第五十 辰星君(しんせいくん)
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第五十 辰星君
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第五十 辰星君
辰星とは、水星の事だ。辰星君は、水星の神で、水神様だ。青龍も水の神獣だ。彼は、青龍に乗り、蛇矛という武器を持つ。
蛇矛は、薙刀の先の刃が蛇のように、くねくね曲がっている。長柄で五メートルにもなる。長槍みたいな武器だ。
対するのは、剣姫マリアージュ。青姫と、大白メーサだ。
大白とは、金星の事。メーサは、金星の女神なのだ。金星の女神は、美の象徴。メーサは、今年十四歳でアールより一つ下。
金星は、明けの明星。星々の中でもとりわけ美しい。光の強さが彼女の強さの表れでもある。
メーサは潜在能力では辰星君よりもはるかに高いがあまりにも若く未熟だ。
アールなどがみれば、大きな聖力の羽も、まだ制御が未熟だし、魔力が必要以上に抑えられている。これは、すべての天神種に一応に言える事だ。
天神種は、そもそも天眼という能力を子供の時から持っていて、聖力が感じられる。
アール、サーリ、ヨランダード、フリンツの四人は魔力・聖力を目で見る事ができるが、これは例外。殆どの種族は、魔力か聖力のどちらかを感じる事ができる程度だ。
天神種は、かなり高い聖力を感知する能力である天眼通の能力がある。この為、天神種は聖力がとても強く、聖力を使う奇跡の技に秀でている。
メーサは、もちろん強い天眼の才能をもちさらに、サーリ程では無いが、魔力の感知能力も高い。
彼女も、恩恵の子の一人である事は、間違い無いのだ。美しく、才能豊かだ。
メーサは、この問題が彼女達自身の問題だから是非戦わせてくれと健気な申し出があったからだ。
だから、戦闘力で仲間達の中で随一の青姫を付けたのだ。
青姫マリアージュは、黄金の髪を大きくなびかせて、大きな青龍に跨った辰星君の前に立つ。
青姫の小さな身体は、闘いの時は、大きくかんじる。最近では、彼女の闘気は、圧縮されて、鬼気迫るものがある。
アールからは、青姫の独特の『闘気鎧』を『鬼闘鎧』と呼んで分けて使えるようになれと指導されている。
アールによると、『鬼闘鎧』には、闘気だけでなく『気迫』が混じっているので、あまり練習などで使うと、周りの弱い人間が死にかねないというのだ。
それと同時に、『鬼闘鎧』の『気迫』の指向性の調節をする事を命じられている。
闘気は、マリアージュにとって、魔法ではなく胆力のひとつであり、剣技の一部みたいなものだ。
アールの上手な指導があればこそ、胆力の鍛錬の延長戦上に、現在のマリアージュの全てが有り得る。
もはや、彼女の剣技は、人を超えて神々の領域に入っているのだ。
彼女にとって、剣技は気迫のこもった斬撃でしかない。
アールは、マリアージュのイメージを大切に守りながら、さらなる高みへ登る為のイメージの修正をたくみに行ってマリアージュを鍛錬してきた。
彼女は、感知能力を高める為に目をつむって魔法の攻撃を受けるという訓練を行い、魔法を探知し、剣で切れる事も学んだ。彼女の剣技『魔法両断』は、『リジェクト』よりも効率的な程だ。
剣の鍛錬で常にアールと対峙してきたマリアージュにとって、辰星君は、あまりにも小さく感じる程だ。
しかし、辰星君が弱いというわけではない。気を引き締めてかからねばならない。
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辰星君は、長大な蛇矛を片手で、振り回しながら、青龍の背に跨って鬼気迫るマリアージュに攻撃しかねているようだ。
逆にメーサが攻撃系の奇跡『瀑布』を発動する。なかなか奇跡レベルの高い奇跡だ。しかし、水系の相手にはあまり効かない。
全く闘いに慣れていないメーサの稚拙で拙速な攻撃だが、同時に、初めての闘いで真っ先に攻撃を仕掛ける勇気と決断力の証でもある。
合格点だ。
メーサの攻撃に背を押されて、青姫は、強力なバネが弾けて飛ぶような勢いで飛び上がり、斬撃を辰星君に叩きつけた。
辰星君は、蛇矛で受け止めるが、青姫の打撃が激しく、青龍もろとも吹き飛ばされる。
青姫は、空中で、闘気を足に込めて虚空を踏みつけて、方向転回をし、ミサイルの様に、吹き飛ばされた辰星君を追撃し、さらに斬撃を叩きつけた。
「「「ドドーン!!!」」」
斬撃が青龍の腹で炸裂した。
青龍が体をクネらせて苦しむ。
辰星君が思わず、地上に降り立ったところを、青姫のさらなる追撃の斬撃が辰星君の脾腹(横腹の事)を直撃した。
「それまで!!!」
アールの制止の声。メンバーの中で最も早く決着していた。
「良くやったぞ、メーサ姫」
青姫がメーサのところまで来ると、彼女は、精一杯背伸びをしたが、それでも全然高さが足りなかった。メーサよりも頭一つ分ほども小柄な青姫だ。
青姫の意を悟ったメーサは、頭を下げて、青姫に頭頂を見せた。
青姫は、満面の笑みで、メーサの頭を撫でたのだった。
メーサの顔にも闘いの緊張感は残るが、満面の笑みがたたえられていた。
青姫強すぎでしたね。
次話は、サーリの活躍です。
ご期待くださいね。




