迷子③あるいは自己紹介
「よかったな。アイロ。」
そう、涙が話しかけて来たところでオレは我に帰り、部屋の中を見回した。部屋には二つベッドがあったが両方使われた形跡はない。なのに、放置されているわけではなくホコリひとつない。あたりを見回し、鎧(胸当てとアーマーだけだが)を外し、隣の部屋へ移動するとさらなる驚きが俺を待っていた。
「どうぞ、座ってください。」
そう言い、彼女が示した椅子の前にはしっかりとした食事が並んでいた。パリッとしてそうな黒パン。野菜のコクがしっかりと煮詰められているであろうスープ。新鮮な鶏肉を使って作ったであろう、焼き鳥。全てが美味しそうだった。そこまで考えたところで俺は思い出し、彼女に言った。
「あの、オレ、精霊連れているんですけど大丈夫っすか?」
精霊も食事が必要なのだ。泊めてもらう身なのに…とは思うが、相棒に食事を与えないわけにもいかない。涙は普段は他人には見えない様になっているので、姿を現しぺこりと頭を下げた。
「あら、あなたも精霊持ちでしたか。大丈夫ですよ。今、もう一食とって来ますね。」
そう言うと、彼女はもう一食分テーブルに並べた。テーブルの上には四人分の食事が並べられていて、少女は誰か親と住んでいるのだろうか?と思ってその人が現れるのを待っていたら、突如少女は
「流羽、出て来てもいいよ!」
なんて天井を見つめながら言った。すると、ポワっとそこらへんが光ったと思うと青い髪をなびかせながら、もう一人、少女が現れた。「あ、食べましょうか?」
そう彼女が言い、食事が始まった。うむ。すごく美味しい。感動で涙が出て来そうだ。
「お口に会いますか?」
彼女は微笑みながら聞いてきた。
「え、ああ、ものすごく美味しい」
オレと涙が口を合わせて答えると彼女は嬉しそうに笑った。ところで、彼女の名前はなんだろう?どうやら疑問が顔に出ていたらしい。
「ふふ、よかったね。あ、君の名は?あたしはエウロ。エウロ・デトワールです。16歳だよ。この娘、流羽はあたしの精霊です。流羽、自己紹介をしてください。」
ふむ、彼女はエウロ・デトワールと言う名前の様だ。彼女に続き、彼女の精霊が自己紹介をする。
「私は流羽でう、あ、です。属性は水、よろしくお願いしますね?」
一回噛んで、赤面しながら微笑みかけてくれた。隣をちらりと見てみると、涙は顔こそ赤くないものの、耳は真っ赤だ。ふうん。面白い。
「オレは、アイロ・シュブリマリソン。16だ。同い年だな。今は目的のない旅をしている。こいつは涙だ。オレの精霊ってやつだ。おい、ぼーっとしてないで自己紹介しろよ。」
そう言って、相変わらずぼーっとしている涙のやつを突く。どうやらあの精霊の流羽に見惚れていたらしい。そうすると、涙はハッとして自己紹介を始めた。
「あ、うん。えーと、俺は涙だ。属性は火。よろしく頼む。」
漫画だったらキラキラしてそうな笑みで微笑んでいやがる。なんてやつだ。こう言う奴が天然女子キラーだって呼ばれるんだろう。多分。知らないが。
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