表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱舟が出る港  作者: 村雨 正巳
14/16

常央大学 その壱

「おいっ!、何キロ出ている、飛田?」

監督である、島影英彦が聞いた。

聞かれた少年は、信じられないという顔をし、スピードガンにもう一度目をやった。

「ええっ?こんな馬鹿な‥ひゃく、ひゃく‥167キロですよ、監督!!」

二年生の捕手は何人もの速球派ピッチャーの球を受け打っている。確かに速いのは速い。

140キロ半ば、との感触ではあったが・・・

総監督の指示で島影は放らせていた。ここまで打者を置かず10球を投じていた。



「白川っ、お前バッターボックスに立ってみろいいかっ、手を抜くんじゃねえぞ!

磯前っ、全力でもう一度投げろ!緩急も変化球もいらん。ただ素直に投げえ。白川っ、

お前もフルスイングでいいっ。どっちも本気でやれえ!」

白川広はプロも注目する、名の知れた全国区の大型スラッガーである。

磯前晴海はマウンドで大きく両手を水平に広げた。

深く息を吸い吐いた、空を見上げた。

初夏の空が実に高い。潮の香りも特に強い。

それにしても今年の初夏は暑い。五月十日になるが、気温は三十五度近いはずだ。

陽炎が揺れていた。

グラウンドから眼下に見える海を見つめた。

晴海は右肩を、グローブでトン、と叩き軽く揉んだ。

誰も知らない体の変化が、そこにあるのだ‥




島影監督が全員が磯前に注目している。

日に日に増す晴海の球速と体。

島影は知っている、白川などは問題ではないと。

島影は首のタオルを手に汗を拭った。

プロでも磯前の球は打てはしまい、あるいは大リーグの強打者でさえも‥

プレートを踏んだ。

右足を高々と上げ、その細身の長身が蒼穹のようにしなった。

ヒュンと空気を切り裂く音が、ベンチにも聞こえる。

まるで真剣が飛んでくるような畏怖を白川は感じた。神聖な鋭さがあった。 

刺された感じが、する、心地のいい刺され方?か。

バットを振る事さえ出来なかった。正捕手の鴨川真一は一歩も動かない。

球は構えた場所にまるで計ったように来る。球が刃なら、ミットが鞘のように

思えた。

三年生の絶対的なエースピッチャーにして白川同様全国区の郡司大介は、

はあとため息をついている。

「白川、何をしているっ!! ど真ん中だろうがお前っ!!」

絶対零度の中を飛ぶ白鳥がいたとすれば、晴海の球と同じ軌跡を描くのでは

あるまいかと思う。

球威スピードだけなら慣れれば必ず打たれる。

変化球は要求していない、真っ直ぐだけだ。球威に加えた何かが、ある。



「これも監督稼業。自分でよく考える事だっぺ」

磯前を見出した森内総監督はニコニコと笑うだけで何も教えてくれなかった。

あの磯前が‥短い時間の中でどうしてここまで?‥と。

俺の目は節穴だったのか?と。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ