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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第六章 青春期 天空編

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第五十四 サーリ再び

いつも読んで頂きありがとうございます。


第五十四 サーリ再び


です。

第五十四 サーリ再び



 ツウラが目を覚ますと、可愛い顔が見下ろしていた。


 その顔の表情が明るくなる。


「サーリか。私は、助かったのか?」


 ツウラが呟くように聞いた。


「聖力の枯渇だそうです」


 サーリが説明する。


「あの剣だね。あれは凄い剣だね。いかなる神々だろうが魔法師だろうが、あの剣を防げる者はいないないだろう」


「『プラズマ剣』というのだそうです」


「変わった名前だね」


 ツウラの顔つきは、憑き物が落ちたように、爽やかだ。


 サーリも、ツウラを責めようとはしない。何しろ、サーリは、ツウラの責任を追及する権利が無いと思っている。それ以上に自分も同罪だと思っている。


 『慧眼』は、ツウラが生還できないと計算していた。


 常に、『慧眼』の計算の上をゆくアールの非常識さのおかげだ。


「彼は何者でどうやって見つけたのか教えてもらってもいいかい?」


 ツウラがサーリに尋ねた。


 ツウラは頷くと、ツウラの耳元に口を持って行きそっと呟いた。


 ツウラは、サーリのささやき声にいちいち頷いていた。


「それで、私に彼を手伝えと?」


「兄様は、この天界では、生きて行けないでしょう。私からレイライト様にお願いしてみます」


 ツウラは、少し目をつむり考えている。


「それも良いかもしれんな」





 サーリは、胸の動悸を押さえるために豊かな胸の下辺りを両手で押さえた。それでも、動悸が治まらないので、深呼吸をしてからノックをする。


「どうぞ」


 と、アールティンカーの声がする。


「サーリです」


 サーリは、そう言いながら部屋に入った。


 部屋には、アールティンカーの仲間達がいる。


「兄様が気付きました」


「良かったですね。それで太歳様の具合はいかがですか?」


「兄様の神籍しんせきは、剥奪たくだつされました。もう、ただのツウラ・トウサです。兄様は、元気です。


 兄様の事で皆様にお願いがあって参りました」


 サーリは、自分の考えを説明した。


「お兄様を私達の仲間に?」


 全ての説明の後でアールが念を押すように尋ねた。


「はい。兄様は、天界から追放されます。幸い人命は失われておりませんから。


 一番心配しましたが、兄様は、メーサと私達のお父様の死には関わっておらぬようです。私達のお父様は、どうやら私達の『敵』の手先にはめられて殺されたと言うのが真相のようです。


 ギリギリ間に合いました。全てはレイライト様のお陰です」


 レイライトが顔を輝かせる。


「それは、良かった。四天聖神様達もお命に関わる事もなく。何よりです」


 サーリが可愛らしく微笑む。


「サーリ姫のお兄様が承知されているなら私は構いませんよ」


 しかし、珍しくヨランダードが異議を挟んだ。


「サーリ姫様。貴方のお兄様は、とても能力もあり、上級の神様ですよね。しかも、あのような事件を起こされる冷徹な方。年齢も何百歳とか。皆の和を乱すと思うんだけど」


 ヨランダードの発言に、サーリが反論をする。


「その点は大丈夫です。私も同道させていただきますので、兄がおかしくなったら私が何とかします」


 そこで、アールが割って入る。


「サーリ姫も一緒に?」


「はい。ご迷惑でもご一緒させて頂きます」


 サーリが宣言するように言った。


 アールが目を大きくしてサーリを見ている。


 サーリの宣言にヨランダードも黙ってしまう。


 その時だ。ドアをノックする音がした。


 アールが入るようにドアに向かって言う。


 入ってきたのは、話の中心人物のツウラだった。


「お邪魔する。少し話をさせて貰ってもいいだろうか?」


 ツウラは、落ち着いた物言いで、訪ねてきた。


「ああ。どうぞ。では、皆外してくれるかい」


 アールが答えた。


「いや。皆にも一緒に聞いてもらいたい」

 と、ツウラである。

「君達、魔界貴族と魔界帝と言うのを聞いたことがあるかい?」


 いきなりツウラが訪ねた。





 ツウラは、非常に貴重な話をしてくれた。


 魔界貴族は、魔界帝に仕えているらしい。これは、魔界貴族のあるものが「魔界帝万歳」と叫んで死んだ事があるから、そう予想されているのだという。


 魔界貴族は、天界ではたびたび発見されている。ツウラも、一度接触してきた魔界貴族がいる。


 天界では、地上界とは比べものにならないくらいに彼らは活動しているようだ。


 ツウラの話では、『敵』は、確かに、正体を隠している。何処の何者か分からない。


 アールが捕まえ損なった『敵』である『きゃはきゅと』の話をしたところ、ツウラは多いに感心していた。


 あの時、『きゃはきゅと』は、さらわれた人が何に使われているか知らない事と自分が魔界貴族であること、そして魔界の事を次のようにしゃべっていた。


「魔界ハ、オ主達モ存在ノ分カラナイ部分ガ広ガッテオルノダ。


 ソノ境界ヘハ、魔界貴族ノ魔法ガ使エル者シカ渡レナイ」


 と『きゃはきゅと』は、聞きもしないのにペラペラと話していた。


 さらにアールは『きゃはきゅと』に探知系魔法をかけて多くの情報を得たのだ。得た情報をもう一度列挙する。


『鑑定』の結果

名:きゃはきゅと

年齢:測定不能

種:魔種

職業:魔界貴族

人レベル:測定不能


『モンスター図鑑』

モンスター名:きゃはきゅと

モンスターレベル:三百七十

モンスター特技:魔物寄せ(魔物を呼び寄せる)

モンスターの配下:なし

モンスターの上司:魔界将軍


『人レベル探知』

闘士レベル:未熟

戦士レベル:未熟

剣士レベル:未熟

魔法師レベル:大帝級

召喚師レベル:帝級

錬金術師レベル:上級

魔界貴族:魔界騎士級

魔界医師:初級

魔界武器師:見習

など。


 また、あの時『きゃはきゅと』を消滅させてしまった魔法のレベルを探知した結果は、以下の通りである。


『魔法レベル探知』

魔法名:地獄の消滅

魔法の種類:測定不能

魔法の効果:完全消滅

魔法レベル:三百七十五

魔法級:天帝級

魔法熟練度:熟練


 ツウラは、たった一瞬で、様々の情報を収集した、アールの手並みにしきりに関心していた。


 次に、ツウラが『敵』について、持っていた情報をまとめると以下の通りとなる。


①最低でも、三百年前に『敵』の直接の手下(たぶん魔界貴族)の存在が確認されていた。


②魔界貴族は、魔法師としてはかなり上級であるが、あまり頭が良くなさそうなこと。


③魔界帝万歳と叫んで死んだ魔界貴族がいた事


④魔界貴族がツウラを精神支配しようとしたが失敗した事


⑤魔界貴族が人間界よりも天界の方が格段に多い事


人攫ひとさらいは、三百年前に既に行われていたが数がずっと少なかった事


⑦魔瘴気魔法を魔技まぎと呼ぶ事


⑧天界でも『敵』は、徹底的に正体を隠している事


 ここに来て、随分情報が集まったように思われる。


 ツウラは「『敵』は、『魔界帝』でいいのではないか?」と言った。


 確かに、一先ず『魔界帝』と呼ぼう。彼には『魔界将軍』『魔界貴族』などの部下がいる。


 三百年以上前から、人攫ひとさらいを続けていた。


 しかし、ここに来て人攫ひとさらいの数が大きくなっている事もたしかだ。何しろ三百年前では、年間数人だったのだ。


 それが、地上界では社会問題になっているぐらいだ。


 これは、既に『魔界帝』が大攻勢に出始めている事を表しているのではないか?


 と言う事で彼等の意見が一致した。人攫ひとさらいなど、これ以上犠牲者を出さないためにも、彼等の実態を掴まねばならない事も皆の総意であった。


 そこで、魔界の魔技まぎを使わないと入れないという魔界のさらに深淵に広がると言う魔界に行く必要がある事で意見が一致した。


 話の最後に、ツウラが腰を折って、膝を床について頭をアールに下げながら言った。


「今回。貴方と会って、私は、自分がいかに卑小ひしょうな存在かと言う事を知りました。


 天界には『太歳たいさい歳破さいはきて、闇をもたらす時、天照てんしょう光子こうしをもたらさん。光子こうしことわりさいし、はらう』ということわざがあります。我々はこのことわざを『小悪を大悪が破っても闇が覆い尽くすが、いずれは日が昇るように闇は打ち払われる日が来るだろう』とそう解釈してきました。


 しかし、これを我々の人名を当て込むと『ツウラがサーラを打とうした時、サーリは、ハルト(ひかり)の子を連れてくる。その子は、世の中の謎を解明し、敵を撃破する』とも解釈できるのです。


 私は、この予言が当たるように努力してみようと思います。それには貴方たちが必要なのです。


 私を貴方の部下として側に置いて頂くことは叶いませぬか?」


 アールは、ツウラの前に立って刀をツウラの肩に置いた。


「汝、ツウラ・トウサよ。汝は、死が我と別つまで我、アールティンカー・マキシミリアンに忠誠を誓うか?」


「誓います」


「汝を我が家臣とし、名誉爵位を授けん」


「ありがたき、幸せに存じます」


 サーリが兄の横に膝を付いて、アールに頭を下げた。


「アールティンカー様。私も貴方様に忠誠を誓わせてください」


 サーリが申し出た。


 アールは、刀ではなく己が手をサーリの肩に置く。


「サーリ姫。立ってください。貴方とは既に別のお約束をしております。


 皆。サーリ姫と二人にしてくれないか」


 アールの願いで皆が退出して行った。


 取り残される二人。


 アールは、サーリの手を取り、ソファーに並んで座る。


「やっと、二人でお話しができます。ずっとこうやってお話しできる日が来る事を心から祈っておりました」


 アールが言った。


「私も、会いたかった」


 サーリが答える。


「しかし、サーリ姫は、お兄様が追放になられた後、天界の王位継承権第一位のお姫様です。お国の大切な宝たる姫を我が物にして、お連れする訳にはいきません」


 アールがきっぱりと言った。


 サーリの顔が曇る。


「私がこの国を去り、殿下のお伴をする事は、母に許して頂きました」


 アールは、サーリ姫のあまりにも可愛いく美しい顔に釣り込まれて思わず抱きしめたくなるのをグッと堪えた。


「サーリ姫。私も一国の主となる事が約束された身です。その事は、自分でどうする事も出来ない事です。先に姫と婚約を致しましたがそれは、姫に立派なお兄様がおられ、成人もされておられた。貴方は、国を捨てて私の元に来てもお国には大きな問題とはならない時でした。


 しかし、今は貴方がお国に縛られる時です。我々は決して正義や信念から目を背けてはダメなのです」


「殿下。天照という方は、既に二年前に亡くなりました。彼女は、自分の国や母や国民のためよりも兄のために何もしない事を選択をした時に死んだのです。


 私はその時に、貴方との約束も無に帰しました。貴方様がその事をおとがめになるなら、私は、身を引いて孤独に暮らしましょう。


 兄と私はとてもよく似ています。目的のために、全てを投げ打つ苛烈な魂の持ち主です。


 兄の乱心を止めもしないで黙って成り行きを見る事にしたのは、私のわがままがそうさせました。私には幾らでも阻止する機会は有ったのです。


 しかし、何百年もの期間、真剣に物事を捉え考えて来られた兄の思い詰めた決断を止める事も邪魔する事も私にはできませんでした。


 最後の最後に貴方様に助けを請うたのは貴方様なら私の『慧眼』で予測する未来を根底から変えてくださると信じたかったからです。


 そして、貴方様は、私の兄にこんな素晴らしい未来を与えてくださいました。


 私の身勝手な言い分で申し訳ないのですが、私は、国や母や兄妹よりも貴方といる事を望んでおります。どうか私をお連れください」


 サーリは、必死にお願いした。しかし、アールから許しが出るとは思えなかった。アールも信念を変えない事では誰にも負けない。一国の大切なお姫様を我が物にして盗んで帰る気はない。


 そのためにお互いがどれほど傷ついても、できない事はできないのだ。アールとは、そんな青年だった。


 珍しく、アールが言いよどんでいる。アールの最終的な結論は、『慧眼』でなくとも想像ができていた。


 サーリは、今、必死に懇願しなければ後で死ぬほど後悔すると分かっていたのだ。


 サーリは、アールから最後通告を受ける前にと、アールの手を両手で取って胸に強く抱きしめた。その感触を一生の宝物にして、生きて行けると彼女は思っていた。


 アールは、手に伝わる未知の感触に、我を忘れるほど狼狽した。一瞬凍りついている。


 しかし、自分の欲求でこの素敵な女性が、不幸になると知りながら連れ出すなどできるはずがない。


 今ここで、理性をなくし、サーリ姫を連れ出したら後で後悔する事は明らかだった。


 結論は、決まっているがなかなか口に出して言えない。自分の腕を両手で抱きしめて連れて行って欲しいと懇願されて迷わない男はいないだろう。ましてや、相手を好きであればなおさらだ。


 その時だ。ノックの音がした。


 慌てて、アールの手を離すサーリ。


 答えを待たず、天帝サーラが入ってきた。立って挨拶をしようとするアールを手で制した。


「アールティンカー殿下。これは、天界の天帝として申すのではありません。一人の母親として、申し上げます。この子を連れて行ってあげてくれませんか?」


 アールは、驚いてサーラを見た。


「時代は激しく動き始めました。ツウラがあのような行動に出るのもサーリがこのようなわがままを言うのも時代の流れだからだと私は考えます。


 この天界は、既に古いシステムとなったのです。ツウラはそれを私に教えてくれました。


 サーリは、貴方と一緒に行く事こそが幸せなのです。どうか足手まといかもしれませんが連れて行ってやってください」


 アールは、サーラの目に強い意思が宿っているのを確認した。


 サーリの方を見る。


「サーリ姫。これからどれほどとも分からない期間をかけて、巨悪を見つけ出し、分析し、排除しなければなりません。それは長く辛い道程になるかもしれません。


 それが本当に貴方の幸せなのでしょうか?」


「貴方様とお伴する事が私の幸せです」


 サーリも強く宣言した。


「分かりました」そこで、サーラの方に向き直る。「天帝様。貴方の大切な方をお預かりします。お二人は、私の命に代えてお守りします」


「殿下。お立場が逆ですわ。私の子供達が命をかけて貴方をお助けします。どうか末長く可愛がってくださいませ」


 天帝サーラは、一人の母親として、世界で最も頼もしい男の手を取って祈るように頼んでいた。

すみません。イチャイチャ度が足りなかったでしょうか。


これからはずっと一緒です。イチャイチャする機会もあるかもしれません。

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