元大剣使いシェリザ・ガルモ
「まぁ……、確かに俺は重戦士で大剣使いだったが」
来たのはギルド長、シェリザ・ガルモの部屋だった。
僕は机にもたれかかって頼んでいる。イッサは横で少し緊張した様子で立っている。強いことを察しているのだろう。
「頼むよぉ。教えてやってよぉ」
甘えた声を出してみるが、うるせぇと一蹴される。嗄れ声のおっさんには通じないらしい。ヒナには効くんだけど。
「あまり、肩入れできねぇんだよ」
ガルモは事務机に座ったまま、首を揉みながら応える。
「どゆことー?」
「……お前は知らなくてもいいことだが、ギルドには役所との手続きも多くてな」
国や役所が依頼元であるクエストも少なくない。様々な意図が絡む中、僕達に協力することで当たりが強くなる風も多いのだろう。
「……うーん、戦い方を学ぶ方法って、他に何かある?」
ガルモからは、そう良い答えは返って来なかった。ガルモも最初は、歴戦の大剣使いの下に付いて下積みをしたそうだ。そこから、技を盗んでいった。
「口頭で、基本だけ教えてやるか」
ガルモは基本の考え方を、とりあえずというように教えてくれた。
パーティ全員でかからなければならない強力な敵には、とにかく自分に標的を集めること。自分以外に攻撃を向かせないようにしながら、とにかく耐える。長く耐えられるように、受け、かわし、防ぐこと。
そう強くなく、数が多い場合には防御より攻撃を意識する。大剣を思いっきり振っていい。しかし、傷は浅くすませるように。強力な攻撃をすることが、相手を怯えさせて結果ぜんたいの傷も浅くなることが多いらしい。
「俺たち大剣使いや重戦士は、高いATKとDEFを生まれ持っている。それを最大限、パーティのために活かすことを、常に考えろ。俺たちは一人で突っ込んでもそれなりの成果を上げることはできるが、それならハジメのようなバランスのいい剣士の方がマシだ」
「わかった。一対一の場面では、どうしていた?」
方針に納得しつつも、今、レベル上げでの一対一でソージに比べて遅れを取っているのが気になるのだろう。
「……色々やってみることだな。受けに大剣を使えば、どうしてもすぐに反撃で大剣を振ることは難しい。ただ、俺たちはそもそもATKが高い。受けた大剣から片手を離し、殴るだけでも小さくないダメージにはなるさ」
「すでにやっているが……、上手く当てられない」
「そりゃ、受けの技術が足りんな。受けで力を入れるのは一瞬でいい。相手の衝撃を受けるか流す一瞬だけ力を入れ、その後はすぐに力を抜け」
イッサは大剣で受けるような動作をしてみて、うなずいた。納得はしたようだ。
「というか、お前の資料には《大剣使い》も《重戦士》もなかったが、神殿で祝福は受けていないのか?」
白髪の少年と巨体のゴリラ二人で、首を傾げる。
「「神殿? 祝福?」」




