大分県4.
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ようこそ!
『スポットライト・オン・ゾンビ!!!!』へ!
慌ただしい毎日の、ちょっとした一時にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
僅かな時間ですが、ごゆるりとお楽しみください。
至近距離からの爆裂音は耳をつんざき、爆風と共に飛んできた古参ゾンビは俺に激突した。
俺に激突した古参ゾンビは、頭と両足と右腕が四方に吹き飛んで、そして胴体は俺と共に田んぼのあぜ道に落ちた。
先に俺が地面にうつ伏せになり、俺の頭の上に古参ゾンビの胴体が被さるように落下する。
何とか顔をずらして道路側を見ると、民家の裏側の駐車場から3人の迷彩服を来た人間が飛び出して小銃を構え……
バババババッ! ババッ! ババババッ!!!
長身の自衛官と眼鏡を掛けた自衛官2人が銃を発射し、残りのひとり、目つきの鋭い上官風な自衛官が辺りに小銃を向けながら警戒する。
銃声が無くなり、暫くして声が聞こえてきた。
「爆破確認! 対象物、被弾確認! 活動停止と思われます」
すると、警戒している人間が声を上げた。
「憶測は禁物だ、再度確認しろ! 警戒を怠るな!」
こいつを隊長Aと呼ぼう。
そして長身Bと、眼鏡Cだ。
隊長Aと眼鏡Cの会話に、何とも懐かしい言い回しだと思いながらも落ち着きを取り戻してきた俺なのだが、今度は焦る気持ちを押し殺しながらマリアの姿を探す。
俺の視界の左側に、胴体だけの最古参ゾンビ2体が道路の上に転がっているのが確認でき、その前で隊長Aが小銃を構えながら様子を伺っている。
別の場所に転がっている古参ゾンビの横で、小銃を構える長身Bの足元にマリアが仰向けで倒れているのが見て取れた。
両手はポケットから出しているし、両足も頭も付いているようだが、マリアはピクリとも動かない。
とりあえず安心は出来たが、何せ立っている相手は小銃を持っているだけに、こちらも慎重にならざる負えない。
っと言うか、辺りにゾンビが居ないようだから数的にあちらが有利だし、こちらは丸腰だし。
しかし、アイツらの武器……
先程転がって爆発したのは手榴弾のM26、通称『レモン』と呼ばれるもので、日本の自衛隊で広く使用されているスタンダードな物だ。
何故に『レモン』と呼ばれるかと言えば、M26の前のモデルは表面がボコボコした物で、通称『パイナップル』と呼ばれていた。
そして、こちらは小型化され、表面もツルツルしているから『レモン』と呼ばれたとか。
諸説ありと言うヤツだ。
ちなみに、現在のモデルは『アップル』と呼ばれている。
それよりもアイツらが持っているあの小銃……
あれは確か、MP7。
一般的な部隊には装備されていない小銃だけに、アイツらが特殊部隊である事が分かる。
しかし、何故にそんな特殊部隊がこんな山間の温泉地にいるのかが不思議でならない。
「目標1、2、微稼働確認。3、4は沈黙。指示を!」
眼鏡Cがそう言ったその後で、直ぐに長身Bの声が聞こえた。
「目標5、6、7、8、沈黙。指示を!」
緊張気味に長身Bと眼鏡Cがそう言うと、すかさず隊長Aが顔だけをそちらに向けて声を出す。
「目標1、2に発砲許可! 3、4、5、6、7、8は警戒!」
その直後だ、眼鏡Cがその場で小銃を下に構えると、再びサブマシンガンの連射音が暫く鳴り響いた。
ババババババババババッッッ!!!
俺の位置からでは、マリアから向こうがよく見えないが、アイツらの会話を考えれば1人4体の受け持ちで警戒しているのだろうと予想出来る。
「目標1、2、沈黙確認!」
小銃を構えたままの眼鏡Cがそう言うと、「よし!」っと隊長Aが言えば、眼鏡Cは小銃の銃口を下にさげて長身Bに近付いてくるのが確認でき、そしてその長身Bが言った。
「目標9、10、11、12はどうか!」
恐らく、俺を含めた田んぼ側に吹き飛ばされた最古参ゾンビの事を言っているのだろうが、少々厄介なことになった。
アイツらの言う『沈黙』とは活動停止の事を言っているのだろうが、その『沈黙』の定義が動かない事を意味するのか、二度と動けなくする事なのかが分からない。
前者であればこのまま動かなければいい。
元よりゾンビなのだから呼吸をしていなければ心臓が動いている訳でも無いので、やり過ごす事は難しくは無い。
しかしだ、もし後者ならアイツらは確実に頭部を狙ってくるだろう。
そして、隊長Aが受け持つ俺以外の3体は全員が最古参ゾンビだったため、手榴弾の爆発で頭部や手足が胴体から離れて散乱して行くのを、俺も吹き飛ばされながらも確認していた。
俺の場合は、爆発で俺の方に吹き飛ばされた最古参ゾンビの胴体を盾に身を丸めていたからかろうじて無傷で済んでいる。
ただ、うつ伏せで着地した時に、後頭部に最古参ゾンビの胴体が落ちてきたために、アイツらから見れば頭が無いように見えるかもしれない。
だが、この最古参ゾンビを動かせば頭部がある事を確認されてしまい、小銃で撃たれてしまう可能性もある。
案の定、隊長Aは俺の目の前に立って右足を俺の上に被さる最古参ゾンビの上に乗せて暫く小刻みに揺らし、そして動きを止めて声を出した。
「目標9、10、11、12『沈黙』。損傷が激しく、検体2体分の『頭部』は破損が著しい為に確保は困難の模様、以上!」
そう言って隊長Aは踵を返し、長身Bの方に移動して行き、奥に居た眼鏡Cも長身Bの元にたどり着く。
……助かった。
すると、それまで緊張感を保った話し方をしていた自衛官達の会話が一変し、フランクな言い回しに変わっていった。
「いやぁ先輩、やっぱボロ雑巾を着たゾンビはチョロいっス。火薬減らしたレモンでも頭や手足が吹っ飛んじまいますもんね」
そう言ったのは眼鏡Cだったが、今度は先輩と呼ばれた長身Bが声を出してきた。
「全くだ、汚い服装のゾンビは劣化が進んでいる為に、受けるダメージが激しいとの報告に間違いは無かったな」
眼鏡Cの喋り方はチャラそうだったが、長身Bの方はそれなりに先輩らしい話し方の様に聞こえ、そんな長身Bがこんな事を言い出した。
「で? 高橋、『頭部』の方はどうなんだ?」
ん? 頭部? どう言う意味だ?
そう言えばさっき隊長Aも、『頭部』と口にした様な……
普通ならば『五体』を気にするところを『頭部』に限定した事に何か意味があるのかと考えていると、高橋と呼ばれた眼鏡Cが声を出した。
「さっき動き始めた2体の頭は俺が駄目にしちゃいました。その手前のヤツは残ってますけどもうひとつは使えないッスね。先輩の方はどうっスか?」
使えない? 使えないってどう言う意味だ?
言っている意味が全く分からないまま、長身Bと眼鏡Cの会話は続いた。
「こっちも2体は使えないな。こっちの男とそっちの女は無事のようだが」
そう言って長身Bは足元に転がる古参ゾンビの顔をガシッ蹴り上げやがった。
死者への冒涜だ。
死者になったのはかなり前だろうが。
すると、今度は隊長Aが俺の死滅した神経を逆撫でするような行動を……
マリアの額に靴底を押し当て、グリグリと踏みにじりながら声を出した。
あんの野郎ぉ……
「さっきも言った通りこっちは全滅だ。全く、使えねぇな、このクズ共は」
畜生ぉ……
ゾンビがクズなのは否定しねぇが、マリアを足げにしている時点でお前の方がクズ以下だと言いてぇし、今すぐにでも飛びついてあの首を引きちぎってやりてぇ。
歯ぎしりしたいほど憤るのだが、『カプカキ』を引退した頃から歯がグラグラし始めたので、歯ぎしりも出来ない自分にもまた憤っていると、その俺的憎い隊長Aが声を出す。
「それで高橋、検査液は後何本残ってるんだ?」
検査液? なんだその検査液とは? なんの検査でどんな液体なんだ? それより早くその汚ぇ足をマリアからどけろやっ!
俺には全く意味の分からない言葉に、眼鏡Cは軽々と反応した。
「あと3本ッスね。だからこれでビンゴっスよ隊長」
確かに話し方も風格も隊長Aが隊長格だろうと思ってはいたが、そろそろ足をどけないと飛びかかるぞ、このクソ野郎!
イライラしながらもアイツらの様子を伺っていると、隊長Aがようやくマリアから足を離して3歩程さがりながら言った。
「だったら直ぐに検査を開始しろ。山崎、もう少し下がれ」
すると、山崎と呼ばれた長身Bも3歩程下がりながら隊長Aに向けて声を出す。
「しかし隊長、首を落とさなくて大丈夫ですか?また暴れ出す可能性もありますが?」
首を落とす……だと?
その言葉で、ステンドグラス美術館の工房内にあった5つの頭の事を思い出す。
「問題無い、こいつらは動きの鈍いヤツらばかりだから暴れだしても簡単に仕留められるからな」
そう言って隊長Aが小銃を構えると、「了解!」っと言って、長身Bも小銃を持ち上げたタイミングで眼鏡Cが胸のポケットから3本の小瓶を取り出し、残りの2人にそれを掲げながら言った。
「ほんじゃ、サクッといっちゃうっス」
そう言って1本の小瓶の蓋を開け、「6番いっちゃいまぁす」っと言いながら、眼鏡Cの足元の古参ゾンビの顔をかけた。
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