第197話 pista
リオの街は本当に広い。だからヒントが全然出てこないのは必然だったわけで。
「ギャングに接触しましょう」
「綾城さん……マジですかぁ」
綾城の目は本気だった。ただ住民に聞きこんでも駄目だったんだからもっと深い闇に潜らないといけないのも事実なわけで。
「なあ物騒なこと言うのやめてくれないか?俺警官なんだけど?」
ヴァンデルレイがもうビビりまくってる。
「でも伝手なんてなくないか?真柴はある?」
「葉桐のネットワークでもこの国の裏社会はカバーしてない」
「だよね。どうすんのさ綾城?」
俺がそういうと綾城はファベーラの方に入っていく。俺たちはその後ろをついていく。そしてライフル持ってタバコ吸ってたギャングらしき奴らに綾城は話しかけた。
「情報が欲しいわ」
「はぁ?クスリじゃなくてか?」
ギャングたちが首を傾げている。綾城は戸惑うギャングたちにエディレウザとヒカルドの写真を見せる。
「この二人を探してるわ。知らない?知ってる人を紹介してくれるのでもいいわ。100ドルあげる」
真正面からわいろである。まあ裏社会の住人なら金には転ぶだろう。と思ったら。ギャングたちの目つきが変わった。
「動くな!!」
ギャングたちが俺らにライフルを向けてくる。
「ひぃ!?」
ヴァンデルレイがその場で跪いて両手を挙げた。なんか地雷踏んだぞぉ。なのに綾城さん目がキラキラしてる。
「その反応は知ってるってことね!教えなさいな!!」
綾城ライフル向けられてるのに逆に問い返してるよ。ブラジル来てからまじでパンクだわ。ロックスターかな?
「お前らミリシャだろ?!ヒカルドは渡さねぇ!あいつらは俺らで落とし前をつけるんだよ!!」
「あ?ヒカルド?へぇ。ああ、あなたたちがもしかして誘拐したのかしら?反吐が出るわね」
そう言うと綾城はすぐに銃を抜いてギャングたちのライフルを撃って破壊して一番近くにいた奴の口の中に銃口を入れる。
「dez.nove.oito.sete.seis...」
ポルトガル語でカウントダウンし始める。綾城の目は殺気に満ちてる。
「やめろやめろやめろ!!言うから撃つな!!」
「早く言いなさい。あたしは気が短いのよ」
「ヒカルドは今俺たちギャングの暫定同盟contra o Reinoが拉致してる!エディレウザが帰ってきたんだ!報復のための交渉材料だ!!」
なんかとんでもないことになってるぞぉ。ヒカルドが誘拐されてるとは……。そりゃ探しても見つからないわけだわ。
「いますぐに案内しなさい」
綾城はさらに脅迫を続けるけど、ギャングは首を振った。
「知らねぇ。ヒカルドは幹部たちの直轄案件だ。俺たち下っ端には情報が降りてこない。ただ近々俺たちはミリシャの王相手に反抗する。その準備だけしてるんだ……それしか知らない。殺さないでくれ……」
「なるほど。ふーん。わかったわ」
そう言うと綾城は大人しく銃をギャングの口から抜いた。そして100ドル札をばら撒いて言う。
「この金持って街から出なさい。言うこと聞かないなら殺すわ」
ギャングたちは金を拾って頷き俺たちの前から去っていった。
「まずいわね。ヒカルドが誘拐されてるなんてね。だからエディレウザも姿を見せないのね。しかも大規模抗争が近いみたいね。やれやれね」
「……ただの誘拐じゃないから多分生きてはいるだろうけど……早く助けないとまずいな。真柴。頼みがあるんだけど」
俺は真柴にお願いをする。
「何でも言って」
「この間貰ったテープとさ、できればまともな銃くれない。俺がちょっくら暴れて取り戻してくる」
「あたしも行く」
綾城がはっきりとした声でそう言った。
「だめ。お前の手を汚させる気はないよ」
「じゃああなたの手が汚れるのは構わないって言うの?」
屁理屈じゃないんだよね。真っ当な問いだと思う。だけど俺は棚に上げてるのでそういうのは。
「俺はいいの男の子だから」
「頼りがいがあって素敵ね。でも待ってるだけの女は嫌なの。あたしはそういう卑怯な女じゃないのは知ってるでしょ?」
「だけどねぇ」
俺は当然断るのだが、真柴が手を挙げてきた。
「折衷案がある。ただ葉桐の持ってる技術使うことになるからそれでもいいならだけど」
葉桐の技術。使いたくはないなとは思うけど。綾城が納得しないのもめんどくさいのでとりあえず聞いてみる。
「どんな技術なの?」
「葉桐の所有している会社の一つで警察用装備の開発をしてるの。アメリカと日本の警察に納品予定の非殺傷弾頭があるの。栗花落と紗永の二人が作った特殊化学素材の新銃弾」
「それって撃っても人死なないの?」
「うん。テスト済み。超痛いらしいけど死なないわ。ただ9mmパラベラム弾しかないの。まあ警察向けならこれで十分だからね」
「まじかよ。すげぇな……それならあれかな。綾城が撃っても人は死なないのね」
「ええ。綾城さんが人殺しにならずに済むと思う」
「じゃあそれで。綾城。一緒にギャング狩り行こうぜ!」
俺は両手の親指をぐっと立てる。葉桐の発明なのが癪だけど使えるもんは使わせてもらおう。
「ありがとう。友恵。あたし、あなたのこと好きになっちゃったわ」
綾城がぎゅっと真柴に抱き着く。真柴がなんか照れてる。かわいい。
「いやいや。お前らギャング狩りって何言ってるの?え?この街にどんだけギャングいると思ってるの?たった三人で戦うの?」
「うん?まあなんとかなるっしょ。あと三人じゃない。お前もドライバーとして来るんだぞ。警察官なんだからこの街とギャングには詳しいだろ。引き続き俺たちのエスコート頼むぜ!」
「いやぁあああああああああああああああああああああ?!Meu Deus,me ajuda...」
「ヴァンデルレイ。Vai dar certo.Deus não abandona.」
「この街に神はいないんだよ!!うぁあああああああああああああああああ!!!いやだぁあああああああああああああ!!!」
さてここからはアクティブに活動するか。やっと手がかりを得たんだ。踏ん張って頑張るぞっと。




