↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/91

89

「いやぁ、葵さん。」


王は、懐かしそうに笑った。


「お久しぶりですね。」


「葵さんは、そのままですから分かりやすいんですが……。」


王は葵の後ろにいるクロードへ視線を向ける。


「他の方は……。」


「源三さんか、黒崎さんですか?」


クロードが少し驚いたように目を見開く。


そして、静かに頭を下げた。


「……私が黒崎です。」


「やはり!」


王は嬉しそうに笑う。


「お久しぶりです、黒崎さん。」


「こうして再会できるとは、嬉しいですね。」


クロードも微笑む。


「こちらこそ、お久しぶりです。」


葵は首を横に振る。


「源三さんはここにはいないよ。」


「そうですか。」


田中は少し残念そうに頷いた。


「では、私の転生後の話でもしましょうか。」


そう言って、田中はゆっくりと椅子へ腰掛けた。


「私が転生して最初に感じたのは――。」


「この国、とんでもないな。」でした。


葵達は黙って話を聞く。


「国内の貧富の差が、あまりにも激しかったんですよ。」


「一部の者だけが豊かで、大半の民は明日の生活すら分からない。」


「しかも、他国からも好き放題に食い物にされていました。」


「貿易では不利な条件を押し付けられ。」


「外交でも足元を見られる。」


「それだけなら、まだ何とかなったでしょう。」


田中の表情から笑みが消える。


「問題は、国内にもありました。」


「悪どい貴族達が、自分達の利益のために国そのものを売っていたんです。」


「国を……?」


葵が眉をひそめる。


「ええ。」


「他国へ情報を流す。」


「重要な土地や利権を譲る。」


「自分達さえ儲かれば、国がどうなろうと構わない。」


「そんな者達が少なくなかった。」


田中は淡々と続ける。


「私は第三王子でした。」


「上には兄と姉が二人。」


「当然、王座を巡る争いもありました。」


「それはもう、泥沼でしたよ。」


「兄と姉、それぞれに派閥ができて。」


「貴族達も二つに分かれて争っていた。」


「その間にも国はどんどん弱っていく。」


「最悪だな……。」


葵が呟く。


「ええ。」


田中は苦笑した。


「前世の私からすると。」


「搾取するにしても、生かさず殺さずが基本なんですよ。」


「相手が死んでしまえば、もう搾り取れませんからね。」


「ですが、この国は完全に違った。」


「本当に、殺しにかかっていた。」


「当時の王――私の父が、何とか国を支えていました。」


「ですが、それにも限界があった。」


「このままでは、本当に国が滅びるところでした。」


田中は少しだけ表情を柔らかくする。


「そんな私にも。」


「転生してから、とても優しい両親ができました。」


「前世の私は、親から愛されるという感覚を知りませんでした。」


「ですが、今の両親は違った。」


「何をしても心配してくれる。」


「失敗しても最後には笑ってくれる。」


「ただ生きているだけで喜んでくれる。」


「そこで初めて。」


「親に愛されるというのは、こういうことなのかと思いました。」


田中は静かに笑う。


「だから。」


「両親のためにも、この国を何とかしようと思ったんです。」


「自分以外の誰かのために動こうと思ったのは、あれが初めてでした。」


葵達は黙って聞いている。


「幸い。」


「私には前世の経験がありました。」


「まず最初に、この国の裏側を掌握しました。」


「情報。」


「金。」


「人脈。」


「裏社会。」


「前世で培ったものは、こういう時には便利でした。」


「次に、兄と姉の力を少しずつ削いでいきました。」


「ですが、二人を敵に回すつもりはありませんでした。」


「互いの利害を合わせ。」


「協力した方が国のためになると理解させた。」


「今では、二人とも私の頼りになる味方です。」


田中は穏やかに笑う。


「その後は、他国に悟られないよう国力を回復させました。」


「農業。」


「商業。」


「軍備。」


「魔道具。」


「教育。」


「一つずつ立て直していった。」


「そして。」


「今度はこちらから他国へ介入しました。」


「もちろん、表立ってではありません。」


「情報と交渉。」


「必要なら、少しばかり裏から手を回す。」


「そして相手にも利益を与える。」


「そうやって関係を作っていった結果。」


「今では、どこの国も喜んで色々と協力してくれるようになりました。」


田中は淡々と語る。


まるで、それが当然のことだったかのように。


そして、ふと思い出したように口を開く。


「そういえば。」


「まだ今の名前を名乗っていませんでしたね。」


田中は姿勢を正し、葵達へ向き直る。


「私の今の名前は――。」


「アルベルト・グランディス。」


「この国の王です。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。