夕陽
スキル《後ろ廻し蹴りLV1》を獲得した!
スキル《上段廻し蹴りLV1》を獲得した!
「起きた?」
身じろいだハジメに、声をかける。
ハジメは僕がかけた黒衣を手に取り、上半身を持ち上げて座ったまま袖を通した。
「……負けたな」
無言で僕は、夕陽へと目を逸らした。
ハジメはぽつぽつと語り出した。
ヒナが好きだったこと。
一目惚れだったこと。
人と上手く付き合えなかったこと。
冒険者が子どもの頃からの憧れだったこと。
ヒナへの思いと冒険者への憧れで、どこまでも頑張れたこと。
稼ぎ、実績を身につけて格好つけたかったこと。
ヒナの何に惹かれていたか。
ヒナのどの言葉が嬉しかったか。
D級からなかなか上に上がれなかったこと。
一人で冒険者をやっていて、どうにもならなかったこと。
それを努力で、どうにかしたこと。
強さへの渇望。
強い者であることの誇り。
A級に上がったら、ヒナに告白しようと思っていたこと。
家族仲がよくなく、一人暮らしをしていること。
自炊を始め、料理が得意になったこと。
いつかヒナに、それを振る舞うことが夢だったこと。
日本刀《鬼神丸》を手に入れた運命。
《武装黒衣》を手にいれるために金策したこと。
それをヒナが、格好良いと褒めてくれたこと。
それが、とても嬉しかったこと。
脈絡もなく、とりとめもない話だった。僕は少し離れて、横に座って聞いていた。
普段喋り慣れていないのだろう。話は飛び飛びになったし、途中から声が枯れていた。
しかし、心は伝わった。どんな男なのかは、殴り合ってわかっている。その男の話なら脈絡がなくとも、手に取るように絵で観るように想像が出来た。
「……お前が、うらやましいな」
空を見上げて、ハジメが呟く。視線の先を見上げれば空は赤く染まっていた。ずいぶん長い時間、殴り合っていたものだ。
「……これでも、色々あるんだよ?」
「失言か。今日一日でも、お前たちの苦労は見ているだけでひどかったな」
それを知った上でも、どんな思いをしてでも手に入れたかったヒナを手に入れたお前が羨ましいと、ハジメは言った。
僕は、黙った。黙る以外にないだろう。ハジメも黙った。
二人を迎えに行くと伝えると、ハジメは、
「あぁ」
と頷いた。
僕からの言葉も、短くとも伝わる。
それから二人を迎えにいった。討伐した《荒野狼》は三十数頭。なかなかの数だ。
腫らした僕の顔を見て、何事かと二人は騒いだ。二人は《ポーション》を一本ずつ飲んだそうで、衣服に破れはあるが、見た目にわかる傷はない。
何でもないと言っただけで二人が渋々肯いたのは、僕の顔が晴やかだったからだろう。
僕も《ポーション》を一本飲むと、腫れはすぐに引いて歯までゆっくりと生えてきた。ところどころ現れるファンタジー要素にびっくりする。
それからギルドに行き、討伐した《荒野狼》を回収するよう頼んだが、すっかり忘れていた面談のことでヒナに怒られた。




