第25話 デートで全額出すか?割り勘か?そもそもそれで悩める時点でリア充!
日曜日の江の島の駅前はなかなかに盛況だった。家族連れやカップルなんかが島に向かって楽し気に歩いていく。俺は駅前にて女性陣が到着するのを待っていた。果たして時間通りに来るのか?と思っていたら、普通に10分前くらいにやってきた。
「あれ?もしかして待たせちゃった?」
ミランとその後ろに、大きめのサングラスをかけた二人の女子。綾城と楪なのは間違いないないがなぜサングラス?
「いや。大して待ってないけど」
その時だ。
「ぴーぴー!!はい!常盤選手イエローカード!!」
綾城が口笛を鳴らしながら俺の傍に寄ってきた。いつものような地雷系ファッションだが、今日はハーフパンツに黒のハイソックス、上はジャケットにリボンタイでなんかボーイッシュな感じだ。
「なに?選手って何?どういうこと?お前審判なの?」
「本番のデートだったらここは女子を気遣って、『今来たところだよ』って気遣うところではなくて?」
「んなの漫画の世界じゃない?」
「何言ってるの?ああいうベタを好む女は沢山いるわよ。意外だと思うかもしれないけどね」
だそうだ。もしかしてこれあれですかねぇ?今日は後の二人に常に監視されて審査されながらデートするのか!なんて恐ろしい催しなんだろう。楪なんか手元にレポート用紙を抱えて何かをしきりにメモってる。あれかな?行動を常にチェックしてるのかな?
「常盤くん!今日はがんばろうね!」
ミランが少し前かがみになって両手でガッツポーズをとった。かわいい。あと今日着ているシャツは胸元が空き気味で胸の谷間が見えていた。すこしドキッとしちゃう。
「綾城教授!今のポーズは?!」
やたらと渋くて真剣な声で楪が隣の綾城に問いかける。
「ええ、今のはあざとくかつさり気無く胸の谷間をのぞかせることで男をドキッとさせてしまう魅惑のポーズの一つよ。これは得点高いわね。3ポイントあげるわ。今のところ美魁選手が一歩リードってところかしらね!」
だそうだ。解説までついてきてくれるらしい。
「え?ボクそんなつもりはなかったんだけど?!」
ミランは両手で胸を抑えて、恥ずかし気に俯く。
「綾城教授!?この反応は?!」
「ええ!まさかあのテクを天然で繰り出していただなんて!!まさかこの子!童貞女くせにギフテッドだとでも言うの?!すえ恐ろしいわね…2ポイント追加よ」
綾城教授的にはすごいらしい。でも確かに恥ずかしがる感じがぐっときますね!だけど俺もドギマギし続けると、やだー童貞っぽくてキモーいって綾城教授(笑)に煽られかねない。俺もデートらしく一本キメに行くぜ!!
「はは!ミラン、今日の服かわいいね!期待以上だよ!あはは!」
「え?!そ、そうかな…!うん…ボクも結構気に入ってるんだ…ふふふ」
今日のミランの服装は上はパーカー。その下に胸の谷間が開いたシャツ。このシャツわりとぴっちりしていて綺麗な胸の形がくっきりと浮かび上がり、クビレのなだらかなカーブもよくわかって男心を煽ってくる。そして下はデニムのミニにあえての素足。大学生だからこそ許されるセクシー素敵スタイルである。
「今の常盤選手の服褒めはなかなか高得点ではないでしょうか?!どうでしょう!綾城教授!」
「ええ、服を選んだ人のセンスが見事に光っているわね。素材の良さをシンプルに輝かせるセクシースタイルを提案したAさんに100ポイントの得点ね!」
「「デートしている人以外にポイント入った?!」」
俺とミランは息ぴったりにツッコミを入れてしまった。
「つーか俺にはポイント入らないんですか?」
「女子を褒めるのにわざわざポイント入れるわけないでしょ。できて当たり前のことは評価の対象外よ!」
「きームカつく!この屁理屈なんか反論しづらいのがすごくむかつくんですけど!!」
綾城教授の屁理屈マジで強い。この女が弁護士とかになったらマジで超強そう。
「じゃあそろそろ行こうか!ボク上京してから水族館来るの初めてだから楽しみだよ!あはは!」
ミランは楽し気に笑みを浮かべている。そして俺たちは水族館に向かった。
水族館デートは王道である。ラブコメ漫画、ラノベ、ギャルゲー。デートの場面に困ったら水族館デートにしろってきっと昔の偉い人も言ってそうなくらいデートの定番だ。そして話は全然変わるが、デートで何気に困ることがある。それは。
「じゃあチケット買ってくるから、待ってて」
「そう言えばチケットっていくら?」
ミランはポケットから男物っぽい財布を取りだす。
「いやいいよ。俺が全部出すから。デートなんだし!出させてくれ!あはは!」
デートで男女どっちが金出すの問題。これは一概には答えが出ない。少なくとも言えるのは男が全部出しておけば安牌じゃない?ってことだけ。なにせ俺には経験値が足りないからだ。ちなみに前の世界の俺は、付き合う前、俺が全額出そうとして、嫁がガチで嫌がりきっちり割り勘。なにせあの女、最初のラブホ代すら半額きっちり出してきた。なおポンコツ化してからはカップル共通の財布を作って、そこにお互いが金をプールしていく方式になった。なお嫁の方が金を多く出していたことに結婚後に気がつき、俺ってもしかして世間的には逆タマ系ヒモカレシだった?って地味に凹んだ。幸い今回のデートは全額出しても余裕なくらい今の俺には金がある。じつは最近未来知識で株式売買を試してみたらわりと勝てたのだ。いますぐに車やら服やらが欲しかったので短期のトレードに絞った。さすがにすべての株式の価格を覚えているわけじゃないけど、重要な経済ニュースは覚えていたから、勝ちの方が多かった。今日着てる服だって実はブランド物である。成金万歳!
「綾城教授。デートにおける男女の奢り問題は未だに決着がついておりません。つい先日も割り勘こそ至高派がインパクトファクターの高い論文を出して世の注目を攫っております。どう思われますか?」
「あたしは古典的な仲良しカップル割り勘理論には部分的に納得のいっていないところがあるの。どうせそういう連中でさえ、ラブホ代は男が持って当然と主張するものだもの。理論に一貫性がない。故にあたしは今回の常盤選手の男子が全部持つ理論に基づいた行動に一定の評価を与えようと思うわ。常盤選手1ポイント」
やっと点数が入った!なんかすごくうれしい。
「ところで綾城教授!伊角さんが財布を出した仕草をどう評価しますか?!」
なんか楪が変なところに注目してるんだけど…?これは?!
「ええ、すばらしいアクションね!財布を出して女も出すよアピールすることで常盤選手の男気アクションを見事に演出しつつ、自分も謙虚で健気であることをアピールしてみせたわ!美魁選手10ポイント!」
十倍以上も差がついてるんだけど!?これは審判とミランとの間に癒着が疑われるねぇ!
「ボクそんなつもりないんだけど!?常盤くん!ボクそんなつもりないからね!」
「わかってる。うん解ってるから…あはは!あはははは!」
地味に悔しんだけど!なのでチケットを買ってくる時に、綾城と楪の分も買ってきて二人にわたした。
「お前らの分。気にしなくていいぞ。最近の俺はちょっとリッチだからな!」
「わーい!わたし男の人にこうやって奢ってもらうの初めてです!このチケットの半券!一生大事にしますね!!」
楪がチケットを胸にぎゅっと抱いてる。すごくかわいい。
「ありがとう。素敵よそういう気遣い。7ポイント上げる。あと楪はかわいいから1万ポイントあげちゃう」
ポイント基準がよくわからない。取り合えず現状楪が圧倒的にリードしていることだけはわかった。でも君、デートの相手じゃないよね?まあ、楽しいからいいか。
水族館はべただけどやっぱり楽しいところだ。普段は酒のつまみにしかならない連中が綺麗に泳いでいるのを見るのはいいものだ。
「この子かわいいね!見てよ!すごいおバカな感じだ!あはは!」
ミランは本気で楽しんでくれているようだ。あと後ろをついてくる楪と綾城も俺らの事を審査するのをやめて普通に水槽見てきゃっきゃしてた。
「俺さ、エビ好きなんだよね」
大きなエビが悠々と歩いている水槽の前で俺はそう言った。
「ふふ、食べるのが?」
ミランもエビを楽しげに見てる。水族館ってわりとすぐにグルメの話になりがちな気がする。
「そっちも当然好きだけど、エビとかカニとかなんかこう海にいる甲殻類ってかっこよくない?大王グソクムシとか見ててマジで飽きないよ」
「あーわかるかも!ボク小学生の頃は男子とよく虫捕まえたりしてたよ!だからかな今でも虫は結構平気なんだよね。寮にゴキブリ出るとボクが退治するんだ!おかげで女子にめっちゃモテモテ!あはは!」
けっこうデートって身構えると、普段みたいに会話が盛り上がってくれないんじゃないかと不安なところがあった。だけど俺たちは普通の男女らしくお喋りできてた。お互いに知らないことを知っていく。それがきっとデートの醍醐味なんじゃないかな?そう思ったのだ。
「綾城さん!あのイカさんおいしそうですね!私イカ焼き大好きなんですよ!!」
「あら?楪は知らないのね?イカって男子のごにょごにょの匂いらしいわよ」
「うそ?!そうなんですか?!カナタさんもイカ臭いってことなんですか!?」
「そうなのよ。だから常盤からもイカの匂いがするのよ」
はいはい綾城菌綾城菌!!イカ臭いは童貞の枕詞であって、デートしているリア充な今の俺には相応しくないのである!だから俺はちょっと早足に綾城菌に感染しないように先の水槽へと向かったのであった。




