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第19話 きっと今まで自分よりも格上の詐欺師に出会わなかったんだね

自作のラノベを生成AIを用いてコミック化するチャレンジをしています。


※コミックと原作で、一部地名や固有名詞が異なっています

「ニューワールド」(原作版)→「ユークライン」(コミック版)など

 詐欺師のヒーラーにレナのIDとPWを教えてから、小1時間ほど経っただろうか。

 私はまだ、レナのPWを上書きせずに、この私を騙した憎きヒーラーを野放しにしていた。

 今頃ヤツは、良いカモだったとばかりに、悠々とレナを操作しているかもしれない。


 そしてそれからさらに3時間後……。


 そろそろ始動するかな。

 私は、インターネットブラウザのパスワード変更画面に戻り、「本当に変更してもよいですか?」で止まっている画面の「はい」ボタンをクリックした。


 『パスワードが変更されました。』


 よし、これでパスワードはあらかじめ設定しておいたPW、tounyupurinに変更された。

 レナっちからログアウトし、メニュー画面から新しいPWを用いてレナにログインしてみる。

 ふふ、思った通り……いや、予想以上だな。


 まず、私の手元に再び戻ったレナは、盗賊に転職が完了しており、レベルは20まで育てられていた。

 場所はクロールタウンだ。

 おそらく、あのあとヤツはすぐにクロールタウンの森の神殿に行き、老人に転職したいと話しかけたのだろう。

 あの老人も、急に気持ちが変わったのかと驚いたに違いない。中身が変わっているとは思ってもいないだろう。

 そして、ヤツはすぐに盗賊への転職に必要な石を5個集めきった。

 普通は、こんなにも早く石を集め終わるのは至難の業であるが、それができた理由はこれだ。


 レナの装備は、頭から足まですべて特殊強化装備に変更されていたのだ。


 特殊強化装備とは、高額で取引されている強化の書を施した武器や防具、アクセサリーのことである。強化の書は同じ装備に複数回使用することができ、初級装備であっても、超上級装備以上の能力値まで強化することができる。

 レナが装備しているダブルナイフや黒頭巾、ブラックシューズ、蛇のピアスなどは、もともとの能力値こそそこまで高い装備ではないが、すべて強化の書を10回以上使用されており、例えばダブルナイフは超上級職装備のクリティカルナイフ以上の攻撃力を誇っていた。

 その他の装備も全て、超上級職レベルの能力値だ。


 いやまあ、良くもここまで……。

 うまいこと私を騙したことで気が大きくなって、喜んで強化装備を移動している場面が目に浮かぶ。

 強化の書は、ランカー御用達のレアアイテムで、一つ1,000,000Gほどで取引されている。それが、それぞれの装備を合わせて計50個以上が使用されているから、金額換算で50,000,000G以上もの大金を注いだ装備ということになる。


 おそらく、私の予想した通り、ヤツはヒーラー以外にもっと強い本キャラを持っていたのだろう。

 あの中級職のヒーラーレベルのキャラでは、ここまでの大金を注ぐことは不可能なはずだ。

 キャラを渡した後に装備をより良いものに変更するだろうから、他に本キャラがいると分かっていても、あえて問い詰めずに騙されたふりをしたが、まさかここまでとはな……。

 そんな金持ちのくせに、弱者を騙した天罰だ。


 私は、ヤツがヒーラーを使っていることや、何んとなしの言葉遣いに違和感を覚えて、もしかしたら相手も詐欺師ではないかと感じたが、普通の人ならまず気づかないであろう。

 そもそも、すべての人は、まさか自分が騙されるなんて思ってもいないのである。

 より良い条件を提示されたら、それは相手が騙してこようと思ってそう言っているのではなく、自分が恵まれた特別な存在だからそのような条件を提示してくれているのだ、と酷く楽観的な考えを持つのが人間の浅はかなところだ。

 他の人が誰かに騙されていたら、「あなたは騙されているよ」と客観的に忠告ができるのに、いざ自分のことになるとそれができない。

 いや、もしかしたら、騙されていると分かっていることもあるが、もはや失ったものが大きいから、後に戻れなくなっているのだ。


 しかし、詐欺師をやってみれば、相手が詐欺師であるかは判別できるようになってくる。何事も、自分がその立場になれば、敵の考えていることが分かるものだ。

 例えば、主要諸国のスパイ組織でも、強固なセキュリティを突破した一流のハッカーの技術を見込んで雇用することがある。ハッキングを防ぐために、自分の組織にその道の一流ハッカーを味方につけるということだ。


 それに、本当のスパイ技術、詐欺技術というものは、決して机の上で学べるものではない。

 実際の現場を通して、技術が研ぎ澄まされていくのだ。

 そうすれば、私のようにあたかも詐欺に引っかかったように見せかけ、更に相手をどん底の深みにはめるという技も可能になる。

 今回のヒーラーは、おそらく自分よりも上手の詐欺師に出会ったことがなかったのだろう。

 だから、悠々と何も疑わず、自分の力を過信して、すぐにアイテムを移動してしまった。

 まだまだ詐欺師としては半人前だ。



 こうしてレベル20の中級職、盗賊になったレナだが、そのステータスは特殊強化装備により、体力、攻撃力、防御力、素早さなどすべてレベル80から転職できる超上級職レベル以上だ。

 現状のニューワールドのランカーでも、1位のプレイヤーのレベルは110、100位はレべル90ほどであるから、今のレナは既にランカーに匹敵するほどの強さを誇っていることになる。

 まだニューワルドを始めて間もないのに、異例の速さだろう。


 ここまでの結果は、流石に予想外だった。

 これからも、何度かこの売買を繰り返してお金を貯め、強いキャラを購入しようと考えていたが、ここまでレナが強くなったらもう十分だな。

 これからも、この強化版レナを使っていくことにしよう。


 そういえば、キャメルやカナデたちの様子はどうだろうか。

 キャメルは深淵の泉、カナデは無風の岩場だったな……。

 まだ連絡がないことを考えると、苦労していそうだ。 

 深淵の泉に行ってみるか。


 きっと、このレナの強さを見るとびっくりするだろうな。

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