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【幕間(5)】




 重要なのは、王がどう判断するか。


「……あいわかった。親愛な同胞の命、一つでも復讐を誓うには十分であろう。次へ」


「陛下! 冷静であられますか!? 所詮は亜人ですぞ!?」


 同じ黒ひげの文官だった。あいつは騒ぎ立てる役割なのだろうか。まぁいい、あとで殺そう。そう思って、髪の蛇を数本抜いた。


「……朕は亜人ではないが、勇者は亜人で勇者にとっては家族じゃ。家族が殺されれば、朕でも憎むと思うぞ?」


「それは……」


「家族のような存在が100人殺されてみよ? それで何の恨みもありませんと言っているようなやつなど、信用できるか? ……いや、そもそも人間か?」


 謁見の間には、なんとなくだが納得するような雰囲気が流れた。


「無論、亜人に限らず国民は我が家族じゃ。村の殺された者のため、朕も怒ろう」


 いいように使われてしまった気もする。だが僕の評価としても、まぁ及第点をあげてもいいと思った。想像力のある君主なら、一時なら仕えてやってもいい。その想像力の責任はもちろん求めるが。


 本当に怒り、首謀者を追及するポーズまでしたなら満点を差し上げたかった。


「……儂はこれが、気になりますな。人徳の《義》と《誠》」


 また禿頭の白髭を生やした老人が言う。軍服を着た体は厚く、背筋もしゃんと伸びている。が、右手に濡れたハンカチを持っていた。


 王がテイ・ホと名を呼んだ。最前列にいる上、王に名前を覚えられるということは、軍の名のある者なのだろう。


「美徳は、今までの勇者は一つしか持ち合わせておりませなんだ。それでも、彼らは立派な勇者にございます。二つ持ち合わせているのであれば、人間性に関しては信用してもよいのではないかと」


 示した能力からか、軍部の雰囲気は他に比べて好意的なように思えた。命懸けの戦いをしている彼らにとっては、国の大きな戦力が増えるのは歓迎なのだろう。


「……ふむ。しかし《義》と《誠》とは何だ? 我が国二人の勇者の《勇》と《智》は分かりやすかったが」


「字引きどおりに言うなら。義とは、人の正しき道。誠とは、まごころにございます」



「なるほどな……。もうよいであろう、認定に移るぞ」



 謁見の間が、再びざわつく。違うのは、軍部らしき団体が静かなことだった。あのハゲはよほど偉いに違いない。


「陛下! まだ、まだ審議は不十分にございます!」


「うるっせぇな長ぇんだよ。今までの二人の勇者は、この半分の時間で終わったろうよ」 


「この者は亜人にございます! ならば! 国への反逆の恐れが――!」


 ……うん。また僕たちは置き去りに話を進められている。長いのには同感だ。


「俺、朕は酒が飲みてぇんだ! 王命だ! さっさと認定を終わらせろ!」


「そんないい加減な……!」


 もはや、臣下たちの表情は怒りさえ露わにしている。ケイン王の一人称は、元々『俺』なのだろう。『朕』など大仰なものではなく。


「ヒジカ・トージス! 貴様は国民や朕に反逆する意志はあるか!?」


「ございません」


「ならよし! 認定に移る! 前へ!」


 笑ってしまいそうになる。さんざんぐだぐだしておいて、酒が飲みたいからで進行してしまうことに。


「ハッ!」


 僕は短く太く気を吐いて立ち上がる。王が下手の役人から書類を受け取る。


「ヒジカ・トージス! 貴公をソン=サック国の《勇者》として認める! また、イッサ・コドムとソージ・オキを《勇者の護り手》として認める!」


 大きな宝玉が中心にはめ込まれた杖を持った神官が、何やら長い祝詞(のりと)を告げながら祈った。


 天から大きな光が落ちてきて、僕を包んだ。


 ――うぉ! これどういう原理?


 気になったが、身を任せるとその光は僕の身体に吸い込まれていった。


《勇者》のような上級職は、ギルドで与えられる一般職と違い、教会から祝福を得る必要があるらしい。魔法に関わる何かのようだが、僕たちはまだ魔法についても何も知らない。


 体の何かが変わったような感覚はなかったが、自分の中のどこか曖昧だったものが、はっきりとしたような気がした。


 同じように長い祝詞がイッサとソージに捧げられると、少し小さな光が二人に入っていった。ここに来るまでに聞いていた《勇者の護り手》になったのだろう。


 ……とりあえず、上手くいったね。


 ギルドが認めた職業は、国によって剥奪されることがあるらしい。しかし王が認めた勇者は、国と言えど簡単に剥奪されない。


 王自身の、過去の失政を認めることになってしまうため、容易に剥奪できないのだ。


 一先ず、この茶番には終止符が打たれた。




 感想ありがとうございます!

 世界観説明がちょっと続きますが、来週には軽い戦闘も入れていけると思います。

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