100話 考察会議は踊る!~包丁ユニークと種族転生編~
さて、【釣竿剣士】のユニーククエストはだいたいわかった。
それなら次は俺の番だな。
俺の受けたユニーククエストは【底無し沼の棘亀を誘導せよ】だ。
あの大穴にはルル様っていう【深淵顕現権限】絡みのレイドボスがいるんだけど、そのレイドボスが棘亀攻略を手助けしてくれるらしい。
……まあ、あの大穴周辺まで棘亀を連れていかないとダメみたいだけど。
「……なるほど、あそこが【深淵奈落】でしたか。
誰も入れなかったので分かりませんでしたが、狂人と言われる【包丁戦士】さんの特異な行動なら入るための条件を満たしていてもおかしくないですね」
ちょっ、【検証班長】からの期待値が高いのか低いのかよく分からない評価を受けてしまったな。
ネタ的には美味しいんだろけど……
「それにしても、あそこまで連れていくのは骨が折れそうですね……
かなり距離がありますよ?」
「ちなみに、誘導方法は決めているのかな?
決まっていないのなら、それを質問内容にするというのも手ですよ」
そういう質問もありなのか。
だけど、それに関しては問題ない。
【釣竿剣士】とやっていることがあるからな。
「そうですね、私と【包丁戦士】さんで棘亀を長時間地上に拘束するための餌を用意しています。
どれくらい効力があるか分かりませんが、魚を食べて生活しているようですから、それを餌に誘導できれば問題ないです」
「案外、レイドボス攻略の手立ては揃いつつあるということですね。
この質問権をこのユニーククエストが失敗したときのために取っておくというのもありですが……
ここでボクからの提案が有るんですけど、どうかな?」
【検証班長】がイタズラを思いついた子供のような表情をして、人差し指を立てながらそう切り出してきた。
珍しい表情だ。
「提案……ですか?
とりあえず聞くだけ聞かせてください」
怪訝そうな表情を一瞬浮かべた【釣竿剣士】だったが、何か考えがあるような【検証班長】を見て一応話を聞いてみることにしたようだ。
「新緑都市アネイブルでのレイドボス攻略に二人ともいたから分かると思いますが、ジェーの第2形態があったじゃないですか。
あの時、初見殺しと行動パターンの変化で苦戦して、負け寸前まで追い込まれたのは苦い思い出として残っているはずです。
原因は、性質、パターンの変化に対して一度様子見をしないといけなかったからだろうね。
だからこそ、ここは戦闘中にヒントを使うというのはどうだろうか?
もし使う必要がなければ、他のレイドボス攻略やグランドクエスト進行にヒントを回せますし、悪い話じゃないと思いますよ!」
たしかに、ここまで倒すための準備が整っているのなら未知の情報に対して、あえて取っておくっていうのは悪くないな。
元々このヒント無しで挑もうとしてたわけだし、無理して使う必要はないか。
「……今分からない情報は、どの攻撃が通りやすいかくらいですからね。
それも検証を続けてもらえれば解決しそうですし、私はそれでもいいですよ。
通りやすい攻撃を検証班で見つけられたら、この権利は温存してもらってもいいです」
それなら……一応取っておくか。
流石はブレインの【検証班長】だ。
俺なら無理してでも何かしらの情報を手にいれようとしただろうからな。
何かあった時のために取っておくという我慢強いことは出来なかったに違いない。
「そう決まったのなら、これでこの話は終わりにしておきましょうか。
面白い話を持ってきてくれたお礼です、せっかくですし何か聞きたい情報とかありますか?
検証班が持っている範囲の情報ならお教えしますが」
じゃあ気になっていたあれを聞いてみるか。
種族転生について聞かせてほしい。
【ペグ忍者】が検証班でこの情報を扱ってると聞いてるし、教えてくれるよな?
俺の半分脅しのような問いかけに、頭をわしゃわしゃと掻きながら困ったら表情を浮かべなから口を開いた。
「ちゃっかり高額な情報を得ようとする【包丁戦士】さんのその狡い感じ、ボクは好きですよ。
特別に贔屓してもらってますし、情報なら教えますよ。
ただ、【包丁戦士】さんにはあまり意味のない情報になるかもしれません」
まあ、教えてくれるならいいだろう。
それで、どんな情報を持っているんだ?
「【ペグ忍者】が種族転生したのは【猫獣人】です。
この種族に転生するためには、試練を達成しないといけません」
その情報は【菜刀天子】とかルル様とかからも聞いてるな。
「転生したときの効果は純粋な身体能力の向上……特に敏捷方面が大幅に伸びます。
そして、デフォルトで急加速能力がつきます。
これは二人とも直接戦って実感したと思いますが、転生前のボクたちの種族とは比べ物にならないスペックになります。
さらに、【獣王無尽】という奥義スキルが手に入りますね。
これはまだ検証が足りていませんが、一定時間身体能力を上げるオーラを纏うことができるものです」
戦闘中に考えていたことがだいたい合ってたな。
だが、奥義スキルという聞きなれない言葉も混じってたぞ?
「試練を受けられる場所は、岩山エリアの地下空洞にある集落の猫獣人の長のところです。
条件を満たして話しかけると、試練について話されるのでそれを達成すればいいです」
「岩山エリアに地下空洞なんてあったんですね!?
上に登ってレイドボスに挑むことしかしたことなかったので知りませんでした」
俺も【釣竿剣士】に同じく。
あそこ探索できる場所とかあったんだな?
気づかなかったんだが?
「それも無理はないですね。
何故なら、新緑都市アネイブルレイドボス攻略終了後に、唐突に横道が出来てましたからね……
レイドボス討伐がフラグになっていたみたいです。
東の冒険者ギルドや、【深淵奈落】も同様にレイドボス攻略がフラグが建つものだったようですし、攻略が進めば進むほど解禁される要素は増えそうです」
なるほど、だからこそ【菜刀天子】はやけに俺たちが攻略を進めることに拘っていたのかもしれないな。
「試練の内容ですが、全エリア……東西南北だけですが……を死に戻り無しで1日で回りきること」
しょっぱなからかなりきつい条件来たな。
最短距離で回ったらワンチャンあるのか?
……山間部エリア経由みたいな、実は秘密の抜け道とかあったりするかもしれないけど。
これをクリアするにはかなりの忍耐力と、身体能力が必要だと思う。
そう考えると、【ペグ忍者】なら行けそうだな。
「二つ目は、フレンドを上限まで登録していること」
はい、無理~!
俺この条件がある時点で【猫獣人】にはなれないわ。
プレイヤーとフレンドになれないし……
「だから言ったじゃないですか。
ぼっちの【包丁戦士】さんには意味のない情報になると」
ぼぼぼ、ぼっちじゃないし!
プレイヤーじゃなくてNPCのフレンド(?)なら何人かいるから!
「そういうことにしてあげましょう【検証班長】さん……」
「そうですね……」
なんか同情された。
素直に悲しいぞ……
「最後の条件は獣度を20まで上げることです」
ん??
「「獣度って何?」ですか?」
なんか新ワードが出てきたぞ!?
わざわざ私が話さなかった情報まで伝わってしまうとは。
これはもう手遅れかもしれませんね……
【Bottom Down-Online Now loading……】
とうとう100突破です!
ここまで応援していただきありがとうございます!
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