大分県3.
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ようこそ!
『スポットライト・オン・ゾンビ!!!!』へ!
慌ただしい毎日の、ちょっとした一時にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
僅かな時間ですが、ごゆるりとお楽しみください。
「結構派手に壊され過ぎじゃない? せっかくのステンドグラスが無茶苦茶になってて勿体ないし!」
等と、プリプリ文句を言うマリアだが、確かに建物自体が半壊していて、入口が粉々になっている。
建物の中にはステンドグラスが散乱している光景を見ればだ、そんな感想が口から出てもおかしくはない。
あれから俺たちは、駅前から先程の足湯場に戻るように移動を始めた。
旅館街を通り抜け、田んぼに挟まれた田舎道をのんびりとダベリながら歩く俺たち。
横転した隊用車両や足湯場を横目に路地を曲がり、ようやく一軒家風の美術館にたどり着けばこの有様だ。
ただ、そんな美術館を眺め続けていた俺が、不意にこんな提案をした。
「せっかく来たんだし、ちょっと寄ってみねぇか?」
目の前の美術館に何となく違和感を感じた俺は、マリアと共にステンドグラス美術館に足を踏み入れる。
そこには3体分くらいの、バラバラになったゾンビの破片が飛び散っているのが確認出来る。
恐らく、車両に轢かれた跡だろう。
全ての破片は広範囲に飛び散っていて、胴体らしきものは潰れて床にへばり付いていた。
「あ〜〜〜ぁ、このコップとかこんなに綺麗なのに壊しちゃってさ。もうちょっと控えめに攻撃出来なかったのかって言ってやりたくなるしっ!」
同僚の亡骸には無関心っスか?
マリアは、地面に散乱したステンドグラス製品を靴で払いながら文句を言うのだが、そもそも控えめな攻撃だからこそ、この程度で済んでいるのではないかと思う。
もし重火器での攻撃であるのらば、半壊では済まなかっただろうし。
破壊された美術館の中を、俺は視線を巡らせた。
床に転がっている、右肩から手のひらまで原型を留めたノマゾンの腕を足で払うのだが、もちろんぴくりとも動かない。
そんなゾンビの亡骸の破片や潰された胴体を眺めながら違和感を確信に変えた瞬間、マリアが立ち上がってこちらを見て言ってくる。
「せっかく颯太とデートしてあげてんのにさ、これじゃムードぶち壊しじゃん! もうちょっと後のゾンビの事を考えなさいよって感じ!」
っと言って、右頬をプックリと膨らますマリア。
……マリアさん……すっげぇ可愛いっス!
そんなプリプリと怒る表情に、年齢以下の幼さが垣間見えてホッコリしてしまう。
ただまぁ、違和感が確信となってしまった俺は、この問題を一人で抱えるよりは長年『カプカキ』として行動を共にしたマリアにも知っておいて貰おうと思い、車両に轢き潰されたゾンビの胴体に指をさして声を出す。
「見てみろよこのご遺体。多分だが、この美術館の中に居たノマゾンを外の垣根ごと美術館に突っ込んで轢き潰したんだろう。ただ、どいつもこいつも衝突の勢いで全身がバラバラになってんのに、頭だけがどこにもねぇ。何でだと思う?」
俺の言葉を聴いたマリアは、潰れたノマゾンの胴体をひとつずつ観察し、比較的原型を留めている胴体の前にしゃがんで暫し、ゆっくりと立ち上がって言ってくる。
「腕や足と違って頭部は刃物で切り落とされてるし。断裂箇所が多いからナイフか何かで突き刺しながら切り落としたみたいね。意味分かんない」
久しぶりに聴いた、特殊部隊『カプカキ』の頃の緊張感のある鋭い声だ。
今度はギャップ萌えっスか?
暫くキョロキョロと辺りを見回したマリアは俺に向き直り、そして視線を扉の方に向けて「行ってみる?」と言った。
その言葉で俺はすかさず歩き出し、マリアの横を通り過ぎるタイミングで横並びとなった2体が、まだ足を踏み入れていない美術館の奥に向かって歩く。
美術館内に俺たち以外の気配は無かったので、身体を潜めながらの移動はしなかった。
それでも緊張の面持ちで奥の扉を開くと、そこはステンドグラスの工房だった。
それ程広くもない工房の中は、色とりどりのガラスが本棚のように多数立てられ、はんだごてが至る所に散乱している。
そして、作業台の上には、切り取られたゾンビの首が5つ並べられていた。
ただそれは、普通の頭部ではない。
まぁ、そもそもゾンビである事自体で普通では無いのだが。
この際そんなそもそもの事は置いといてだ、俺たちが目の当たりにしている5つのゾンビの頭は中途半端にドロリと溶けた物もあれば、頭全部が真っ黒に変色している物もある。
頭蓋が顕になっている物もあれば、焼けただれた物もあり、眼球だけが無い物もあった。
「2体多いな。多分、他の場所で切り取った物を持ってきてここで並べて撮影か? 胸糞わりぃ……」
5つが5つとも違う様子を見せているのだが、1番嫌悪感を覚えたのはだ、その頭の前に数字が書かれていた事だ。
1から5の数字が、それぞれの頭の前に振り当てられる様にチョークで書かれていた。
その中でも著しく損傷の激しい頭、顔面の半分が溶けて頭蓋骨が剥き出しになっている4番の数字に二重丸が書かれている。
「これ撮ってSNSに上げようっての? バズる分けないじゃん」
そう言って「ふんっ!」と鼻を鳴らし、両方の穴から血栓を飛ばすマリアは、作業台に並べられた5つのゾンビの頭を眉間に皺を寄せながら睨みつけている。
ただ、その視線の先は果たして何処を向いているのか図り知ることは出来ない。
マリアもまた、こちら側のゾンビなのだ。
とは言え、動かなくなったゾンビに哀れみを感じる程『骸の兵士』は仲間意識がある訳ではなく、この様な面白半分な手法をとった人間にマリアは憤っていた。
それは俺も同じで、好きでゾンビになった訳でもなく、やりたくて人間を傷つけたい訳でも無いのに、首を切断された挙句に晒し者とは全く浮かばれねぇ。
どうせ、デッドリーラインが通り過ぎれば骸骨だけになっちまうのだろう。
しかし、こんな作業台の上で陳列されられたままで発見されるくらいなら、いっそゾンビらしくその辺に転がっている方がいいだろうと思い、俺は工房の窓を開けてひとつひとつ外に放り投げた。
「颯太ってさ、割とドライな考え方すると思ったらそういう所もあるよねぇ。非情なとこもあるのに優しいって言うかさ……」
等と、ディスられてるのか褒められてるのかよく分からないことを言うマリアに向けて、俺は肩を竦めながら言った。
「明日は我が身の俺たちゾンビだからな。晒しモンになるぐれぇなら道端のゴミ同様に転がって終わりたいじゃないか。それが正しい『骸の兵士』の成れの果てと俺は思ってるよ」
「格好いいじゃん」
っと言って、ニカッと笑うマリアの笑顔で少し落ち着いた俺は、ひとつ溜め息を吐いてから窓を閉めた。
任務が終わった時など、緊迫の状況から解放してくれるのはいつもマリアの笑顔であって、その笑顔が近くにあるからこそ今回のこの光景にも、俺は冷静で居られたと言っても過言ではない。
願わくば、共に最古参ゾンビになって笑い合いながらデッドリーラインに追い越されたいと、最近ちょいちょい思うこともある。
もちろん恥ずかしいから言った事は無い。
そのまま俺たちは元の部屋に戻り、ゾンビの残骸やステンドグラスの破片を避ける様に移動して外に出た。
せっかくのデートに水を刺された感じになってしまったが、今ではすっかりゆふいん駅を出る時のテンションに戻ったマリアが明るく声を出した。
「さって! シラケた雰囲気になっちゃったけど、仕切直そっか!」
そんなことを言うマリアを見やり、デートを始めてからまだ1時間程度しか経ってないこともあって、まぁいいかと言う思いに至った。
そして、マリアと同時に踵を返して通りに出る。
そこには古参ゾンビの中にチラホラと最古参ゾンビが紛れていて、10体ほどが徘徊している光景が視界に飛び込んできた。
駅とは逆の方向に行こうと決めていた俺たちは、右から左に隊列を組んで歩くゾンビ達とは逆流するように歩いていく。
すると、列の真ん中より後ろを歩く最古参ゾンビの列に小さな何かが、ポトリと落ちて弾んだ。
ちょうどマリアの前の最古参ゾンビの後方辺りに丸い何かが落ち、そしてコロコロと転がって止まる。
何気なくそちらに視線を向け、それを見た俺に驚愕が走った。
ばっ……馬鹿なっ!
M26……レモンかっ!
マリ……
バァァァァァァァァンッッッ!!!!!
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