オールバックのツリ目男
魔物と亜人が住み分けて暮らしている?
「どういうこと? 亜人と魔物が共存しているってこと?」
受付嬢ヒナは小さく首を振って、言い方を考えるようにして説明を続けた。
「共存、とは言えないわね。ちょうどソウダブとソン=サック、ルビの関係ね。亜人の拠点と魔物の拠点が点在しているの」
あぁ、なんとなくわかった。
「亜人の拠点が潰されて人間達の拠点になれば、魔物に不利になる。魔物の拠点が潰されて人間達の拠点になれば、亜人に不利になるってこと?」
「そのとおりよ。亜人にとっての戦略としては仕方のないことなのだろうけれど――、国軍が魔物の拠点を潰そうとすれば、亜人はそれを阻止するわ。逆でもそうね。それで兵士たちの反感を買う一因になっているのも事実よ」
なるほどねぇー。納得しながら、今さら違和感に気が付いた。
「そういえば、ヒナお姉さんは僕らのこと差別しないね? 何でなの?」
嫌悪感を感じないし、恐れているような怯えも感じない。恐怖ゆえに従順になっているわけでもない。
「正直に言えば、私たち冒険者ギルドは強い冒険者がいてくれた方が助かるの。D級の冒険者パーティがどれだけいようと、A級やB級のクエストは依頼できないもの」
僕たちは勇者一行だし、さっきク登録前に力は見せた。一応は、認められたということだろう。
「そっかぁ、ヒナお姉さんはプロなんだねぇ。それでも、役に立つからといって差別をしない理由にはならないんじゃない?」
揚げ足を取るようだが、突っ込んで聞いてみた。差別の解消には、その原因の一つ一つを把握しておきたいし、世話になるだろうこの女の本音は聞いておきたい。
「……大きな声では言えないけど、理由の無い差別なんて馬鹿らしいと思ってるの。魔族と近いだとか人族に比べて劣っているだとか、明らかに事実と違うじゃない。会話しても知能は変わらないし戦闘はむしろ優れているわ」
どうやら現実主義で、現状の自分に不満の無いのだろう。勝手にそう分析した。
理由があっての区別でなく、差別するための理由では、ある程度知能のある者であれば首を傾げる。
そして優れた外見と豊かな胸だけでなく、知能を持ち合わせているヒナには、誰かや何かを差別して優越感を持つ必要はない。見下す対象を探したり作ったりする必要はなく、そもそも優れているのだから。
「馬鹿らしい、か。いいね」
演技でなく、口元が緩んでしまった。
全員が平等なんていうことはありえないけれど、だからといって劣った自身を誤魔化すために人を見下す者には、吐き気がする。そういう存在から最も離れた位置にいるヒナには、思わず好感を持ってしまう。
「ねぇヒナお姉さん! 一緒にお酒飲まない? ここお酒も出してるんでしょ?」
ギルドの横には酒場も併設されている。仕切られているわけではなく、朝も酒を持ったままギルドのテーブルで情報交換している冒険者たちもいたのだ。
「……せっかくのお誘いだけど、ダメよ? 今仕事中だもの。それにあなた成人――はそういえばしてるのね」
幼いから忘れてしまうわねと、僕が冒険者登録した資料を見ながらヒナ嬢は言う。
「じゃあ仕事終わった後! 職場じゃ気を遣うだろうから、いいお店教えてよ!」
そういう僕に、口を波立たせるように困った顔をしている。表情は断る言葉を探しているように見えたが、押せばいけるような気もした。
「ね! お願いー! 僕この街のこと何も知らないし、もっといっぱい教えてほしいん、え?」
突然、身体が宙に浮いた。
襟を後ろから掴まれ、持ち上げられている。
「……困らせるな」
振り返れば、男が片腕で僕を吊っていた。しっかりセットされたオールバックの黒髪の下、細いツリ眼が無表情に僕を睨んでいる。
――強い、この人。
僕の身体は見た目より重い。なんせ本当の姿は体長100メートルの五頭を持つ蛇だ。さすがにその見た目どおりの重さではないが、実はこの姿でも、イッサと同じくらいには重いのだ。
「ん。意外に重いな」
それを片手で持ち上げながら、ちょっと驚いたような声音を上げるだけで済むのは異常だ。そして立っているのはちょうどいい斜め後ろで、半身になっている。《後ろ蹴り》も《裏拳》も当たらない位置取り。
「ハジメくん……!」
ヒナがどこか、安心したような声で三白眼オールバックを見る。
ハジメと呼ばれた男は、僕をゆっくりと地に下ろした。
「……今日のクエストだ。報酬を頼む」
「はい。いつもありがとう」
そう言ってヒナは、確認の作業に入り始めた。邪魔をしたくはないし、無表情男を見上げた。
「お兄さんは誰?」
思わず不機嫌な声になる。人の恋路を邪魔する奴は、僕に丸呑みされればいい。
「あぁ。お前が、噂の勇者か。ずいぶん……、小さいんだな」
「イラつくねぇ、お兄さん。アンタ誰? って聞いてんだけど」
身長はあのヒジカより少し低い、180センチくらいだろうか。クエストから帰って来たばかりだろうに、高級そうな黒の服は全く乱れがない。右腰には剣を佩いており、鞘も立派なものだった。
「俺はハジメ・サイト。B級冒険者だ」
「へぇ? 僕はヒジカ・トージス。F級冒険者だよ」
見つめ合うというより、見下ろされる僕が反発するように首を傾げながら、睨み合うようだった。
強いことはわかる。三十代くらいか、オールバックで衣服も整った物を着て、いわゆるしっかりした印象のこの男は、経験も多いだろう。だが、だからといって負けるとも思わない。
「……そうか。まぁ頑張るといい」
無表情なまま、糸目の男は僕から視線を外した。受付に向き直ってヒナの作業を待つ。
何だか気を削がれたような気になる。険しい顔つきに神経が逆立ったが、喧嘩を売るつもりはないらしい。僕が亜人であることも、勇者であることさえ気にしていないようだった。
なんとなく、僕も受付に向き直って両腕をテーブルに乗せてヒナ嬢を待つ。
「ハジメさんは、亜人のことを気にしないんだね」
「俺には関係ないな。人族だろうが亜人族だろうが、お前は強い。ギルドじゃあ、それだけで十分だろう」
さすがはB級といったところか。朝のバカのように外見だけで僕を判断せず、本質を見ている。
「さすがベテランって風格だねぇ。舐められたり敵意向けられたりばっかりだったから、好感が持てるよ」
「そうか」
本音を言うと、簡単な応えだけが返って来た。強い男に認められれば、悪い気はしない。
「……何人か、お前のせいで死んだのか?」
「!」
心臓を握られたような気がした。思わず目を剥いてハジメという男を見てしまう。
「――冒険者にたまにいる、壊れかけた人間の目をしている」
「……驚いたね。しっかし、口が不躾すぎない?」
「悪いな、性格だ。出来るなら、ゆっくり眠るといい」
無表情も口数の少なさも遠慮のない口も性格で、悪意や敵意があるわけではないようだ。
ハジメはそれ以上何も言わなかった。無言で手続きや報酬の準備を二人して眺めたが、静寂が気まずくはなかった。最初に邪魔をされて苛立ったが、どうやら僕はこの男が嫌いではないらしい。
ベテランなら、機会があればギルドやクエストについて教えてもらいたいとさえ思った。
「はい、できたわよハジメくん、あれ? 何か和やかになってる?」
作業を終えたヒナ嬢が、不思議そうな顔で言う。
「ん? あぁ、何でもないよ」
そう応える僕に、そう? と応えるヒナ。ハジメ・サイトは無表情に報酬を受け取る。というか、ハジメくん?
「いつも助かっている。感謝する」
「いえいえー、こちらこそ。またお願いね!」
ハジメは無言で頷き、背を向けてギルドを出て行った。僕はヒナ嬢と、その背中を見送った。
「あの人結構年上じゃないの? なんでハジメくん?」
こちらの文化だろうか? そう思って、ハジメ・サイトをくん付けで呼ぶヒナに訊くと、ヒナはくすりと笑って答えた。
「あはは。ハジメくん、あぁ見えてヒジカくんと同じ年の十五歳よ?」
「えぇ……?」
えぇ……。
腑に落ちず、少し納得するのに時間がかかった。それでもそれからヒナ嬢を口説き落とし、ディナーを一緒にすることになった。
あとでイッサとソージには、今夜は帰らないと伝えよう。
~規則に違反しないため、ハイライトでお送りいたします~
「ヒジカくん、緊張してるの? ふふ、強い勇者って言ったって、まだ子どもですものね」
「あら、服の下に興味があるのかしら? いいわ。ん、しょ」
「ふふ、まるで赤んぼ、ん、あぁ、え? ちょ、ンん♡ あ♡ あぁ、何♡ その、舌ぁん!」
「や♡ ちょ、本当、ダメぇ♡ そん、な、舐めか、た、アァ、あ♡ は、は、あぁ! あ、あ、あぁぁぁああ!!」
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「……ハァ、ハァ、ん♡ すご、い、舌ね。本当に、子どもなの?」
「今度は、お姉さんの、番なんだから♡」
「いいのよ? 恥ずかしがらなくて。脱がなきゃナニも始ま……え?」
「ちょ、ちょっと、何よ、これ……。こんなの、きい、聞いてないわ」
「やぁ! ちょ、離し、無理よこんな! こんなにに大ゴフォ」
「ン、んぐ、ぅぐぅ。……ご、……ごぼ、ぉぉ、おぉ、おぉぉおお♡」
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「がはっ、はぁ、はぁ、ヒュー、ヒュー、うぅ、ぉぉお、がはっ」
「え? 何するの? 無理よ? 無理、無理! 口でも無理だったのに、そ、あ! あぁ!」
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「お♡ おぉ♡ ご、ごぉ♡ お♡ お♡ おぉん♡ うぅぅぅぅう、うう♡」
「駄目♡ も、お♡ もう、これいじょはぁ♡ 怖、壊れ、壊れるがらぁぁあ」
『知ってる? ヒナさん? 蛇のって、数日終わらないことも多いんだって』
「む、むりよ♡ 死ん、死んじゃう♡ 死んじゃうが、か。死んじゃうからぁぁあ♡」
『いいんじゃない? 壊れても。いっそ死ねば?』
「ひぃ♡ ひろいぃ♡ 褐色の、幼顔が、ひど、ひどぃぃぃいい♡ いい♡」
『あはは! それで喜ぶんだ? ドン引きなんだけど!』
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「…………ぉ♡ ……ぁ♡ …………ぉぉ? ………………ぁ♡ ………………」
そして夜が明けた!!!
実写風に書いた第一部分が警告受けたので、エロ漫画風ハイライトにしてみました。これなら大丈夫でしょ!