます」


 ニュース番組のアナウンサーが質問する。


「レートは1P=360Gですが、これは妥当な相場なのでしょうか?」

「ええ、そうですね。

 1Pは1円と同価値なのですが、数か月前までは1P=5000Gほどが相場だったようです。

 それが、最近では1P=500Gや、1P=300Gなんて取引事例も出てきている。

 つまり、ゲーム内通貨の価値が、円と比較して跳ね上がっているのです。

 もしこれから更にゲーム通貨の価値が上がることになれば、実体経済が不安定になりかねない。

 この段階で政府が1P=360Gの固定相場を決めたのは、英断といえるでしょう」


 淡々と説明する教授に対して、アナウンサーはどこか納得いかないような顔をしている。

 

「なるほど。

 しかし、ゲームをしない私としては、わざわざ政府が介入する必要があるのか、どうもしっくりしません。

 私たちが考えているよりも、事態は深刻ということでしょうか?」

「ニューワールドの世界を、単純にただのゲームを決めつけるのは早計でしょう。

 いまやVRの技術はこの現実世界と同等なくらいリアルな世界になっています。

 さらに、VRMMOでは現実世界では見ることのできないような壮大な景色が広がっていて、遠く離れても瞬時に友人とコミュニケーションもとることができる。

 これは、視覚、聴覚が現実世界と比較して増強され、快の感情を得やすくなっているということです。

 反対に、肉体的な痛みや、不平等から生じる人間関係の精神的な苦痛も少なく、不快の感情が軽減されている」

「……」

「人間は、必ずストレスの少ない環境に移動していきます。

 例えば川の水が、重力に従って山から海に流れていくように。

 人々がニューゲームの世界に拠点を置いていくのは、時間の問題でしょう」

「……。

 分かりました。もしかしたら私たちは、大きな時代の転換期にいるのかもしれません。

 山里教授、どうもありがとうございました。

 続いてのニュースです……」


 ニューワールドに没頭している間に、現実世界ではなにやら大事になっているようだ。

 ふむ。1P=360Gの固定相場制か。

 モンスターを狩って、1時間に360,000G稼げば、時給1,000円だな。

 今の私の強さなら、十分に可能だ。

 ゲームで遊びながら金を稼ぐことができるのなら、みんなこぞってプレイしそうである。

 ニュースを見ながらスクランブルエッグを食べていると、寡黙な父が口を開く。


「お前、このニューワールドっての、やってるんじゃないだろうな?」

「……いや、やってないよ」

「そうか。

 うちの会社の派遣社員も最近退職が増えててな。

 理由を聞くと、このニューワールドで金を稼ぐっていってるんだ」

「へえ……」

「バカバカしい。

 お金というものはな、しっかりと会社で上司や先輩の言うことを聞いて、汗水たらして働いて稼ぐものなんだ。

 お父さんたちは、みんなそうやって働いてきたんだ」

「……そうだね」


 別に私の父だから擁護するつもりはないが、人はみんな自分が生きてきた道を肯定しようとする。

 そして、変化を恐れ、否定する。

 でも私は疑問に思う、どうして父の会社の正社員ではなく、派遣社員が会社を辞めたのか。それは簡単なことで、現実世界が不平等だからである。

 恵まれない人が、これから恵まれそうな環境に移動して幸せな将来を夢見ることは、なんら否定するべきものではないはずだ。

 だって、最初から会社の中で身分が決まっているのなら、いくら頑張っても無駄であるし、恵まれた人間が今の地位を持続するために退職する人間を叩くのは、正論ではなくただの保身だ。


 朝ご飯を食べ終えた私は、顔を洗い、制服に着替え、家をでる。

 電車に揺られて、いつものように高校に着く。

 

 クラスでは、多くの人がニューワールドの話をしていた。


「私も始めてみよっかな~」

「お前、まだやってなかったのかよ!

 オレもうレベル8まで育てたぜ」

「うそっ、みんなやってるの!?」


 ガラッ。

 教室のドアが開き、担任の先生が入ってくる。


「しずかにしなさ~い!」

「はい、出席とるわよ」


 ……。


「……あら、河合くんも、今日休み?

 もう、家庭訪問した方がいいかしら」


 そういえば、最近チラホラ高校に登校していない子が増えてきた。

 ……もしかして、一日中ニューワールドをプレイしているのだろうか、杞憂であってほしいが。

 でも、高校は義務教育ではないのだから、本人が行きたくないならわざわざ行かなくても良いと思う。だって、ニューワールドの世界の方が楽しいに決まっているし、お金だって稼げるのだから。


 まあそれでも、1P=360Gと固定相場が導入されてしまったから、今後極端に稼げるというほどでもないだろう。バイトをするよりも稼げるかな、程度だ。

 もしもっとGの価値が上がっていったら、会社に就職して働くよりも、ニューワールドで稼ぐ方が効率が良くなってしまう。

 そう考えると、政府はギリギリの、絶妙なタイミングで固定相場制を導入したようだ。


 退屈な高校の授業が終わった私は、一目散に家に帰宅しようとする。

 下駄箱からローファーを取り出し、内履きから履き替えると、私のローファーがびっしょりと濡れていた。

 慌ててぬぐと、なんだかアンモニア臭がしてくる。


 おえっ。


 またか……。

 私がクラスの男子から抜群にモテるものだから、その男子のことが好きな女子から執拗な嫌がらせを受けるのだ。

 でも、その女の子がこれで気が済むなら別に良い。

 私は好きでこの恵まれたルックスで生まれたわけではないが、その女の子も好きでブスに生まれたわけではない。

 これで身体的特徴の格差が少しでも縮まるのなら、甘んじて受け入れよう。


 でも、最近、生きていて少々楽しくなった気がする。

 それは、ニューワールドを始めたおかげだ。


 もっと、この新世界で生きていきたい。

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