25話「干渉/勧誘」
「ジェノス様、いいのですか。彼女たちのサポートを……」
「いや、大丈夫さ……もう既にこの戦いに決着はついている」
ゆっくりと教会の地下通路ーーー円型の階段を降りていくジェノス共に、目が光の反射で見えない顔で見上げるジェルは、不安を口にこぼした。
上には激しい戦闘の音が聞こえる。だが、ジェノスは勝利を確信したように笑みを浮かべて、その感情を声に乗せていた。
「……わかりました。これからのご予定は……『あの地』へ……」
「そうさ。ジェル、今日は多忙ですまない。でも、大義のため……そしてこの戦争を止めないためにも……動かねばならんのだよ」
ジェルは片手に持つ手帳を開いて、そのスケジュールを指でたどっていけば、そこに書かれた文字に汗を一つ垂らす。しかし、ジェノスは止まることはない。
ジェノスとジェルは階段を降り終われば、岩の壁に囲まれた小さな小部屋に到着する。そこにあるのはゴミや、木箱、そして布などが散乱していた。
ジェノスは笑みを浮かべると、前に手を向けてーーー
「・¥:<÷$:→÷*」
呪文を唱えた瞬間だ。目の前が輝きに満ちた。ジェルはメガネの中の目をしばらく閉じ、光がゆっくりと開けていけば、その目を開けていく。
目を開けば、そこは草原ーーーだが、青空と共に、一面が開けていた。広場のようになっているこの地は、真ん中に一つ丘のようなものが草原にできていて、どうも不気味な場である。
「……到着した。さて……歓迎はいかに」
ジェノスが一つ、不安もなく慣れているように言葉を発せば、丘の上から人影が見えてくる。
「……あなたは、呼ばれていないわ。ジェノス」
「冷たい事を言わずに少しは歓迎してくれたまえ」
丘の上に立つのは、少女だ。ワンピースを着ている、小柄で生きていくにも細い体、そして白い髪の少女なのだ。
「えぇ、私が迎え入れたのなら歓迎するわ。でもあなたは違う。無理やり干渉しているだけ……」
「……あぁ、正解さ。時間も少ないんだ……端的に話そうーーー魔界戦争を、続けようじゃないか」
ジェノスはその少女に不敵な笑みで手を広げ、まるで勧誘するかのように声を高く言えば、少女はあからさまな嫌な顔をする。
ジェルもまた少し引くように一歩下がれば、「おいおい」とジェノスが言う始末だ。
「ーーーそんなこと、させない。絶対に」
「おや?私が思ったよりも早いじゃないか」
「はぁ……なんで出てきたの?私は待ってろと言ったのに」
そんなコントをしている間に、少女の後ろから聞こえてきたのは少女よりも歳を重ねた声だ。現れたのは、金髪の女性。同じくワンピースを着ていて、それはどこかで見たことのある、ハーフ顔の美貌。
「もちろん私の方があなたより一歩先。あなたは私に追いつくことはない」
「でも君の計画は実に信頼という脆いもの。それはあまりにも無謀だろ?
ーーー有村望」
「えぇ、でもそれを確信に変えれば問題ないもの。私は全てを背負うわけじゃないから、支え合いなの……この戦争は」
そう、見た事のある金髪の女性は……有村望だったのだ。
この地、ゼロポイントの新たな干渉により、『希望』の道もまた、アルと同じように前進し始めるのだった。
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「おい……これって結界じゃねぇかよ!俺らここでおわりってことか!?」
「待て。まだ試してないことが山ほどある。それに、学園も結界には穴があった。ここにもきっとなにかある」
アルの目の前には、この先へ進むのを阻む『見えない壁』が存在していた。これはアルが学園の敷地に入ろうとした時もそうで、あの時は抜け穴がわかりやすくあったが、今回はさらに厳重そうだ。
「なにかって言っても!力でこじ開けるのができるんでしょうか……?確かに、権限者なら不可能では無いのでしょうけど……」
不安そうに綴るエルダを前に、アルはゆっくり添えた手に力を込めてみる。
ーーー触って、手に『無』の空間を生成してみれば、届きそうな感覚がアルに伝わる。ぐっと奥に押し込むのではなく、横へ開く感覚がする。
「多分、力を込めれば無理矢理届く……いや、こじ開けられると言った方が正しい。ここは学園と違って無数の世界だ。一つ一つの壁は薄い」
「つまり……アルさんの力なら無理矢理こじあけられると?」
「やってみるしかない。下がれ」
明梨の言葉に、曖昧な答えしか出せない。だが、目の前にあるのならやるだけだ。
アルは目を細めて、指先に力を込めた。その指先は黒く丸い球体を生成し、それを見た四人はゆっくりとアルから離れていく。
これで開けば、話はとても早くなる。アルビアを殺し、この四人の願いを叶える。秘宝を回収し、全ては丸く収まってーーー
「『無』の権限、大義、無空裁波動」
空間が歪み、亀裂を生成し始める。そのアルの指先から放たれた黒い衝撃は、一気に目の前の結界を破ろうとした。
目の前の亀裂が輝き始め、そこから風がアル達を抜けていきながら、その輝きにアルは片目を瞑る。
「くぅっ!離れろ!前のように吸い込まれてもおかしくは無い!」
「まじかよって!うああ!」
全員が警戒するように後ろに下がっていけば、突然の声にアルははっと後ろを向く。
後ろからの情けない声にまさかと思えば、小佑は空中に浮いたと思えば、裂け目がゆっくりと開き始めたのだ。
「アル!これどうなってんだよ!なんで俺だけ!」
「小佑さん!落ち着いてください!どうにか裂け目を封じる方法は……」
明梨が必死に頭を回しているが、それではもう間に合いそうにない。裂け目はさらに開いて、とうとうこちらを吸引するように再び風を送り始めた。
「エルダ!何かない!?」
「開くのはできますけど……閉じるのはわかりませんよ!!」
「下がってろ!僕が一緒に小佑と裂け目に入る!絶対に入ってくるな!」
「うああああああ!!」
アルが警告を叫んだ瞬間だ。小佑は大きく体を一回転しながら裂け目へと一気に入って行ってしまった。それを止める間もなく、皆が空気に抵抗するので手一杯な状況だ。
「神無月無唯斗……!後は頼みます!こちらも色々模索してみるので!」
その明梨の声を聞いた瞬間に一瞬後ろを振り向けば、再び前を向いてアルもまた、裂け目へと突入する。
輝きがアルを包む中、視界が開くまでアルは手を前に、輝きを切り開いていく。
これは、世界のどこなのか、わからないままアルは意識を保ちつつ突き進むのだった。
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すいません、重要な部分が抜けていたので今回は補填的な一話です。




