死に風吹き行く ~ある妹弟の話 その四~
チュンチュンとスズメのさえずりが聞こえた。
新聞配達だろう、バイクの去る音も朝が来たことを伝えていた。
まだ眠いと弟は布団にくるまっているが、野球部の朝は早い。
布団を少しあげて横で寝ている姉をみた。
すやすやと寝息を立てている。
ええい起きなきゃと顔をパンパンと叩き布団から出た。
濃紺のカーテンは寝る前に閉めた。
昨夜の不気味な現象のことは熟睡したようですっかり忘れていた。
天気はどうかなと姉を起こさないように静かにカーテンを開けた。
弟は「えっ?」と小さくつぶやいた。
なんとまだ外は真っ暗ではないか!
―――さっきスズメが鳴き新聞配達のバイク音が聞こえたじゃないか?夢か・・・
五月の朝の太陽は早い。
ほほをつねりながら、朝じゃなかったのか?と携帯の時間をみた。
充電しそこなったのを忘れていた。
まあいいやまだ寝れると布団に入った。
夏の甲子園が近い、猛練習で疲れはてていた。
とその時だった!
居間を中心にして一階の右に姉の部屋、右が弟の部屋だ。
そして居間の後ろにもうひとつの部屋がある。
そこの障子がゆっくりと、ゆっくりと開いていくのを弟は見た。
―――なんだなんなんだよ・・・おい?
白い手が浮びあがり障子を開けている。
その白い手が弟の眼前まで、グッ、と迫った。
同時に呪文のようなしわがれた言葉が聞こえた。
―――シニカゼフキユキミチノイシ・・・ツチニキシタリコノヨノモノドモ・・・