表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4 混ざる世界と交わらないキミたち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/197

第101話 量産型サークルクラッシャー

 いつものメンツとランチしていた時のことだ。例によってどこか浮かない顔をした楪がボソッと口を開いた。


「みなさん。サークルの姫ってどうやったらしばき倒せるんでしょうか?」


「いきなりどうしたの?何があったか言ってごらんなさいな」


 俺も綾城もミランも怪訝そうな目を楪に向けていたと思う。楪はどこか自嘲気味に薄笑いを浮かべてぽつぽつと語り始めた。


「今日一限にあった理学部の共通講義でボッチ授業してたら、隣に座った女子に、『あら?数学のお姫様は今日はボッチなのwwwいつも一緒の参天狼のバカたちはどこ行ったの?www』って煽られたんですよね。だからわたしは正直に『参天狼ならみんな今日はカノジョと一緒に学校さぼって自宅でいちゃついてると思います』って言ったんですよ」


 参天狼どもは学校さぼって彼女といちゃらぶ一日エッチですか…。別に羨ましくなんてないんだからね!つーか大学さぼってエッチする奴はみんな留年すればいいのに。


「そうしたら、『ウケる!周りに侍らせてる男に彼女作られるとかwww姫様辞めたら?www』って言われたんですよ。別にわたしは姫になりたいわけじゃないです。でもその女子はさらに煽ってくるんですよ。『私だったらキープ君に彼女作らせずに私に貢がせ三昧させちゃうのにwww数学科に姫不在なら物理学科の私が奪ってもいいでしょwww』って言ってきて。なんでしょうね。なんかすごく腹が立つんですよね。なんか女として負けたような感じを生まれて初めて感じました」


 楪の声には悔しさと怒りとが若干混じっているように思えた。なんだろう。すごくくだらないことではあるけど、今までの楪の対人関係から見ると情緒が成長しているようにも思える。


「その女子の周りには物理学科の男子たちが沢山いました。ノートを代わりに取ったり、次の教室行くのにもエスコートされてたり、バックを持ってもらったり。なんでしょうね。すごくちやほやされてましたよ。本当ああいう女子って嫌ですね。理ケジョがみんなビッチみたいに思われたらたまらないんですよ!」


 ぷりぷりと怒ってる顔が申し訳ないけど可愛く思える。楪は他人に壁を作っていた。だけど俺たちに愚痴りたくなるくらいには大学内に対人関係ができ始めている。それは喜ばしいことだと思った。


「なるほどねぇ。ボクも楪ちゃんの気持ちわかるよ。男の子に尽くさせるよりも、尽くす方がずっと愉しいのに、その女子はわかってないよね。うんうん」


 ミランの同調はなんかニュアンスがずれてる気がする。そして綾城はいかにも面白そうなこと見つけた悪人みたいな笑顔を浮かべていた。


「そう。まさしくその子はサークルの姫ってやつなのね。でも忘れたの?あなたはそこにいる乱れている風紀委員こと反社マン常盤のセカンドなのよ。女としての格はあなたの方が上なのよ!」


「はっ?!そうだった!!わたしはセカンドでした!!ああ!なんであの時それを忘れてたんでしょう!?悔しい!あの時それを言っていれば!!」

 

 楪は頭を抱えて唸っている。その嘆きの理由が全くわからない。


「反社じゃねーよ。てかどんな理屈だよ。サークルの姫より反社のセカンドの方が上ってなんでやねん」


「「「え?」」」


 女子ーズ全員が俺の発言に首を傾げている。俺はその反応の戸惑ってしまった。


「うん?え?なに?俺変なこと言った?」


「あー。なんでしょうね。男女の違いってやつを今あたしはすごく実感してるわ」


「うんうんボクもボーイッシュだとは言われるけど、やっぱりなんだかんだと女の子であって男の子じゃないなって思った」


 綾城とミランはしみじみと男女の違いってやつに感心してるみたいだけど、俺にはサークルの姫と反社のセカンドの上下関係がわからない。


「カナタさん。女の子は雑魚モテ自慢するよりも最強反社にセカンドでも溺愛される方がずっとずっと幸せな罪な生き物なんですよ。業が深いですよね」


 なんかしみじみと真理を語る様に言われても、なんだろうまったく実感がわかない。こいつらが言ってるのって男でいえば一途で優しい女の子よりも美人だけど浮気するような女と付き合うようなもんじゃないの?それ前の世界の俺じゃん!なんか久方ぶりに心にダメージが入った。


「そうね。百聞は一見に如かずとも言うわよね。楪。たしか数学科と物理学科って交流会があるんじゃなかったかしら?」


「あ、はい。ありますよ。数物連携飲みっていう伝統行事があります。数学と物理は互いに近い関係にある学問なので」


「それに常盤を連れて行きなさい。そしてラブコメテンプレの如く偽のセカンドを演じてマウントをかけてきなさいな。最高のざまぁが見られるわよ」


 意味がわからん!俺を連れて行ってラブコメテンプレ偽彼氏っていうならわかるけど、セカンドってなんだよ。意味がわかんねーよ。だけど楪は頬を染めていやんいやんともじもじしている。


「そ、それは!?なんてドキドキ青春イベントなんでしょう!!素敵です!カナタさん!お願いします!わたしを立派なセカンドさんにしてください!」


「ええぇ…ううん?ま、まあいいよ。それで気が晴れるなら構わんけど…あれぇ?」


 ラブコメテンプレっぽい青春イベントな感じだけど何かがおかしい。だけど俺は楪のお願いを断れなかったのであった。

 






 そして数物連携飲み会の日はすぐにやってきた。夜の渋谷駅前が飲み会の集合場所だった。授業が終わって楪と一緒に来た俺は集まっていた数学科と物理学科の学生たちの雰囲気にちょっとのけぞってしまった。なんていうんだろう。変人の匂いがすごく濃い!


「次元を追加していくことによりおそらくは重力の伝播をうまく説明できるはず」「この世界は離散的であり、抽象的な数学の課題は人間原理の内側にしかありえない」「空間も時間もすべては一つになり、すべてが証明さえも意味のない領域へ至る」「時空の検閲官なんて裸のブラックホールの前にシュレーディンガーの猫をしているに過ぎない…」


 この人たちがいったい何を言っているのか訳が分からないんだけど?おかしいな俺も理系のはずなんだけど、彼らの言うことがかけらも理解できない。

 

「こいつらはいったい何を言っているんだ?」


「カナタさん。これが真の理系のありのままの姿なんですよ…あはは…」


 楪は肩をすくめていた。こういう光景に慣れっこらしい。俺なんかは異文化過ぎて酒の前にすでに酔いそうである。そんな時である。楪が俺の袖を引っ張った。


「あの子です!私にマウントしてきた女子は!!」


 楪の視線の先に一人の女子とその子の周りでデレデレしている男たちがいる。女子は笑うたびに男の肩を撫でたり、ウルウルした瞳で見つめてみたりしている。すごくサークルの姫仕草って感じ。


「しかしサークルの姫っていうから、理系の女子が少ない中で勘違いしちゃった系女子なのかと思ったけど」


「ええ、普通に美人なんですよ!なんかすごくムカつきます!すごくチェストしたい!!」


 噂の女子は美人さんだった。長い赤みがかった茶髪をツインテールにしあざと可愛い。服装は誰でも可愛いっていうようなザ・量産型女子スタイルにオタクウケ抜群のミニスカニーソックスを合わせていて、サークルクラッシュ臭がメッチャする。取り巻き男子に貢がせまくって、それでバンドマンのカレシにメッチャ貢いでそうな感じ。


「まあチェストの意味はよくわかんないけど。サークルクラッシュー臭はお前からもするんだよなぁ…」


「え?そうですか?メガネっこなわたしにはサークルなんてクラッシュできませんよ?」


 今日の楪のコーディネイトは綾城先生が超気合を入れた。ニット素材のワンピース。そう童貞のみんなが大好きな背中が大きく開いているやつな!巨乳でスタイル抜群の楪はその童貞を殺す服最終形態を難なく着こなしていた。そしてスカートの下は濃い色のパンストである。脚が艶めかしすぎる!綾城先生はいつもいい仕事をしていくから困る。このニットワンピ黒タイツの一番エロいところは胸元だろう。あえて谷間は見せず、だけどおっぱいの形とくびれが強調されるようになっているワンピのサイズ感が本当にエチチである。俺がそばにいて守ってあげなきゃ(下心)。そして参加者が全員集まったので、俺たちは飲み会の会場である居酒屋に向かったのである。





 飲み会がはじまって最初のうちはみんな真面目な話題ばかりを話していた。曰く宇宙がどうこう、abc予想がなんちゃら、常人には理解しがたい議論のような何かをみんながしていた。楪もその議論に参加していた。


「いいですか?πのπ乗の解法に用いた方程式の一部を別ち難く絡まった次元の振動解析に用いることで、観測者が見ている宇宙を鏡合わせに複製しそれを脱構築することで粒であることと波であることを分離し新たなる宇宙論の模型が創れるはずだとわたしは言っているんですよ!」


 楪は芋焼酎を瓶で飲みながら熱弁している。周りの学生たちはそれに熱心に耳を傾けていた。


「さすが数学科の四天王…物理学にさえ革新をもたらすというのか…」「宇宙論にも造詣が深いなんて数学科の姫は流石だ!」「おっぱい」「次元振動解析に脱構築をもたらすなんて今日は時代に残る理論を知ってしまったすごすぎる!」


 全然何言ってるのかわかんねー!楪はどんどんヒートアップして立ち上がり自身の理論をすさまじい早口でまくしたて始めた。俺は楪の言っていることが全く分からなかった。だからひどく孤独な思いを感じてた。そんな時だ。俺の背中をつんつんと突く感触がした。振り向くとそこに噂の量産型サークルクラッシャー女子がいたのである。


「ねぇ。私あなたのことをはじめて見たんだけど、数学科の人じゃないよね?私は三鼓(みつづみ)舞々弥(むむみ)。よろしくね」


 可愛らしい笑みを浮かべて俺のことをウルウルした瞳で上目づかいで見詰めてきている。なんだろう。正統派に可愛いって思ってしまった。実に大学によくいる男のことを掌で転がすみんなのアイドルって感じだ!久方ぶりの大学生らしい大学生女子に出会った俺はどこかウキウキとしてくる自分がいることを自覚した。


「ああ、よろしくね。俺は工学部建築学科。一年の常盤奏久だ」


「へぇ建築なんだ!すごーい!かっこいいね!私建築学科か物理学科かで実は迷って物理学科選んだんだよね。でも建築学科にしとけばよかったかなぁ。そしたら常盤くんと同じ授業を受けられたのにね。残念」


 あざとーい!いやだ!なにこの子!?あざとい!すごく新鮮な気持ちになってきた。陰キャにも優しい量産型女子!大いにありだと思います!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ