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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
呪縛を解き放つ蒼き槍
118/120

救援

「ぶっ刺せ!」


「うおぉぉぉぉ!」


 エクスヴァレッドは自由落下の勢いを乗せ、赤熱化した刃をギガースの背中に突き刺す。  


「グギャァァァァ!」


 激しい痛みを感じているだろうギガースは耳を塞ぎたくなる程の叫び声を上げる。熱を帯びた剣を突き刺さっていることもあり、焼けるほど熱いのだろう。体を冷まさんと海中に潜り込む。そして、エクスヴァレッドを振り落さんと海中で加速し、激しく左右に揺れ動く。

 それに伴い、コックピット内が激しく揺れる。あまりの激しさに座席や周囲の計器に頭をぶつけてしまう。脳内を直接揺さぶられているかのようで視点が合わなくなり、腹の中から物が込み上げてくる。

 しかし、折角掴んだチャンスだ。ここでトドメを刺せなければ次はない。たかが、気持ち悪さ如きで弱音を吐いて、棒に振るわけにいかない。必死に耐えようと操縦桿を固く握り締める。

 エクスヴァレッドも全く同じ気持ちだ。同様に炎神剣を固く握り締め、ギガースに必死に食らいつく。

 赤熱化した刃はゆっくりとだがギガースの肉体を溶解させ、深く突き刺さっていく。 


「コアの位置を把握しないと! 炎神剣からの放熱から分析して……!」


 片手で操縦桿を握り締めながらタッチパネルを操作。ヴァレッドのセンサーをサーマルビジョンに切り替える。鮮明なものから緑がかった単色へと色合いが限定される。

 熱を帯びている炎神剣を中心からゆっくりと赤色が広がっている。コアはまさに心臓だ。活動している以上、熱を持っているはず。さらに内部に熱を送ればその影響を受けるはず。

 だが、ギガースは俺達を振り解く為。そして、急上昇した体温を冷却する為、勢い良く海中へと潜航し始める。


「ヴァレッド!! 剣を絶対に離すなよ!!」


「了解している!!」


 これは賭けだ。全て、予測での行動。外した場合、超至近距離でのカウンターをくらうことになる。

 だが、分の悪い賭けに頼らなくてはギガースを倒せない。援護が期待できない以上、俺達だけで対処しなくちゃいけない。

 これは戦いだ。全てが上手くいくとは思っていない。それ相応の覚悟は元々できている。


「見えた!! 勇気!」


「ならば!!」


 流線型の中心から少し頭側に炎神剣よりも熱を持つ部分を発見する。

 それと同時に操縦桿を勢い良く引く。このまま、剣を動かしコアを斬る。

 だが、その瞬間だ。強烈な力がヴァレッドに襲いかかる。まるで正面から吹いてきた突風が押し出すようでもあったし、背後から思いきり引っ張られているようだ。


「な、なんだ!? 何が起きた!?」


 新たな攻撃かと焦りながら、周囲の状況を確認する。だが、ヴァレッドに直接何かされているということはなかった。ならば、今何が起きているのかとグチャグチャに絡まった頭で必死に考える。


「勇気! 海流だ! ギガースは自ら渦を作ったようだ!」


「渦!?」


「あぁ! 私達を振り解くため、円を描くように動いていたようだ! そして、勢いだけでなく海の流れをも利用して!」


 ヴァレッドの冷静な分析を聞き、絶句する。

 ギガースはただ動いていたわけではなかった。海中という環境を最大限活用していたのだ。そして、俺達はそれに気づけなかった。


「ダメだ! 勢いが……強すぎる!」


 流れは確実にギガースにある。

 強烈な海流に引っ張られたエクスヴァレッドは耐え切れず、剣を手放してしまう。その瞬間、

高速で泳ぐギガースと一気に距離が離れる。

 渦流は鋼鉄の巨体のエクスヴァレッドですら飲み込み、赤子にように扱う。コックピット内も激しく揺れ動き、平衡感覚が荒れ狂う。


「クソっ! ヴァレッド!! 何とかしてこの渦流から離れ……なんだっ!!」


 渦流から逃れようと足掻こうとした瞬間だ。

 正面から小さな物体が目にも止まらない速度で迫ってきているのを確認した。


「ミサイル……いや、魚雷か!」


 恐らくギガースから放たれたであろう魚雷が流れに乗って襲いかかる。防御する時間もなく、胴体に直撃を受けてしまう。


「くっ! 凄まじい……威力だ!」


 魚雷の威力も然ることながら衝撃も海流によって勢いが増している。

 爆発と物理的な衝撃を受け、エクスヴァレッドはバランスを崩し、その場で激しく回転する。バランスを取ろうと大きく手足を振る。必死に立て直そうとする俺達を嘲笑うかのように再びミサイルが襲いかかる。


「勇気!! どうする!?」


「わかってる!! だけど……!!」


 俺達は思考をフル回転させ、打開策を講じる。しかし、何一つ思い浮かばない。今、俺達が積極的に切れる手札はない。ギガースの何かしらのミス、油断に付け入るくらいしかない。

 だが、そんな不確定要素を当てにはできない。ましてや、この環境はギガースの独壇場。そもそもそんなものに付け入ることができるのかすらわからない。

 全身から血の気が引く。喉元にナイフを突き立てられているような酷く最悪な気分だ。


「それ……でも!!」


 俺は操縦桿を固く握り締める。

 絶対に諦めない。

 まだ、俺達は負けていない。死んでもいない。海の藻屑になるその瞬間まで、俺達は戦い続ける。


「ギガァァァァ!!」


 近くからギガースの叫び声が聞こえる。ここで勝負を決めるつもりなのだろう。気合に満ちている。そんな感情が読み取れる。

 覚悟を決めた瞬間にはギガースがその大きな口を開けながら俺達に突進した来た。流れに乗って増した突進。真正面から受けるしかなかった。


「勇気!! これが最後のチャンスだ!!」


「わかってる!! ここでこいつを受け止める!! 後は……そこで!!」


 エクスヴァレッドは大きく両腕を広げ、ギガースを受け止めようと構える。正直、受け止める可能性は低い。それでも足掻かない理由にはならない。

 大ピンチが迫る中、激しくなる心拍数を落ち着かせるため深呼吸をする。

 そして、ギガースを迎え撃たんと操縦桿を前に倒そうとした瞬間だ。


「シーサイドランチャー!!」


「ギギャウ!?」


 人の叫びと共に小型のミサイルがギガースに直撃する。完全に想定外の一撃。ギガースも体制を崩し、急遽離脱を行う。

 ギガースが自ら撃った魚雷に当たった?

 そんなわけはない。こんな状況でどうしょうもないミスを犯す程知能が低いように思わない。

 ギガースへの的確な攻撃。

 レーダーに映るのは味方を示す緑の光。

 何より聞き覚えのある少女の声。

 そして、答え合わせをするかのように海流を貫き、目の前に現れる青色に潜水艦。


「き、来てくれたのか!?」


「えぇ!! 来たわよ! この麗花がね!」

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