絆は壊れない
それからジョージは朝から晩まで夏希に付き添うようになった。
最初は抵抗があったものの、ジョージは夏希が嫌がることをしないで、しかも夏希の気持ちを汲み取るので、夏希はだんだんと触るようになった。
夏希が唯一触ることのできる動物のため撫でたりしたのだが、それにより更にジョージがくっつく。
朝、夏希が起きるとベッドに一緒にいてお早うのチューを鼻にする。
朝食の時は夏希の肩に器用に座って頬ずりをして甘える。そしてご飯を強請るため、夏希が野菜を与えていた。
昼は城をお散歩する夏希の後をくっつき、夜は一緒に寝る。
ジョージが人間だったならば確実に甘い恋人同士であっただろう。
実際、使用人達も噂していた。噂というよりも面と向かって本人達に言っていたが。
「まあ、夏希様とジョージは朝も昼も夜もご一緒なのですね」
「はあ・・」
「仲睦まじいですね」
「へえ・・」
自分はそんなつもりはないのだが、そうだろうか。
生まれてこの方、動物と触れたことがなかったのだ。だから付き合い方が分からない。
実は駄目なのだろうか。でも兎は寂しいと死ぬ動物って言うし。
うーむ、本人に聞いてみるのが一番だろうか。
「ジョージ、私達は離れた方がいいのだろうか」
それを聞くとジョージはピクリと止まり、なんとも瞳をうるうるさせて見上げるのだ。
「僕が嫌いになった?僕が嫌なの?」
そんな言葉が聞こえてくるようだ。
うっ、自分が血も涙も無い悪役になった気分だ。
そして、ひしと夏希の服を引っ張る。
「ごめんよ、ジョージ。もう二度とそんなことは言わない」
ぎゅっとしがみついて離さないで絆を確かめ合う。
僕達の絆は誰にも離すことができない永遠のものとなるんだ。
「・・何してんの?」
そんな2人に無粋な奴が。
だが私達の絆はそんな奴には負けない。
「おーい、夏希。聞いてるぅ?」
それでも離れない2人を見かねて空気が読めない男が切り裂いた。
ジョージを夏希から取り上げた。
「フーッ!!」
ジョージが威嚇の声を上げるが本人は素知らぬ顔。
そのままポイとまるでそこにあったゴミを捨てるようにジョージを放った。
「ちょ、危なっ」
そんな夏希の心配は余所にジョージはくるりと降り立つ。
運動神経は抜群だ。体操選手としてオリンピックで金メダルがとれそうだ。
「おぉー」
「君さぁ、たかが生まれたての子兎が俺に立てつく気?」
ジョージの俊敏な動きに感嘆する夏希に対し、アベルは冷ややかな声でジョージに話す。
「しかも夏希は君のこと何とも思ってないからさ」
「ちょ、アベル。そんな言い方しなくても」
いくら好きな人でもそんなことを言われるのは辛いだろう。
未だにジョージがアベルを好きだと勘違いしている夏希は不安気に2人を見る。
「君さぁ、いくら俺の夏希の婚約者だからって調子乗らないでくれるかな」
「は?誰が誰の婚約者だって?つうか、私はお前のものでないわ!」
いつ夏希は婚約者になったのか、全く覚えがない。
それなのに本人が知らぬ間に秘密文章でも提出されていたのだろうか。
そして日本は秘密裏の中、他国から攻撃されるのね、じゃなくて今は自分の話だ。