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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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城への帰還

 ゼルシアへの来訪はあっさりとできて、俺はそこから宿を取った。戻ってきて城にある俺の痕跡を消す……のはいいのだが、問題はその方法である


「魔王の力……それを使うしかないか」


 その効果は、言わば自分の存在を消すこと。透明になる、というのも少し違う。言わば存在そのものを認識させなくなる、と言えばいいだろうか。

 この力を試してみると、誰も俺のことは視界に入らなくなった。なおかつ、人とぶつかった場合、相手はどうしたのかと戸惑った表情をする。見えない壁にでもぶつかった、という認識なのだろうか。


 城内に入る場合、扉の開閉などには注意しないといけないが……とりあえず、俺の存在が見つからずに行動することはできそうだった。問題は天霊の力を所持しているフィーナなんかはどう反応するのか。もしこの力が通用しなかったら……魔王の力であるため、相反する天霊の力を持つ彼女には効果がない可能性も十分ある。


「その場合は……まあ、なるようにしかならないか」


 そもそも、俺はゼルシアを離れたら人々の記憶からなくなるのだ。例え見つかったとしても、俺の痕跡を処理できていれば……ゼルシアの城で物取りが発生した、くらいに思われて終了だろう。

 ということで、夜行動を開始した。さすがに城門から正面突破とかはせず、魔法を使い城壁の上から忍び込んで部屋まで行くというルートを選んだ。


 城壁の上から城内へ通じる通路については、施錠していないことも多い。そもそも夜にだって見張りはいるため、鍵を掛けて入れなくするのはまずい……というわけで、見張りの兵に扉の開閉が見られないようにしつつ、中へ。そこから通路を伝い、俺は城内の廊下を歩む。

 可能な限り足音も立てないように……と、ここで夜中に巡回している兵士の姿を目に留める。近づいてきたらひとまず足を止め、相手が去るのをやり過ごす。遠くなったら移動を再開し、怪しまれないよう行動する。


 結構慎重になっていたためか、自分の部屋へ辿り着くまでに結構な時間を要した。で、ようやく目的地へ着いた時、俺は静かに扉を開けて、誰にも見咎められないよう、中へ入った。

 そこに……俺の私物が置かれていた。というか、魔物の襲撃があって、支度を済ませた直後の状態で残っていた。


「よし」


 俺はそそくさと荷物整理を始める。といってもゼルシアの城に入ってから色々と道具は整理したので、ザックの中身はずいぶんと軽い。

 とりあえず私物については全てザックへ詰め込み、俺の所持品は全て持ち出せる状態に。シーツなんかは使われた形跡があるけれど……まあ、この辺りは誰かが直してくれるだろう。


「それじゃあ、行くか」


 俺は一つ呟き、扉から出て行こうとして、


「ん、待てよ……扉を開けたら誰かいる、という可能性もあるな」


 いっそのこと、窓から出ようか。窓の鍵は開けっぱなしになるけど、まあ閉めておけば問題にはならないだろう。

 俺はそう考えて扉ではなく窓へ近寄った。そこにはバルコニーが存在し、空を眺めることができる。外には城壁が見えるため、お世辞にも景観が良いとは言えないのだが……、


「城壁まで魔法で行けばいいか」


 というわけで、俺は窓を開け、音が出ないよう閉めた後、魔法を使うべく魔力を高めた――その直後だった。

 突如、背後のドアが開いた。俺はぎょっとなり振り向く。その相手は、


「……フィーナ!?」


 小声で呟いた。そう、部屋に入ってきたのはフィーナだった。


「……あれ?」


 そこで、彼女は声を発した。次いで部屋の中を見回した。整理されていることに驚いたのだろうか。ということは、部屋を訪れたことがあるのか?

 なおかつ、どうやら俺の存在には気付いていない……窓で内外を隔てているためか、あるいは魔王の力が聖女である彼女にも機能しているためか……どちらにせよ、まだ見つかっていない。ただ、ここで魔法を使うとその魔力によって怪しまれる可能性もある。


 これはどうすべきなのか……フィーナが立ち去るまで待つべきか? それとも、窓から飛び降りて距離を置くか?

 上階にあるため、下は木々が植えられている中にはなのだが、とりあえず俺は怪我もないだろう。魔法を使うことにはさすがにリスクがあるし……そう思っている間に、フィーナは窓へ近寄った。


 鍵が開いていることも彼女は気付いた。どうすべきか――迷いつつ、やはり飛び降りてダッシュで逃げるしかないか……そんな結論に至った時、俺は彼女の表情に気付いた。

 その顔は、何かを探しているかのようだった。その手がかりを求めてこの部屋を訪れた……はずなのに、痕跡が全て消え失せた。


 やがて彼女は窓を開ける。俺はここでどうにか横へ逃れた。手すりを握りつつ、とにかく飛び降りようと体に力を入れ、そして、


「……そこに、いるんですか?」


 フィーナの声が、聞こえた。


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