仏法僧と書くんです
長くお休みを頂いてますたねv
すびばせぬ~~!
ぐぐぐ、とジョージと押し問答を繰り広げていると「やめよ」という声が聞こえたが視界一杯に広がるジョージの顔で声のした方を見ることができない。
しかしジョージはその声を聞くと夏希から身を起こした。
「ちぇー」
ジョージが可愛くない声を出しながら舌うちをしたと思ったら嫌々ながらどいた。ちょ、可愛くないと考えながらも夏希も身体を起こして、何度か聞いたことのあるその声に向き直って笑いかける。
「フランシス」
「あ、いや、その」
きっと国王であるフランシスは謝ったことが余りないのだろう。あからさまに気まずそうな顔をしているがアベルに肩を押されて謝ろうとしてくれるのだろう。まあ、視線は在らぬ方向に向いていて誠意の欠片も感じさせないが。
しかし自分は悪くないと考えずに謝ろうとしてくれる姿勢が嬉しい。
「フランシス、私が悪かったよ。なんか、ごめん」
フランシスが目を見開くが夏希は笑顔を見せながら腰を曲げる。フランシスの言葉に腹立ったものの、それに向き合わずに逃げて皆に迷惑かけたのは私だ。それにフランシスは私を嫌いで罵倒したわけでは無いのだろう、きっと上手い言い方が見つからなかっただけ。
「皆も迷惑かけて、ごめんね」
「いや、俺は別に」
「僕は心配したんだからね」
そっぽを向いて恥ずかしげに頬を掻くアベルとは違い、ぷんぷん、と効果音をつけても良いような感じでジョージが頬を膨らましながら怒っているけれど全然怖くない。むしろ天使様の初・怒った顔を見られて役得だ。
むふふ、と笑っていると今まで黙っていたフィナが近寄り、頭を撫でてきた。それは、まるで犬や猫にやるような可愛がり方だったので夏希の短い髪がぼっさぼさになった。
「やめんかー!!」
「夏希は偉いわね。自分から謝れるなんて。それに比べて、どっかのクソ王は謝り方の一つさえ知らないなんて」
ちらりとフランシスを一瞥すると、フランシスはびくりと肩を竦ませた。その姿が何だか可哀そうになり、ついつい援護してしまった。
「フィナさん、そんなことないよ。それに悪いのは私だし」
「そんなことないわよ、ね、フランシス」
何だか威圧感を真上から感じたが、そこはスルーだ。人間、スルースキルを身につけないと大変なことになっちまうぜ。
「・・悪かった」
「ううん、こっちこそ。今は、もう気にしてないし」
「・・ああ」
蚊の無くような声が聞こえたと思うとフランシスが真っ赤になって、そっぽを向いていた。小娘に謝ることが余程屈辱だったのか、そう思いながらも一応謝ってくれたフランシスに今までのことを水に流してやろうと思った矢先だった。
感極まった顔でにこやかにフランシスが告げた。
「お前は直ぐ鳴くコノハズクのようだな」
コノハズクとはフクロウ科であり「ブッポーソー」と鳴く声の主である。よく茂った森林にすみ、夜、ゴミムシ、オサムシ、バッタ、コガネムシなどの昆虫類をとって食べる。鳴き声は地方でも異なっていることがあり「コホッコホッ」や「ゲッゲッゲ」等と聞こえることもあるらしい。
「んな、鳴き方しねえよ! 虫なんか食わねえわ。ほんと失礼すぎる、死ね!」
「なっ・・最上級の褒め方だ」
「んな褒め方あるかい! 頭腐ってんじゃねえの!?」
「な・・・」
そんな暴言を受けたことの無いだろうフランシスは今度こそ顔から血の気を無くし、今にも倒れそうになった。
いやいや、軟弱すぎでしょう。いくら夏希が女の身でありながら、こんな汚い言葉を発すると言っても夏希の世界では、よくする会話程度でこんな事でへこたれていては身がもたない。
「フランシスなんて大っ嫌い」
せっかく今までの事を忘れようとしていたのに今ので全部パーだ。
夏希は憤慨しながらフランシスに向かって舌を出した。