波乱の予感
短めです。
「同席、よろしいですか。」
新聞から目を上げて星は相手を見つめた。他にも席は空いている。しかし、否定するまでもなかろう。
「どうぞ」
「ありがとうございます。星博士。」
響がにっこりと微笑む。美しい微笑みだ。
「君は、どうしてここが分かったのだ。」新聞から目をあげずに星は響に尋ねた。
「簡単なことです。星博士、あなたは、確かに日常で、同じ行動をとらないように慎重に振舞ってらした。パターン化された行動は、ないかに思ったのですが・・・・・・。ここには、必ずいらっしゃると思っていました。」
「なるほど・・・・・・。」
星は、ため息をついた。
「確かに、パターン化された行動など、とっていなかったと思ったが、気がつかないこともあるもんだな。しかし、外では、偽の視覚情報を提供していたはずだが。」
「はい。ですからかなり時間がかかりました。私は、全ての町に備えてあるカメラとリンクして、普段のパターンと正しくない行動をとっている対象を探しました。そして、そのような対象の中であなたが過去に取って来たパターンを重ね合わせたのです。それでも、時間が膨大にかかりました。私たちにとっての膨大な時間ですから、他の機関であったら、多分探り当てることすらできなかったに相違ありません。」
「なるほど・・・・・。」
星は、今度ははっきりと相手を見た。
「君は人間ではないな。制作者は・・・・・・・・恐らく、坂口か」
「はい、その通りです。坂口博士から色々言付かっています。」
「どうやら、坂口は・・・・・」
目の前の響をためつすがめつして続けた。
「芸術的なロボットを作成することに成功したようだ。だが…..」
「スートラには及ばない、ですか。分かっています。制作者の坂口博士にも言われました。」
「そうか。奴もそれぐらいはわきまえているようだな。」
星は鼻を鳴らした。
「ええ、ですから、私も今からスートラに会うことを心待ちにしております」
「心待ちか…..」
「心もないくせにとおっしゃりたいのですね。もちろん私には、心をしるすべはありません。しかし、それが何だか推測することが出来ます。膨大なデータと、どういう状況で人間がどのような反応すればよいかを観察していれば、真似することだけはたやすいものです。」
「だが・・・・・単なる真似にすぎない。鸚鵡の口真似と同じだ。」
「ええ」
にっこりと響は笑って続けた。
「しかし、人間の間でも、実際の感情とは違った反応をしなくてはならない時や、感情を偽って表すこと等は常ですわ。ですから、私が装ったところでそれが本当かどうかは、あまり問題にならないのではないでしょうか。」
「成る程、確かに君は芸術品のようだ。しかし、こんな議論を続けるためにここに来たのではあるまい。」
「ええ・・・・・。」
響はいいにくそうに口ごもった。おや、何だか、このロボットは確かに感情を持ったように話すじゃないか、と星は内心思った。
「スートラの居場所を教えて頂きたいんです」
「成る程」
「私は、現在起こっている状況から鑑みて、あなたがスートラを発見したと考えています」
「続けたまえ」
「そして、何等かの事情で、彼女は再び停滞フィールドに入ったか、又は、何らかの勢力によって連れ去られたか破壊されたかと私は考えます。」
「面白い。それで?」
「私は、恐らく、星博士、あなたが、スートラを再び停滞フィールドにいれたのではないかと思っています。」
「何のために」
響は星の問いに対して首を振った。いや、問いですらなかったのかもしれないが・・・・。
「そこまでは残念ながら分かりません。しかし、あなたがこうして人目を避けながらも無傷であるということは、まだ、彼女は他の勢力に発見されていないということだと思います。そしてそれは、大変我々にとって幸運なことです。しかし、あなたにとっては大変危険なことであると我々は考えます。」
「どうしてだね」
「それはあなたが一番ご存知のはず。あなたは、いえ、あなたも坂口博士も、あの場に居合わせたのですから。彼らが手段を選ばないということはあなたが一番ご存じのはずでは。」
「なるほど・・・・・。」
星は、面白くなさそうににやりと笑って見せた。酷薄な笑みであった。
これからもよろしくお願いいたします。




