表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/50

第49章 未知の道への第一歩

画面を開くと、真っ先に確認したのは販売リストだった。

「まだ閲覧されていない」

システム画面には灰色のバーが表示されたまま。

待つのは辛い。

だがこの商品は…特定の誰かのためだけに作られたものではない。


「毎日価格チェックするわ。競合商品が出てないか確認するから」

メアリーはノートを持って隅へ移動した。


「客はまずショーウィンドウより運でやってくるものさ。さて、誰が現れるか」

ベアトリクスは店のガラスを拭いていた。


私は何も言わず、

ただインターフェースを閉じて作業台に向かう。

手が空くと…ますますあの靴のことが気になってくる。

「匠の静かな一歩…」

心の中でその名を繰り返す。


突然、画面に小さな警告が表示された。

【新着通知:出品商品が閲覧されました】

「閲覧された…」

私は立ち上がる。

空中で拳をきゅっと握りしめる。


「誰?」

すぐに詳細をクリックした。

【匿名NPC:地図屋ナルド】

「地図屋の…ナルド?」


「地図屋NPCは静寂を重視する傾向がある。彼らは常に移動しているから」

メアリーが振り向いて説明する。


「もし彼が購入したら、間違いなく他の冒険者にも勧めるわ!」

ベアトリクスが興奮する。


画面のデータが更新され始めた。

【閲覧中…】【比較中…】【購入検討中】

私は目を細める。

これはゲーム内のプロセスだが、実際の店舗で客が商品を手に取る様子と変わらない。


数分どころか、秒針さえも遅くなったように感じる。

その時、二つ目の通知が届いた。

【おめでとうございます!「匠の静かな一歩」がNPC「地図屋ナルド」によって購入されました】


「売れた…」

その瞬間、誰も言葉を発しなかった。


「やったぞ!」

ベアトリクスが両手を上げる。


「個人製作。自由販売。初挑戦で成功」

メアリーは即座にノートに記録した。


私はただうつむく。

この喜びは…単なるポイントや報酬以上のものだ。


画面にさらに通知が表示される。

【レビューを受信しました】

「レビュー?こんなに早く?」

タップする。


【「フィールドで何時間歩いても、足音で気づかれたことは一度もない。疲れも感じない。今後も使い続けたい」】


ナルドのコメントは短いが深みがあった。もしかするとNPCにとって時間の流れは早いのかもしれない。


「本当に役立ったんだ…」

胸に安堵が広がる。


これは注文品ではない。

義務でもない。

それでも誰かを満足させた。

私にとってこれは…

静かながらも力強い始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ