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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第七章 青春期 魔界編

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第五十六 召喚師

いつも読んで頂きありがとうございます。


第五十六 召喚師


です。

第五十六 召喚師


 メイアは、召喚の才能があると、アールに褒められた時、自分は、これで仲間の中で生きていけると内心勇躍した。


 もちろん、表情は変わらない。ニコリともしないのがメイアと言う女性の性格だった。


 彼女には、常にヨランダードという競争相手がいた。そしていつも負け続けていた。


 アールに食い下がり、教えを請い、今の位置に立つ事が出来た。


 憧れの魔法学院にも入学が出来た。信じられない事に、最近では、空間系魔法ですら操れるようになりつつある。


 考えてみれば、アールは、伝説や神話などの物語の中でしかありえない、そんな人間だと思う。


 アールの能力は底が知れない。天界の主神と言ってもいいような神と戦っても圧倒的に強い。挙句あげくにその主神を臣下にしてしまう。


 何処まで強いのか、どれだけ引き出しを持っているのか。分からない。


 初めて会った頃の彼は、気さくで話しやすく、明るく真面目で、とてもカッコ良かった。直ぐに好きになった。と言うか憧れた。


 しかし、今では雲の上の存在となった。尊敬する人。忠誠を尽くす人だ。


 母のキャサリンが子供のアールに寝食を惜しんで尽くしていた理由が今では分かる。


 アールからキャサリンの事を母親と感じているという事を聞いてメイアは母に嫉妬に近い感情すら持った事がある。


 しかし、次第に仲間が集まり、彼らの実力を目の当たりした時、このメンバーの中で自分の存在価値が無いのではないか? という事が大きな悩みの種になった。


 自分は、仲間の中で一番弱いとの認識がある。それも当たり前だ。ヨランダードは、魔法の天才だ。フリンツもそうだ。彼らはアールがわざわざ探して、見つけた天才達なのだ。


 自分はアールに食らいついて、才能もないのにアールのおかげで少しばかり魔法が使えるようになった。


 しかし、ここに来て、自分の才能がないため、他の者達と明らかな差が出てきた。


 そこに、召喚の才能の話だ。


 ヨランダードやフリンツには、万能の天眼・魔眼の能力がある。メイアもアールの鍛錬のおかげで、多少の感知能力は身につけた。


 しかし、彼女にはその能力が決定的に欠如していることから、今後の成長は、彼らと明らかな差が出ると覚悟していたのだ。


 アールの特殊任務を担うには、いくら能力が有っても足りない。アールほどの能力者が今でも成長の訓練や実験をしているとあってはなおさらだ。


 才能は、努力ではあがなえない。しかし、努力もせずに諦めきれないではないか。


 だから召喚の才能と言う言葉に飛びつかずにはおれなかった。


 アールから召喚に関する知識を可能な限り教えてもらった。一度見たら完全に覚えてしまうアールならではの教授ぶりで、メイアは、必死でノートを取った。


 取ったノートは、完全に記憶するまで何度も見直した。


 召喚魔法陣は、隅から隅まで模様の意味を覚え、完全に間違えないほどに暗記した。


 召喚の魔法の発動形態もほとんど完璧になるまで練習を繰り返した。アールの教えの通り、基本を大切に一歩一歩完全に覚えるまで必死に練習を繰り返した。


 アールは、メイアのこの勤勉さがメイアの一番の才能だといつも言っている。


 メイアのその努力は、仲間の皆からも認められ彼女の発言が容赦なくても皆、笑って聞いてくれる源泉となっている。


 アールを見ていると、一秒を惜しんで訓練せざるを得ないのだ。


 それが、チームアールの仲間達の特色であり、彼らの成長速度の速さの理由でもあった。





 メイアは、その沼を見た瞬間に『ヤバい!』と感じた。ヨランダードなどは、明らかに怖気おしけづいた。


 沼には、主らしき魔物が鎮座していた。


 大きくはない。魔物としては小さい方だろう。


 美しい四枚の羽に白銀の長髪。輝く体からは光が溢れるように燦々(さんさん)と輝いている。


 それは、精霊と言うよりも、女神という方が近いと感じられた。サーリやメーサの雰囲気に似ている。


 しかし、精霊が彼らの存在を感知した時から、その感触は一変している。


「ニンフ。ありがとう。こんなに素晴らしい王様の所に連れて来てくれて」


 メイアがニンフに言った。強制的に支配したとは言え支配者から礼を言われると嬉しいものだ。


「あのお方は、大妖精帝王ノースメロロス様です」


「あなた達の妖精王ではないのですか?」


 メイアが訪ねた。


「貴方は、妖精王の所へと。しかも強い妖精王をお求めでした」


 ニンフが堂々と言った。


「いいわ。貴方の判断は正しいわ。貴方のご主人様の所に敵を連れて行かせなくってよかったわ。それなしても、ご苦労様。貴方は解放します。行って頂戴」


 ニンフは、慌てて離れていった。逃すまいと言うことか? すごい速さでムチのような物がノースメロロスから放たれた。


 メイアは、慌てて闘気で障壁を作った。


 大妖精ノースメロロスの攻撃が跳ね返される。


 その時になって初めてノースメロロスは彼らに強い興味を持ったようであった。


 それが彼らの闘いのゴングとなった。


 メイアは、最初から全開で行くつもりだった。温存しても死んでしまえば終わりだからだ。


 ヨランダードにもそう言ってある。


 ヨランダードがメイアの前に立つ。前衛など初めての布陣だが、物理攻撃ができるのはヨランダードだけだ。


 ヨランダードが、『光の剣』を発動する。


 メイアは、召喚魔法『大精霊召喚レベル八十』を発動する。これが彼女の使うことの出来る最高の召喚魔法だ。


 彼女の精神支配力がノースメロロスにまといつく。


 ノースメロロスは、ニヤリと笑ってメイアの精神支配を絡め取って引き剝がす。歯牙にもかけていない様子だった。


 それと同時にノースメロロスは、炎を実体化させてヨランダードに叩きつけてきた。


 ヨランダードは、『光の剣』で、ノースメロロスの炎を両断する。


 背後から見ていると、ヨランダードはなかなか様になっている。剣など持って闘わなかったヨランダードが天界の神との闘いからスタイルが大きく変わっている。


 魔力量の大きいヨランダードの『光の剣』は大きな戦闘力になる。


 ヨランダードが肉体強化をして、ノースメロロスに突進。ノースメロロスは、飛翔して、ヨランダードの一撃を回避した。


 ヨランダードもミサイルのようにノースメロロスを追撃する。


 メイアは、意識を集中して、ノースメロロスの意識を絡め取る事に専念する。


 ノースメロロスは、複雑な精神構造を持っていてなかなか捕まりきれない。


 メイアは、さらに集中して、ノースメロロスの意識を捕まえようとした。


 しかし、ノースメロロスは、スルリと彼女の支配から抜け出てしまう。


 どうしてうまくいかないのかメイアは、考えてみた。支配力が弱い訳ではない。


 なぜなら、この大妖精と互角に闘うヨランダードすらメイアは、精神支配できるのだから、つまりレベルで言えばこの大妖精を支配できないわけないのだ。


 アールの精神支配を試みた時に感じたレベルが足りずに精神支配できないのとは違うのだ。この大妖精の精神のひだに引っかからないだけだ。


 ヨランダードが『煉獄』を発動した。ノースメロロスは、氷山を実体化させ対応させている。


 大妖精ノースメロロスは、特技妖精の歌を歌いはじめる。


 ヨランダードの動きが止まる。妖精の歌の虜になってしまったようだ。


 ここで、精神支配を止めて、ヨランダードの援助をした場合、振り出しに戻ってしまう。場合によってはノースメロロスは、逃げてしまうかもしれない。


 メイアはヨランダードを助けることとノースメロロスの精神支配の両方を同時にやり遂げる事にする。


 ノースメロロスの精神支配をさらに強めるとともに、ヨランダードの精神支配を同時に行おうとしたのだ。


 いわゆるデュアル召喚だ。同時に二つの召喚を行うものだ。


 ヨランダードは、妖精の歌の虜になっているので、精神系の攻撃をかければ技が解けると判断したのだ。


 メイアは、召喚魔法『聖霊召喚』を発動。


 ヨランダードとノースメロロスを同時に精神支配しようとする。


 この同時精神支配が思わぬ効果を生むことになった。


 彼女にとってヨランダードほど精神支配しやすい者はいなかった。その気安さが、そのままノースメロロスの精神支配の方にも効果を発揮したのだ。


 なかなかノースメロロスの精神のひだに引っかからなかったのに、ヨランダードの精神支配を同時した瞬間から簡単にスルリと精神の中に入り込むことができたのである。


 要は、できると信じる事。自分の能力が絶対であると思う事が大切だったのだとこの瞬間理解した。


 魔法の発動のための基本中の基本だった。メイアは基本の大切さを改めて思いしるのだった。


 メイアは、一人目の召喚精霊を手に入れる事ができた。当初想定していた精霊王ではなく、もっと上位の大妖精帝王を召喚精霊として獲得したのだ。


 メイアは、これから強力な召喚精霊や召喚魔物などを幾らでも増やしす事ができる。


 彼女は、これからの闘いで常にノースメロロス大妖精帝王を召喚できる。


 今までは彼女一人で魔法をかけていたのが、ノースメロロス大妖精帝王を好きな時に召喚しつつ、一瞬でもヨランダードを昏睡させる実力をもった大妖精を配下とできたことに大いに満足したのだった

次回は、ラーサイオンの成人の儀を書く予定です。


楽しんで頂けると嬉しいです。

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