第五十三 太歳(たいさい) 後編
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第五十三 太歳 後編です。
第五十三 太歳後編
ツウラは、愛刀『砕破』を片手持ちにして、軽く構えた。
防具は何も付けていないが、軍服は、動きやすいカーキ色の上下で、胸に勲章の略章をたくさん付けている。
ツウラは、軍服が正装の中で一番動きやすいので好きだった。そもそも、天界の皇子と言うのは肩苦しく窮屈で仕方がなかったのだ。
まず、初撃は、ツウラから放った。
サーリとメーサが眉をしかめて彼等を見ている。彼女達のように真面目な女の子達には、肉親の殺し合いなどは、想像もできなかったのだろう。
そんな気持ちなど唾棄すべし。
ツウラは、自由を満喫するかのように、神技の力でカタパルトから発射されたジェット機のように前方に突進した。
片手薙にレイライトの首を刎ねあげた。と思ったが。その『砕破』は、見事に受け止められていた。
『砕破』とレイライトの刀とが激突した衝撃波が周囲を揺るがす。
その衝撃波で、建物が崩落しかねない。
「いかんな。我々のつまらない戦いで歴史的な建物を壊す訳にゆかん」
ツウラは、戦いを止めてしまう。
「レイライト君。宮殿の前には、相当に大きな広場がある。あそこに先ほどの空間魔法で行けるかね?」
返事もせずに二人と、サーリ達は、転移された。
「便利だな」
レイライトが嬉しそうに言った。
「いざ」
次に攻撃を行ったのはレイライトだった。
彼も目にも止まらない斬撃をツウラに振り下ろしている。ツウラはそれを受け止めた。
二人の戦いを見ている青姫、紫姫の二人の美姫がこの一撃の振り下ろされた瞬間に、レイライトの剣を自分達が受けたかのように身をすくめた。その後、二人は、ふーーと、息をゆっくり吐き出している。
レイライトの斬撃は、それ程の威力の籠った斬撃だったのだろう。いつもの、稽古の時とは全く違う強烈な斬撃だったのだ。
【【【【ズッドッッ!!!】】】】
と、巨大な音と共に衝撃波が吹き飛んで言った。強烈な突風が過ぎて行った様だ。
見ると、衝撃波で地面が大きくへっこんでいる。何という重い斬撃だろうか。
しかし、その斬撃を受け切ったツウラも凄い。しかし、さすがにあまりにも凄い一撃に驚いている様だ。
その一撃で、ツウラの顔色が変わる。目が光った。口元が引き締まる。初めて、『砕破』を両手で持って構えた。
ツウラは、『砕破』を正眼に構える。神技を練ってさらにさらに強くする。
レイライトは、全くいつもと変わらない。同じ様子だ。
ツウラは、神技『神々の爆撃』を名前短縮術で発動。それと同時にレイライトに突進して、今までに無いぐらいの大量の神技を込めた遠距離の一閃をはなつ。
そして、自分自身も神技の斬撃と同じ恐ろしい勢いで、前に飛び出していた。
先ず最初に『神々の爆撃』が発動し、強烈な連続爆発が起こる。
その爆発が終わるのと、ツウラの放った遠距離の一閃が激突と同時に爆発。さらにツウラの物理的斬撃がレイライトの顔をめがけて炸裂した。
しかし、レイライトはその物理的斬撃をうける直前に『転移』で一メートルほど横に転移し、ツウラに一撃を振り下ろしていた。
ツウラは、視界の右端に現れた、レイライトに向かって右手で打撃を入れる。
右手の打撃は、レイライトの左肘で止められるが、レイライトの体勢が崩れる。
ツウラは体勢の崩れたレイライトの一撃を軽く身をひねってそらした。
「厄介な、空間魔法だな」
しかし、ツウラはレイライトの『転移』の弱点を見つけていた。
『転移』魔法は、発動期間があるので、飛び退く方がずっと早いのだ。
目眩し程度にしか使えない。
レイライトが、『煉獄乱舞』、『獄絨爆砕』、『極雷殲武』、『窮極牙突』…… と、次々と超超高位魔法を連続で発動する。
ツウラは、発動した魔法を、『砕破』で両断してゆく。
「一つ。二つ。三つ。四つ……」
ツウラは、激しく位置を変えつつ両断した魔法の数を数え挙げてゆく。
しかし、その口が堅く結ばれた。
レイライトの闘気魔法『気迫』が恐ろしい鬼気を放っているのだ。動きが鈍るのを神技で障壁を作って遮断する。
そのツウラに向かって、闘気のムチが四方から襲う。ツウラは神技で肉体強化し、飛び上がって避ける。
そのまま、足元のレイライトに向かって(じんぎ)神技『大断罪の神撃』を発動。
神技の窮極の攻撃だった。四方八方から、神技による爆砕のエネルギーがレイライトを包みこんだ。
転移で逃げることもできなかったはずだ。『大断罪の神撃』は、ツウラの知る限り空間を歪曲する程の破壊力だ。
しかし、その連続する爆発の中からレイライトがミサイルの様に飛び出してくる。
人間の癖に空まで飛べるようだ。
空中戦に突入だ。
しかし、レイライトの速度は、異常だ。何か爆発の様な音がする。
「「「ドカーン!!!」」」
一瞬で音速を超えたのだ。
目にも止まらぬ速度でツウラの横を飛び抜けた。
【【【ドカーン!!!】】】
すれ違い様に、レイライトが一閃を放ったのだ。
ツウラの天性の才能で、レイライトの一閃を防御したが、あまりにもの攻撃力のため、『砕破』が根元から折れてしまう。
どうやら、レイライトの刀と物理的な激突での力比べに負けてしまったようだ。
ツウラは『光の神剣』を発動し、ジェット機さながらの速度で戻ってくるレイライトを待つ。
何もかもバカバカしい程に桁違いの敵にツウラは、笑いが込み上げてくる。
『光の神剣』は、神技の力をそのまま物理的な剣の攻撃に変える。魔法の『光の剣』と同じ働きだ。神技の力が強ければ強いほど物理的な攻撃力を高めるのだ。
『光の神剣』であれば、いかなる存在であろうが撃ち砕くであろう。
見ると、レイライトも刀を鞘にもどし、魔法で剣を作り出した。
みたところ、いかなる魔法で出しているかも分からなさそうだが。
レイライトの剣が打ち下ろされた。どこまで伸びてくるのかと思うほど剣の射程が長い。
ツウラがなんなく受ける。そして、その剣を受けた愚かさを悟った。それは形容し難い恐ろしい破壊力だった。
ツウラは、このレイライトの剣がこの宇宙をも打ち砕きかねない未知の破壊力を秘めた武器であることを痛感する。
圧倒的な、力で『光の神剣』は、力を失い、消えてしまった。
その時、ツウラも空中に浮いている神技が枯渇し、真っ逆さまに地上に落ちていった。
レイライトことアールが助けたのは当然である。
空中で抱きとめられたツウラは、聖力の枯渇で気を失っていた。
次話では、天空編、終盤の別の方のクライマックスです。
お待ちかねです。アールとサーリの恋の行方です。




