長崎県5.
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ようこそ!
『スポットライト・オン・ゾンビ!!!!』へ!
慌ただしい毎日の、ちょっとした一時にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
僅かな時間ですが、ごゆるりとお楽しみください。
あの公園からどれくらいの時間をかけ、どれくらいの距離を歩いたからは全く覚えていない。
とにかく市街地を通り、橋を渡って山道に入り込み、そして俺は先程よりも自然深い公園の展望台前の、茂みの傍で横倒しになっている。
『……なお、東北地方、関東甲信越地方、中部地方の各地では50パーセントのアンデッドの死滅を確認。中国・四国地方、九州地方は45パーセントの死滅を確認と報告されています。特別作戦中の近隣にお住まいの方は家から出ないように御協力をお願いします』
相棒の方は相変わらず、俺を独りにしないように気遣って声を届けてくれているようだ。
あの平和記念像のある公園から本能の赴くまま……
っと言っては格好が良く聞こえるが、ただただ勝手に動く足に意識が連れていかれ、早々に古参ゾンビに追い抜かれて先頭ゾンビ譲った。
その後からぞろぞろとやって来るノマゾン(ノーマルゾンビ)にも抜かれ、群れの中をひたすら歩き続けてここまでたどり着いて、
そして、力尽きてしまったのだ。
本来ならあの場所でとうに朽ち果てるハズだったこの身体が、本能だけの勢いで移動を続け、体感的にも4時間くらい歩き続けたところでいよいよ足が動かなった。
階段を登りきったところで大きく茂みの方によろけ、崩れるように転がり落ちて現在に至る。
その拍子に、ポケットから飛び出したラジオは勢いよく茂みの中に転がっていってしまったのだ。
ゾンビになってこのかた疲労感というものは全く感じた事は無いが、全身が自分の思い通りに動かなくなっていくのは頗るもどかしいものがある。
それは、人間が老いて身体の機能が低下するのと同じなのだろう。
ゾンビが全身を腐らせ劣化し、乾燥が進み、全身の機能を果たせなくなっていくのを疲れもなく、意識がはっきりしたまま体感させられているのだ。
自我にさえ目覚めていなかったら、こんな虚しい思いはしなかっただろうが。
横倒しになっている俺の視界には、展望台の様な建物が見える。
その建物と俺の間を、足元方向の階段からぞろぞろとノマゾン共が現れては俺の目の前を横切って、そのまま奥の茂みの方になだれ込んで行っている。
その姿を眺めながら俺は思う。
逃げろ、
早く、
早く!
もっと早く!
死に追いつかれないように逃げ続けろっ!
絶対に死ぬなっ!
そう、心の中でそう叫び続けた。
理不尽に思われるかも知れない。
人間たちから見れば俺たち、『骸の兵士』がやってきた事に憤りを覚えられる事は間違いないだろう。
だが、俺たちだって好きでやっていた訳でもなく、好きでゾンビになった訳でもないのだ。
ゾンビに傷付けられ、半日近くでゾンビにされ、アビの呪いで人間を傷付ける事を強制せれただけの哀れな死人だ。
どう足掻いたって、人間に戻れることもなければ生き返ることなど出来るはずもない。
そんな俺たちを見るなり、人間は攻撃し破壊しようとする。
一度死んだ者を、再び殺しにかかってきやがる。
人間たちだって死にたく無いのだろうが、俺たちだって死にたくなかった。
もっと言えばもう、殺されたくも無い。
先程終わりかけたこの俺が言わせてもらうが、先程のあれは『死』では無い。
デッドリーラインに追い越され、液状化して骨だけとなって転がり落ちるのはだ、良く言えば役目を終えた者の引退で、悪く言えば役に立たなくなった者の排除だ。
それでもアビは、俺たちを『骸の兵士』のまま終わらせてくれる。
だが、人間はどうだ?
元は俺たちも人間だったのに、アイツらは俺たちを人間として葬るのでは無く、ただのゾンビとして殺そうとしている。
穿った考えになるかもしれねぇが、もし自分達から生き残りたければだ、ゾンビが届かない場所で籠城すればいいのだ。
俺たち『骸の兵士』は人間を傷付けては増やすを繰り返す無限の戦士かもしれねぇ。
しかし、ゾンビ自体は有限だ。
心臓も動いていなければ呼吸すらしていない。
つまり、ある程度の時間が経てば朽ち果てるのみの哀れな存在だ。
放っておけば勝手に朽ち果てる単なる死体だ。
そのくらいの事は研究をすれば直ぐに分かるだろうが、アイツらは物理的に俺たちを殺すことを選び、消滅させる研究をし、そして行動に出やがった。
何度も言うが、俺たちは元人間で被害者だ。
アイツらは俺たちを加害者だと思っているようだがそうじゃなく、俺たちは加害者にされた被害者だ。
だのに、理不尽に俺たちを殺しにやってきやがる。
冗談じゃねぇ……
もうこれ以上殺されてたまるか!
だから死ぬな!
俺はもう駄目だがお前たちは二度と死ぬな!
殺されるな!
走れっ!!!
ゥォォオォォォッッッ……
横倒しになっている俺の口からは掠れた唸り声しか出ないが、今は目の前を通り過ぎるノマゾンの後押しになってくれればそれでいい。
『……行方不明の、辻聡美博士の研究により開発された『SEISUI・06』は、アンデッドに対して猛威を振るい、今や人類の大いなる希望となって撃退している模様です。効果としてはアンデッドが、この『SEISUI・6』を、ひとたび浴びると全身が発砲し、骨格以外の全てを溶解するとの……』
俺は声を出す事を止め、ラジオからの音に耳を傾ける。
せいすい……ろく……
やはり何処かで聞いたことがある。
発泡……溶解……
何処かでそんな光景を見た様な気もする。
そして、そんなヤツらと一戦交えた気もする。
だからかもしれない……
俺がこんなに危機感を感じ、逃げろと叫んでいるのは。
だが……
それももう、ここまでの様だ。
残念ながら俺はもう、完璧に動く事が出来なくなってしまった。
間接という間接が固まり、手も足も動かないし口元も動かせないから唸り声を上げることも出来なくなった。
眼球すらも動かせないから、もう景色すら動くことも無い。
だから今、俺の左目を這い上がる一匹の蟻すらも払うことも出来ない。
ただ霞んだ視界と、割とはっきりした意識だけが残るだけの落ちぶれた残骸となってしまった。
それもこれもあの時、俺がデッドリーラインに追い越される寸前で人間共が『骸の兵士』を押し返したせいだ。
ちくしょう……
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