第75話 大学にいがちなすぐにお持ち帰りされそうになる系女子とさし飲み 前
深夜近く。俺は自宅のパソコンでいろいろと情報を整理していた。だけどちっとも葉桐のやりたいことがわからない。なお最近知ったけどあいつの両親って基本海外にいるらしいんだよね。だから葉桐はよく五十嵐家でご飯を食べるらしい。マジでラブコメ主人公みたいなやつだわ。だけどそんなのどうでもいい。
「舞台、演技、遺跡…繋がりがまったくわからない。人文学か?だけどあいつがこの間、ガチ理系の柏キャンパスに出入りしていたらしいって情報もある。まったくわからん」
舞台、演劇に奴は強い関心を持っている。それを埋めるなら確かにミランと天決先生が必要なのはわからないでもない。だけどそれで何ができるのだ?すごい舞台でもやりたいの?儲かるかもしれないけど、それは葉桐の求めるビジネスなのか?やっぱりまだまだパズルのピースが足りない。だけど朗報もある。
「楪がいないと奴がやりたいことは進まないのではなかろうか?」
楪に匹敵する才能の持ち主はそうはいないだろう。それを見つけてくるのには時間がかかるはず。それに見つかる当てもたぶんないんだろう。むしろ長い時間をかけて見つけた人材が楪である方が自然というものだ。楪が自発的に葉桐に協力することはない。 だから状況は膠着している。ならばむしろ俺は俺のことに集中するべきだ。
「まいったよね。稼ぎすぎて市場に金を注いでいいのかわかんなくなってきた。これ以上の株式投資は危険な気がする…」
すでに株で作った資産は200臆を超えた。これ以上を株式で儲けるのは危険な気がする。儲かる銘柄がわかっていても、そこに俺が大金をベットすると、市場によくない影響が出てくるきがしてならないのだ。バタフライエフェクトというものを俺は恐れている。
「だが金はあればあるだけいい。金は選択肢を増やしてくれる。葉桐相手にはいくらでも選択肢があってしかるべきだから…。ホントめんどくさい。あいつを強酸性のお風呂にいれてあげたいよぅ」
マジでここまでくると潰すよりも殺す方が簡単なあたり葉桐という男は侮りがたい。間男になればこんなにも強くなれるのか!NTRパワァ!
「くっそぅふざけていられない。…あの新宿のおじいちゃんと緑色の目の女の子から攻めてみるか?」
新宿で目撃した葉桐と会っていた謎のおじいさんの正体は特定済みだ。引退した元国会議員。元々は文部科学省官僚であり、博士号も持っているインテリさんだ。大学・研究の行政にはいまだに強い影響力のあるフィクサーだ。
「とりあえずそのうちお家訪問させていただくとして、もう一方。緑色の瞳の大和撫子」
前の世界ではあの緑色の瞳の女から名刺を貰っているのだが、当時の俺はうつだし、葉桐にかかわるすべてが憎くて嫌だったから、あの女の子の名前を憶えていない。前の世界では弁護士だった。今はよくわからない。探偵使ってもいいけど、葉桐に嗅ぎまわっていることがバレるのは避けたい。
「居場所はわかってるし、客のフリでもするか?ん?あれ?電話?」
スマホがブーブーうるさく鳴いていた。表示されているのは楪の名前だった。俺はすぐに電話に出た。
「はいもしもし。どうしたん?」
『カナタさーん!助けてくださーい!』
電話の向こうから楪の鳴き声が響いている。
「わかった!助ける!何があった!?」
『学校で野球のデータ処理してたら、終電を目の前で逃しました!うわーん!帰れません!ううぇええええええええん!学校もう真っ暗ですごく怖いです!助けてください!』
「お、おう…。あー。田吉寮は?ミランがいるはずだけど?」
『あのどうていおんな!今日は深夜の生放送番組に出るから朝帰りですぅ!!びぇえええええええんん!』
あれれ。これかわいそうすぎるわ。元々怖がりな楪だ。迎えに行ってあげよう。
「今から車で迎えに行くから、キャンパスの正門前にいな。すぐ行く」
「ありがとうございます!待ってます!ぐす。すん。ううっ」
俺はすぐに部屋を出て車で、駒場キャンパスに向かった。正門前で涙目な楪を発見して、すぐに車の中に入れてあげた。
「ありがとうございます!怖かったです!なんか男の人たちが「どうしたん?話聞こうか?」とか判を押したように同じような言葉で声をかけて!頑張って無視して!でも怖くて泣いちゃって!びええええええん!」
「そうか。よく頑張ったね。えらいよ」
マジでこの子放っておいたらあかんな。守ってあげなきゃ(使命感)。
「もう今日はうちに泊まりな。明日は俺のうちから学校行けばいいからさ」
「ありがとうございます!…あれ?これって…うそ!やだ!きゃー!」
ずっと涙目だったのに、突然黄色い声を楪が出し始めた。体を抱きかかえて体をくねらせている。
「とりあえずお泊りに必要なもの買いに行こうか」
「…は、はい!…そのカナタさんのサイズはわかんないんで、あっちの方のあれの買い物はおまかせします!!」
何のサイズのことかなー?俺よくわかんなーい!てへぺろ。
そして買い物を済ませて、俺は部屋に楪を連れてきた。
「お邪魔します!…これが男の人の部屋なんですね。初めて入りました…ラブホよりも狭いんですね…」
「比較対象がおかしい!!まあくつろいでよ」
そして楪は俺の部屋を興味ありげに見まわしている。そして壁をこんこんと叩いたり、床を叩いてみたり、スイッチ類をじーっと見てたりしている。
「なにやってんの?」
「いえ。ほら。反社の人ってすぐに逃げられるように部屋を改造するって聞いてたんで。どこかに隠し通路とかあるのかなって」
「そんなのあってたまるかよ!俺は反社じゃないんです!」
そして楪はちょこんと床に座って。
「シャワーはお先にお願いしますね…」
頬を赤く染めて、やべぇ発言を口にしている。
「いやもう俺風呂に入ってるんだよね」
「ええ?!じゃあ、シャワーお借りします。その…できれば明かりは消しておいてほしいです…あの今日の下着はあんまり可愛くないんで…タオルだけ巻いて出るんで…その…優しくしてください…」
「ねーねー!この部屋に来た女の子には伝統としてジャージを着てもらうことになってるんだー!あの綾城Xさんも着た伝統のコスチュームだよ!」
ゲロ臭い鯖女を除いて、この部屋に来た女子が必ず着用しているのだから、もはや伝統だといってもいいと思う。
「ええ?!そんな伝統があるんですか!?」
なんかお目目をキラキラさせて楪が食いついてきた。
「そうそう!俺の昔の学校指定のジャージなんだ!女の子が着るとちょっとぶかぶかで萌え袖なんだよ!」
「すごい!そんな素敵なジャージがあるんですね!素敵です!早く着たいです!シャワー浴びてきます!」
ありがとうジャージくん。君のおかげで俺の貞操は守られたよ…。
シャワーを浴びてジャージに着替えた楪からホカホカと蒸気が出ていた。髪の毛が濡れていて頬に少し張り付いている。その様がどことなくセクシーに見えた。
「どうですかー。似合いますかー!」
ニコニコ笑みの楪は楽し気にくるりとその場で回る。
「うんうん。かわいいかわいい。似合ってる」
実際可愛い。というかなんだろう。自分の古着を女の子に着せるって…なんか…いいね!よくない何かに目覚めそうだ。だけどちょっと気になったことがあった。
「楪。こっちにおいで」
俺は楪を手招きする。楪は恥ずかし気に俺の前にちょこんと座った。
「ちょっと後ろ向いて」
「は、はい!失礼します!」
すると楪は後ろを向いて、俺の方にお尻を突き出すように床に伏せた。形のいいお尻とパンツの線がジャージに浮き出ていて。
「あの…どっちかっていうと…わたしはお尻よりも胸のほうが…」
ぶっちゃけ滾ります!だけどだめです!綾城菌はダメー!
「いや。楪のお尻は綺麗でかわいい…じゃなくて!!そうじゃなくてね!こうするの」
俺は楪を起き上がらせて、綺麗な黒髪に手を添える。そしてお風呂上がりで、まだ濡れている髪の毛をドライヤーを当てて乾かす。
「だめだよ。女の子は無造作にお風呂から出てきちゃ。ちゃんと髪の毛は丁寧に乾かさないとね」
前の世界で五十嵐の髪の毛をたまにドライヤーで乾かさせられたので、女の子の髪の毛のケアは知っている。
「綺麗な黒い髪だよね。だから大事にしないと」
「ありがとうございます。ふふふ。なんかすごく気持ちいいです。暖かくて、とっても優しいです…」
楪は安らかな顔で俺のドライヤーに身を任せている。楽しんでくれているなら、俺もうれしい。そして髪の毛は乾いた。長くてつややかな黒髪にいつもと少し違う雰囲気、大人の女のような色香を感じた。さてこのままだと、ぶっちゃけ我慢できずに、一線を越えかねない気がする。なので、俺は冷蔵庫から瓶ビールを二本持ってきて、蓋を開ける。
「たまにとりあえずビールからってどうかな?」
「うふふ。いいですね」
「「かんぱーい!」」
そして楪との宅の飲みが始まった。




