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赤毛の神官騎士レアニール ~その女、無自覚につき~  作者: ふぁるくらむ
第2章 赤毛の騎士、最果ての島へ
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2-0 第2章プロローグ・神殿警護隊副隊長室にて



「私は反対」


 神殿警護隊副隊長室のソファー、この部屋の主であるグレイヴ・ショール大佐の相向かいに女王然として座った女性は氷をも断ち切るような鋭さで言い切った。


「はーっ、カームが反対するとは思わなかった」


 グレイヴはその女性、E・カーム・ダリル少佐になんでだよとばかりに言う。

 E・カーム・ダリル少佐、神殿警護隊内の青隊を率いる隊きっての工作員だ。暗殺のエキスパートとして大陸中の国から恐れられている女性である。暗殺の腕だけではなくそれ以外の諜報工作においても神殿警護隊トップクラスの能力を持つ。大胆不敵な行動とサバサバとした性格。そんな彼女は24歳にして隊員からは一様に親しみと畏怖を込めて「姐さん」と呼ばれている。


 カームはそれをフンと鼻で笑うと素早く、だが優雅とも言える手つきでクレアが淹れたハーブティーのカップを手にする。肩で切り揃えた栗色の髪の毛が揺れ少し紫がかった青い瞳がグレイヴを見つめる。


「理由は2つ。1つ目は経験不足。1回だけ任務を手伝わせて役に立ったからって早計過ぎる。もう一つは名前が気に入らない」


 後ろが一番の理由だとばかりの語気だった。これは駄目だとばかりに首を振るグレイヴ。彼はレアニールを神殿警護隊へ引き抜く事の同意者を増やそうとカームに相談したのだが、彼女はレアニールの調査票をサッと読んだだけで反対と言い切った。


「名前が気に入らないって、いくらなんでもあんまりじゃないですか」


 グレイヴの後ろで聞いていたクレアが思わず口を挟む。


「私は不信心だからそういう名前は嫌いなの。それと直感よ。グレイヴも常々言ってなかったっけ?我々に重要なのは直感だって」


 カームの言葉にグレイヴは眉間に皺を寄せる。確かに自分がよく用いる言葉だった。


「とにかく私は反対。いい?確かにそう言ったからね」


 黙り込んだグレイヴを一瞥しカームは席を立つと止める間もなく退室して行った。


「姐さん、どうしたのだろ?」


 何時の間にかしっかり飲み干していたカームのカップを片付けながらクレアは首を傾げた。


「いつもだったらどんなにバカ話でも大佐の話を、例えポーズだけだったとしてもきちんと聞きません?それが調査書だって殆ど読んでなかったですよね・・・何が気に入らないのだろう」

「そこはかとなくバカにしていないか?ま、いいけれど。カームのやつ、あの日だったとか?」

「・・・大佐、そういう辺りがバカ話です。機嫌の悪い奥様に同じセリフを吐いてみますか?」


 デリカシーの欠片もないグレイヴの言葉にクレアはストンと表情を消すと目を細めて睨む。


「無理。絶対無理」





 神殿警護隊庁舎から中庭、大神殿との間に広がるそこに出たカームは木製のベンチに座る。周囲には誰もいない。普段の彼女を知る者からしたら信じられないくらい気弱な表情でカームはベンチの背もたれに身を委ねて空を、高くそびえる針葉樹たちの間に広がる蒼空を見上げた。


()()()()()・・・駄目だね、まだその名前で動揺するなんて。()()、不甲斐ないお姉ちゃんを許してね・・・」


 そうポツリと呟きカームは目を閉じた。






今回も読んで頂きありがとうございました。

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