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xross adventure-neverend challengers-  作者: 鬼々崎うらら
生徒会編
10/13

01;07

xross adventure -atomic runners- 01;07

マーベラス国立学院、エレベーター内。

ゴウンゴウンと低音な機械音をゆっくりと鳴らしながら動くエレベーター内で、間を空けるようにして立つ人物が二人。賢治とアヴァは上の階を目指していた。

エレベーターのドアと反対側の壁は透明な仕様になっている。30階あるマーベラス国立学院の上階層からはトンプソン王国全景が見渡せるのだが、そこから眺める外の景色はどうもカオスな光景だった。30階あるマーベラス国立学院の上階層からはトンプソン王国全景が見渡せる。まるで競争するかのように空に伸びる長方形のビル群が集まる現在のこのトンプソン王国のど真ん中に、堂々と建つ歴史的建造物の西洋風な王宮。モダン建造物の中に孤独に取り残されたかのような王宮は、やはりというべきか、おかしいぐらいの存在感を放っていた。”自分はここだ”とでも言いたげな程だった。

そんな外の光景がゆっくりと離れていくのをぼうっと見ながらエレベーターの壁に寄りかかる賢治は、颯と一旦解散した後のことを思い返す。


颯が使っていた神器ミョルニルと思われるハンマーは凄まじいまでのパワーを発揮し、颯が振りかぶった途端に青白く強く光り始めた。そしてテーブルバリケードを思い切り吹き飛ばしたかと思えば、まるで光の速さの如くテーブルは学食中のあちらこちらの丸テーブルや長テーブルを蹴散らしながら猛進し、ダンゴ状になって壁に激突。生徒会直属近衛部隊のディゴンの何百倍も上を行く程の勢いだと視認で分かる程だった。

颯の持つような神器は、史実に名を残すような偉人や伝記に登場する英雄、神話でしか存在が表記されていない神々の恩恵が凝縮された、奇跡とも呼べる道具のことだ。そして恐らくその内の一つとしてカウントされるであろう神器ミョルニルは、賢治も存在だけは知っていたものの、なぜだかその神器の情報を調べようとしても一件もヒットしない。世界中の書物が集められた王国立図書館にも関連したような書物は一つも無し、伝記や神話を読んでも神器ミョルニルの所有者らしき人物も見つからず、インターネットのあらゆる神器についてのサイトを隅から隅まで調べても、ミョルニルのミョの字すら出てこなかった。

賢治は思う。颯の持つ能力(アビリティ)は未だに不明ではあるが、彼がランク2の生徒でも、神器ミョルニルを持つ彼の実力はそれを遥かに超えるのではないかと。颯が低ランククラスであるランク2に所属しているのは何かしらの理由があるのかも知れないが、恐らく入学時のランク付け試験にて神器ミョルニルの能力を発動させなかった為だろう。


そんなことを考えながら、賢治がエレベーターの透明なウィンドウ越しにトンプソン王国の全景を眺めているところに、エレベーター内部のドアの前に立っているアヴァ=マラルがふと口を開いた。

「こんな意味不明な状況のまま、私に付いてきてくれてありがとう。なんか・・・・、巻き込んじゃってごめんね」

賢治は特に気にする様子も無く、ただグルンと首をアヴァの方向に向けて、気怠そうな表情で少し睨みつける。

「あン?”巻き込んじゃってごめんね”だ?何か心当たりあるみてェな言い方じゃねェか」

「まぁ、無い訳じゃないんだけど・・・・」

もじもじしながら賢治に目を合わせようとしないアヴァは、どうも言い辛そうな雰囲気だった。


そもそも十数分前、颯から「鈴ちゃんの行方不明についての情報を持った人物と接触した」と言われ、学食内にあるカフェにて集合が掛かり、その情報主の生徒会書記担当であるアヴァ=マラルとの接触に成功した。そしてアヴァが、鈴が関与しているという委員会運営費カット計画について説明をしようとした途端、タイミングを見計らっていたのか、アヴァ抹殺宣言をして賢治達のいるカフェ周りを生徒会近衛部隊が取り囲むが、正直、生徒会による委員会運営費カット計画を全く知らない賢治と颯にとっては意味不明の状況でしか無かった。そしてその場を颯が請け負う形で脱出した賢治とアヴァは現在、エレベーターに乗って上層階を目指しているーーーーー


改めて考えてみると、自分が一体何をしているのかよく分からない。

賢治は軽く溜め息をした。

「で? 今の状況がとりあえずヤベえってことしか分かんねェし、とりあえず知ってること何でも良いから説明してくれ」

するとアヴァが「そうね」と軽く頷き、身体が緊張していたのか深呼吸をしながらゆっくりと力を抜き、寄り添っていたエレベーターの壁をズルズルと下りていってしゃがみこむ体勢になった。

「まず、委員会運営費カット計画の話から始まるんだけど、実はもう一つの”ある計画”の為の運営資金を少しでも確保しておく為に決められた計画なの・・・・って話までしたんだっけ?」

「ああ」

「で、実はその”ある計画”に欠かせない実験台となる人間が必要だったの」

賢治は顔を顰める。

「’実験台’?」

「ええ・・・・」

ただじっと見えない何かを睨みつけるような険しい表情でアヴァは空を見つめる。あまり雲行きの良さそうな内容では無いらしかった。

「土木作業や救命活動の現場みたいなところって、常に命の危険と隣り合わせでしょ?そういう現場に、将来的には高性能なアンドロイドを使って危険作業諸々をやらせようって提案から生まれた”人類改革計画”っていうのがあるんだけど、それには莫大な費用が必要になったの。この計画で作られる予定のアンドロイドは自立型のものだから人工知能を一体一体に搭載させるし、人体では実現出来ないような運動能力を可能にする為の身体構造、さらには学習能力まで身に付けさせる為に、国家財産級のお金を用意しなくちゃいけない。その為に、少しでもそのお金を貯蓄しようと始めたのが、マーベラス国立学院で言う委員会運営費カット計画」

「はァん・・・・?」

アンドロイドやら国家財産級やら人類改革計画やら、あまり聞いたことの無いようなワードを並べられ、賢治はいまいち理解に苦しむ。そんな賢治を気にする様子もなくアヴァは話を進める。

「委員会運営費カット計画だけで集金しても費用は全然集まらないから、これと似たようなことがこのトンプソン王国の色々な場所で世間の秘密裏に行われてる。それでも、一国の国家財産に匹敵する程に費用は到底集まらないから、次にこの国が始めたことがあるの。それは・・・・」

途端、アヴァの顔色が険しくなる。まるで苦虫を噛み潰したような顔だった。

やがて顎に右手を添え、何かを考え込むような姿勢になり、エレベーター内に沈黙が降りた。

「・・・んだよ、ここのお偉いサマの秘密事なんざたった今部外者に話し始めちまったんだから、最後まで説明しても大して変わんねェんじゃねェの?それともなんだ、それ以上のトップシークレットでもあんのか?」

「まぁ・・・確かにそうなんだけど」

するとアヴァはしゃがんだ姿勢から再び立ち上がり、一つ覚悟したかのように溜め息をすると賢治の方を見据えた。眼鏡の奥のまっすぐと賢治を見据える瞳は、真剣そのものであるものの、ごめんなさいとでも言いたげな程に辛そうな色をしている。そう賢治は感じる。

「その前に少し話が逸れるけど」

アヴァがゆっくりと、そして丁寧に言葉を紡いだ。


「これから賢治くんが聞くことは、『知らない方が良かった』と思ってしまうこと」


途端、賢治は背筋に悍ましい何かを感じた気がして、ゾクリとした。

『知らない方が良かった』と思ってしまうことーーーーーーーとは。

きっとそれが鈴を取り巻く真実なのだろうと賢治は思ったが、本当に知ってしまって良いのかと、アヴァの言葉のその先を躊躇ってしまいたくなる。マヤ=パスカシア・コットの失踪、鈴の行方不明、そしてそれに加えて生徒会の知られざる裏側。訳の分からない事柄が短期間に起き過ぎて、自覚すらしていないものの、賢治は一種の恐怖すら覚えていた。

「これを聞いたら、このトンプソン王国研究機関のお偉い様方を敵にまわすことになるから・・・・、後戻りなんて出来なくなる」

賢治は僅かに身震いをした。

マヤの行方も結局まだ知れていないが、それでも、鈴を取り巻いてる謎さえ知ることが出来るのならーーーーー。

「・・・・、続けてくれ」

アヴァはゆっくり、少し残念そうに重く頷いた。

「さっき説明した”人類改革計画”なんだけど、アンドロイドの運動能力を促進する為に、プロジェクトの最高研究チームが開発したブースターと呼ばれる装置が発明されたの。その装置を人間に取り付けて’能力(アビリティ)を強制的に強化させようとする実験’を始めようとする動きが出て来た」

人間に取り付けて行う実験というくらいだ、その被験者、つまり’犠牲となる誰か’を用意しての実験ということだろう。そうなると、勿論その人物を用意する方法を用いらなければ被験者は集まらない。かと言って、ボランティアや多額の報酬が出たとしても、物好きでない限りはそのような得体の知れない実験に自分自身のたった一つの身体を授ける人はまずいないだろう。被験者も別に一人二人でいいという訳では無い為、複数人数が必要になる。だが人がなかなか集まらない以上、実験は始められないのだ。よって人体実験の手は無いだろう。

頭の固い賢治はそう思った。だが違和感に気付く。

見落としのあるような、違和感。

・・・・いや、被験者を集めるには良い手がある。

捻くれた性格の賢治だからこそ、その手に勘付くことが出来た。

先程の計画の費用の話から逸れているのもまた、その手一つだけで説明出来てしまうからだ。

賢治は目を閉じ、鼻だけで大きく深呼吸をする。

「・・・・その被験対象が、まさかあの村のヤツらってワケか?」

「・・・・まさか、旧・シェール村のことを知ってるの?賢治くんってもしかしてこの国の上層部の人達と知り合いとか?」

「まァ、ウチの家庭がそんなんでな」

自分の身元が停戦同盟軍であることを知られてはいけない為、賢治は適当にはぐらかす。

この経済発展が著しい大都会となっているトンプソン王国は、人口が1000万人と小規模な国だ。その外れにある村の跡地がある。

旧・シェール村。

人間サイドと妖鬼サイドに大きく分裂し、互いのサイドに属する国々が火花を散らす時代が900年程続いたある年、人間サイドのトンプソン王国のシェール村という小さな村が妖鬼サイドのとある国との接触を試みる動きが出て来た。それを止めようと、人間サイドの各国の代表者が揃って立ち上げた世界総合同盟議会、通称”世総盟会”が、妖鬼サイドのとある国を軍力によって総攻撃し、国を壊滅状態に陥れることによって交流を鎮圧することに成功した。だがやられた国が黙ってはおらず、残った軍力でシェール村を壊滅させてしまったという歴史がある。その後、”世総盟会”の決断によって、’妖鬼との接触を試みた裏切りの村’と見なされたシェール村はトンプソン王国から切り離されてしまった。

旧・シェール村には家屋と認識出来るような建物は一切残っておらず、煉瓦を積み立て粘土で接着した大きめの釜のような小屋がいくつかあるくらいだ。シェール村壊滅時、何故か10歳以下の子ども達だけが全員生き残り、それ以外の住民は全員殺害されてしまった。よって、現在旧・シェール村では、家族を無くし、宛ての無い子ども達が大勢住んでいる。

旧・シェール村はトンプソン王国から切り離された現在、どこの国にも所属しない’ただ人が住む土地’となっている。国とは無縁な関係であると”世総盟会”が認めている為、旧・シェール村に住まう子ども達には、保証されるべきあらゆる人権や義務が一切存在しない。


妖鬼として差別される訳でも無く、人間として認められる訳でもない、大人達に意味の無い存在と勝手に決定づけられた子ども達が、そこにはいる。

動けなくなったらいつでも捨てることの出来る労働奴隷として、ある程度まで育ててから奴隷同士で互いに性交させ新しい奴隷を増やしていく増殖奴隷として、オークションにかけて高値で取引する為の売却奴隷、性行為を目的とされる性奴隷として使うことが出来る”(てい)のいい道具”として、人間サイドの各国から注目されているのだ。


経済発展が著しいトンプソン王国の裏の顔は、人権を持たない者に対しての容赦ない扱いだということは賢治もよく知っていた。停戦同盟軍という軍隊に入っていれば、社会の裏の顔というのも度々見るようになるからだ。

しかし賢治は不思議に思う。

「なァ、そのブースターとやらってのはアンドロイドの運動を促進するモンなんだろ?そんなん人に取り付けることなんて出来ねェんじゃねェのか?そもそも、なんでアンドロイド開発計画な筈なのに人間の能力(アビリティ)強化の話なんて出てくんだ?」

「実は、この計画の本当の目的はそこにあるの」

するとアヴァは賢治がいるガラス張りの方へと近付いてくる。そのままエレベーターの手すりに両手を添え、外観を見渡した。外に映る光景は、トンプソン王国全景。ゴウンゴウンと機械音を鳴らしながら、ゆっくりと上の階を目指しているエレベーターの電子パネルには『19』と表示されている。

「一応表にも秘密で遂行されている”人類改革計画”は、この国の住民の生活を大いに助けてくれる革新的な計画であるとされているけど、その計画の本当の意味はそこにあるんじゃない」

左後ろにいる賢治の方に首だけ90度回し、しかし賢治に焦点を合わせる訳でも無く、遠くを見つめたような目でアヴァは言った。


「人権を持たない旧・シェール村の子ども達を実験台にして、今までにない程強力な能力(アビリティ)を持った強制強化型兵士を開発する計画、”改・能力者開発計画”こそが、”人類改革計画”の本当の顔なの」


賢治はその言葉を聞いた途端、驚愕に震えた。

各々の人類が尊重されるべきという、人類が生きる上で絶対的権利の筈の人権が旧・シェール村の子ども達のみ認められないという地点で既に異常だが、人権が無いことを利用して子ども達を好き勝手に扱おうとする大人達に賢治は失望し、憤りを覚えた。賢治は爪の跡が残る程手を強く握りしめていた。

アヴァは賢治の怒りを理解しながらも続ける。

「その為の費用を集める方法だって簡単なこと。旧・シェール村の子達を村跡から無理矢理連れ出して、奴隷売買オークションにかけて超高値で取引手へと渡す。人権が尊重される今の時代、奴隷として扱える人材は貴重だもの、毎度毎度おかしいぐらいの高値で売れていくわ」

賢治は怒りの口調で問う。

「お前がその情報を知ってるってこたァ・・・・、生徒会もその計画に関係してンのか?」

「動かされているという言い方の方が正解かも・・・・。正直、こんなことを知っていて堪らないっていう生徒は必ずいるだろうし。少なくとも私は知っているだけでも嫌だったし、こんな酷い計画をどうにかしてでも止めたい気持ちがあった。そんな時に、鈴ちゃんを探してる賢治くんと会って、君とならきっと止められると思ったから、せめて賢治くんと颯くんには話しておきたかったの」

’ああ、そういうことなのか’。

アヴァが口には出していなかったものの、賢治は現在の会話の流れで彼女が何を言いたいのか理解出来た。

何故、鈴の行方を探す賢治に、”改・能力者開発計画”について話したのか。

賢治はアヴァの説明を締めるように結論を言い当てた。

「・・・・勘だけどよォ、鈴が”改・能力者開発計画”の実験台にされるってことか?」

アヴァは返事をせず、その代わりに顔をしかめ首を縦に振った。

「勘が・・・・、鋭いのね」

「・・・・計画を取り締まってンのは誰だ?」

「代表?そうね・・・・、一番上の人達は知らないけど、私たちの学校で取り締まってるのは生徒会長と理事長だけど・・・・」

そこまで言いかけて、アヴァは固まってしまった。

それは、怒りを通り越し恐怖そのものと化した賢治が立っていた。先程のように外景を見渡す訳でもなく、少し俯いた顔には光のない瞳があり、第六感で感じる程の危険な予感を纏っている。

彼は怒りそのものと化しているとアヴァは感じた。

賢治はゆっくり、先程よりも低い声で続けた。

「何階で降りりゃいいんだ」

アヴァは電子パネルの方へと首だけ向けた。

現在、エレベーターの電子パネルが指す数字は『23』。

「・・・・降りるのは、26階」

すると賢治はスタスタとエレベーターの扉の前まで歩いて行き、両手を腰に差しているものへと伸ばした。

解き放たれたそれは、右手に握られた片方は銀色一色、左手に握られていた片方は黒色一色に染まっている鉄の塊だった。

愛銃、デザートイーグル。

半自動式(セミオートマチック)のそれのトリガー部のみを引き、賢治はこちらに振り向きもせず、独り言のように呟いた。


「ぶちのめす」


そしてエレベーターの電子パネルに表示された数字は『26』。

賢治の瞳には、黒い怒りの炎が力強く宿っていた。


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