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「いやぁ、葵さん。」
王は、懐かしそうに笑った。
「お久しぶりですね。」
「葵さんは、そのままですから分かりやすいんですが……。」
王は葵の後ろにいるクロードへ視線を向ける。
「他の方は……。」
「源三さんか、黒崎さんですか?」
クロードが少し驚いたように目を見開く。
そして、静かに頭を下げた。
「……私が黒崎です。」
「やはり!」
王は嬉しそうに笑う。
「お久しぶりです、黒崎さん。」
「こうして再会できるとは、嬉しいですね。」
クロードも微笑む。
「こちらこそ、お久しぶりです。」
葵は首を横に振る。
「源三さんはここにはいないよ。」
「そうですか。」
田中は少し残念そうに頷いた。
「では、私の転生後の話でもしましょうか。」
そう言って、田中はゆっくりと椅子へ腰掛けた。
「私が転生して最初に感じたのは――。」
「この国、とんでもないな。」でした。
葵達は黙って話を聞く。
「国内の貧富の差が、あまりにも激しかったんですよ。」
「一部の者だけが豊かで、大半の民は明日の生活すら分からない。」
「しかも、他国からも好き放題に食い物にされていました。」
「貿易では不利な条件を押し付けられ。」
「外交でも足元を見られる。」
「それだけなら、まだ何とかなったでしょう。」
田中の表情から笑みが消える。
「問題は、国内にもありました。」
「悪どい貴族達が、自分達の利益のために国そのものを売っていたんです。」
「国を……?」
葵が眉をひそめる。
「ええ。」
「他国へ情報を流す。」
「重要な土地や利権を譲る。」
「自分達さえ儲かれば、国がどうなろうと構わない。」
「そんな者達が少なくなかった。」
田中は淡々と続ける。
「私は第三王子でした。」
「上には兄と姉が二人。」
「当然、王座を巡る争いもありました。」
「それはもう、泥沼でしたよ。」
「兄と姉、それぞれに派閥ができて。」
「貴族達も二つに分かれて争っていた。」
「その間にも国はどんどん弱っていく。」
「最悪だな……。」
葵が呟く。
「ええ。」
田中は苦笑した。
「前世の私からすると。」
「搾取するにしても、生かさず殺さずが基本なんですよ。」
「相手が死んでしまえば、もう搾り取れませんからね。」
「ですが、この国は完全に違った。」
「本当に、殺しにかかっていた。」
「当時の王――私の父が、何とか国を支えていました。」
「ですが、それにも限界があった。」
「このままでは、本当に国が滅びるところでした。」
田中は少しだけ表情を柔らかくする。
「そんな私にも。」
「転生してから、とても優しい両親ができました。」
「前世の私は、親から愛されるという感覚を知りませんでした。」
「ですが、今の両親は違った。」
「何をしても心配してくれる。」
「失敗しても最後には笑ってくれる。」
「ただ生きているだけで喜んでくれる。」
「そこで初めて。」
「親に愛されるというのは、こういうことなのかと思いました。」
田中は静かに笑う。
「だから。」
「両親のためにも、この国を何とかしようと思ったんです。」
「自分以外の誰かのために動こうと思ったのは、あれが初めてでした。」
葵達は黙って聞いている。
「幸い。」
「私には前世の経験がありました。」
「まず最初に、この国の裏側を掌握しました。」
「情報。」
「金。」
「人脈。」
「裏社会。」
「前世で培ったものは、こういう時には便利でした。」
「次に、兄と姉の力を少しずつ削いでいきました。」
「ですが、二人を敵に回すつもりはありませんでした。」
「互いの利害を合わせ。」
「協力した方が国のためになると理解させた。」
「今では、二人とも私の頼りになる味方です。」
田中は穏やかに笑う。
「その後は、他国に悟られないよう国力を回復させました。」
「農業。」
「商業。」
「軍備。」
「魔道具。」
「教育。」
「一つずつ立て直していった。」
「そして。」
「今度はこちらから他国へ介入しました。」
「もちろん、表立ってではありません。」
「情報と交渉。」
「必要なら、少しばかり裏から手を回す。」
「そして相手にも利益を与える。」
「そうやって関係を作っていった結果。」
「今では、どこの国も喜んで色々と協力してくれるようになりました。」
田中は淡々と語る。
まるで、それが当然のことだったかのように。
そして、ふと思い出したように口を開く。
「そういえば。」
「まだ今の名前を名乗っていませんでしたね。」
田中は姿勢を正し、葵達へ向き直る。
「私の今の名前は――。」
「アルベルト・グランディス。」
「この国の王です。」




